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例えば、私たちに赤い花と青い花のどちらかを渡さないといけない時、私が「赤い花がいい」と言ったらクラリスは「お姉様に青い花を」と予言するのです。
無意識で、悪意が無い行為なのはわかっているので、私も気にしていなかったのですよ。まだ子供ですし、クラリスと違って健康で自由に出歩ける姉を妬ましいと思うのも自然な事ですから。嫌がらせという程ですら無い可愛い行為、と思ってました。
ただ、クラリスが家の後継ぎとなっても、私が近くに嫁げばクラリスの尻拭いに何かと呼び戻されるに違いない、という悩みが残っていました。
そのためには、後妻でも妾でもいいから出来るだけ遠くに嫁ぎたい……と思っているのですが、そんな都合のいい申し込みなど来ません。
こればかりは自分にどうすることもできないと半分諦めて王立学園の二年生になった時、入学してきたフランツと委員会を通じて親しくなりました。
「僕の家の領地は国の北の端なんですよ。だから、結婚相手は身内や隣の領の人が多いんです。さすがに血が濃くなり過ぎたからお前は王都で結婚相手を探して来いって言われて来たんですけど、たいてい王立学園に入る前に婚約してるんですよね。フリーの女性を紹介してもらおうにも『そんな遠くに嫁ぎたい女性に心当たりは無い』って言われるし」
世間話のついでに語られた内容に驚きました。
フランツは、年上の私に婚約者がいないとは思って無かったのでしょう。
「わ、私では駄目かしら!」
と言ったら目を丸くしていました。あきれられている、と思いましたがこの幸運を逃したくない私は必死でした。
「私は年上で、特に美しいわけで無いし、女性からこんな事を言うなんてはしたないとは思うけど、あなたと北の領地に行きたいと思ってるの。きっと、あなたの役に立てると思うわ。どうかしら」
なかなか返事が来ないので、やはり駄目かと彼の顔を見上げると
「やっば……超可愛い。真面目優等生キャラの先輩が逆プロポーズなんて、可愛いが過ぎる……」
と、赤くなってます。
可愛い……?
私が……?
家では「可愛い」はクラリスのための言葉です。
どうしよう、私に「可愛い」なんて言ってくれる人を好きにならないわけが無い。
フランツは急いで家に手紙を出し、了承の返事が届くと同時に王都の親戚を父親の代理人として婚約を申し込み、私はクラリスに「南にお嫁に行きたい」と言っておいたので家族に賛成されて婚約しました。
そして、一歳年下のフランツが先日王立学園を卒業したので私たちは今日結婚するのです。
微妙な空気になった控室の外に賑やかなざわめきが聞こえ、フランツのご両親と彼より二歳下の弟と三歳下の妹が訪れました。
「まあ、とっても可愛いわオーレリー!」
「とても綺麗ですオーレリーお姉様!」
挨拶と共に皆に取り囲まれます。
フランツの家族も、フランツのように家では私には掛けられる事の無い言葉を惜しみなく掛けてくれる人たちです。
無意識で、悪意が無い行為なのはわかっているので、私も気にしていなかったのですよ。まだ子供ですし、クラリスと違って健康で自由に出歩ける姉を妬ましいと思うのも自然な事ですから。嫌がらせという程ですら無い可愛い行為、と思ってました。
ただ、クラリスが家の後継ぎとなっても、私が近くに嫁げばクラリスの尻拭いに何かと呼び戻されるに違いない、という悩みが残っていました。
そのためには、後妻でも妾でもいいから出来るだけ遠くに嫁ぎたい……と思っているのですが、そんな都合のいい申し込みなど来ません。
こればかりは自分にどうすることもできないと半分諦めて王立学園の二年生になった時、入学してきたフランツと委員会を通じて親しくなりました。
「僕の家の領地は国の北の端なんですよ。だから、結婚相手は身内や隣の領の人が多いんです。さすがに血が濃くなり過ぎたからお前は王都で結婚相手を探して来いって言われて来たんですけど、たいてい王立学園に入る前に婚約してるんですよね。フリーの女性を紹介してもらおうにも『そんな遠くに嫁ぎたい女性に心当たりは無い』って言われるし」
世間話のついでに語られた内容に驚きました。
フランツは、年上の私に婚約者がいないとは思って無かったのでしょう。
「わ、私では駄目かしら!」
と言ったら目を丸くしていました。あきれられている、と思いましたがこの幸運を逃したくない私は必死でした。
「私は年上で、特に美しいわけで無いし、女性からこんな事を言うなんてはしたないとは思うけど、あなたと北の領地に行きたいと思ってるの。きっと、あなたの役に立てると思うわ。どうかしら」
なかなか返事が来ないので、やはり駄目かと彼の顔を見上げると
「やっば……超可愛い。真面目優等生キャラの先輩が逆プロポーズなんて、可愛いが過ぎる……」
と、赤くなってます。
可愛い……?
私が……?
家では「可愛い」はクラリスのための言葉です。
どうしよう、私に「可愛い」なんて言ってくれる人を好きにならないわけが無い。
フランツは急いで家に手紙を出し、了承の返事が届くと同時に王都の親戚を父親の代理人として婚約を申し込み、私はクラリスに「南にお嫁に行きたい」と言っておいたので家族に賛成されて婚約しました。
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「まあ、とっても可愛いわオーレリー!」
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挨拶と共に皆に取り囲まれます。
フランツの家族も、フランツのように家では私には掛けられる事の無い言葉を惜しみなく掛けてくれる人たちです。
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