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翌日、結婚式を挙げる教会の花嫁控室で、ウェディングドレスを着た私は泣きじゃくるクラリスに抱きつかれていました。
お父様、お母様、微笑ましく見ていないで、ドレスが汚れてしまうので引き剥がして欲しいのですが。
「わっ私が予言したせいで、お姉様がこれから苦労をするなんて。私のせいで」
何度クラリスのせいでは無いと言っても、話を聞いてくれない。
仕方がない。本当の事を言いましょう。
「あのね、クラリスの予言が当たった事なんて一度も無いのよ」
今日は雨が降りそう、レベルを『予言』と言えるなら的中した事があると言えなくも無いけど。
あら、皆が驚いた顔をしているわ。
「……や、やだ、お姉様ったら忘れてしまったの? 三年前に池に落ちたじゃない」
「あれはわざと落ちたのよ。私に、池に行く用事があるわけ無いでしょう?」
三年前、私が池に落ちる夢を見たと嬉々として告げるクラリスにも呆れましたが、私に落ちることを期待している両親の視線に、私はこの家に見切りを付けたのでした。
その時に考えたのです。
「私は、クラリスが予言姫ならお父様たちはクラリスを家の後継者にして私を嫁に出してくれるのでは、と思ったの」
可愛いクラリスに家を継がせたいが病弱なので不安、優秀な姉も手放したくない、という両親のせいで私は先の見通しが立てられませんでした。
私と釣り合いの取れる男性は、どんどん婚約が決まって減っていくというのに。
このままでは嫁き遅れて、クラリスとその夫の補助をするオールドミスとしてこの家の片隅に置いてもらう一生になってしまう……。
そんなのは絶対に嫌でした。
私は、クラリスが予言姫であるかのように振る舞う事にしました。両親はすぐにそれを信じました。
どちらかを選ぶ時はクラリスにお伺いを立て、「クラリスの選んだ方が正解だったわ」と言う。
西に用事がある時、クラリスが「西に行くと事故が起きる」と言ったら、ぐるっと南に向かってそこから北へ行って目的地に着くようにし、「クラリスのおかげで事故に遭わずに帰れたわ」と言う。
昨日のように「左手に気をつけて」と言われたら、左手を切った、ぶつけたと報告する。私の怪我などクラリスの容態に比べたら重要では無いので、心配や手当などされる事は無い。
半信半疑だったクラリスも、自分が予言姫と信じるようになりました。
「で……でも、エメラルド鉱山は利益を上げているぞ」
「詐欺師は、最初の配当だけは大盤振る舞いするそうですわ。欲をかいた出資者が追加投資をしたくなるように」
お父様が黙ってしまった。まさか追加投資したのかしら。
「な、なぜ最初に言わなかった」
どうやら、よほど多額の追加投資をしましたのね。
「そもそも、私は何も聞かれてませんわ。それに、もし私が反対してもクラリスが賛成すれば決まりでしょう?」
皆が黙り込んでしまったわ。おめでたい日というのに。
「だ、だから、フランツとの婚約も私の希望なの。クラリスは覚えていない? 『私は暖かい南にお嫁に行きたいわ』って言った事を。きっとそう言えばクラリスは南に行かせないと思ってたの。案の定、その後フランツの家から申し込みが来たら嬉々として賛成してくれて嬉しかったわ」
……あ、あら、和ませるつもりだったのにさらに固まってしまったわ。
ああ、クラリスが私に不利になる予言をしていた事に気付いてなかったのね。
お父様、お母様、微笑ましく見ていないで、ドレスが汚れてしまうので引き剥がして欲しいのですが。
「わっ私が予言したせいで、お姉様がこれから苦労をするなんて。私のせいで」
何度クラリスのせいでは無いと言っても、話を聞いてくれない。
仕方がない。本当の事を言いましょう。
「あのね、クラリスの予言が当たった事なんて一度も無いのよ」
今日は雨が降りそう、レベルを『予言』と言えるなら的中した事があると言えなくも無いけど。
あら、皆が驚いた顔をしているわ。
「……や、やだ、お姉様ったら忘れてしまったの? 三年前に池に落ちたじゃない」
「あれはわざと落ちたのよ。私に、池に行く用事があるわけ無いでしょう?」
三年前、私が池に落ちる夢を見たと嬉々として告げるクラリスにも呆れましたが、私に落ちることを期待している両親の視線に、私はこの家に見切りを付けたのでした。
その時に考えたのです。
「私は、クラリスが予言姫ならお父様たちはクラリスを家の後継者にして私を嫁に出してくれるのでは、と思ったの」
可愛いクラリスに家を継がせたいが病弱なので不安、優秀な姉も手放したくない、という両親のせいで私は先の見通しが立てられませんでした。
私と釣り合いの取れる男性は、どんどん婚約が決まって減っていくというのに。
このままでは嫁き遅れて、クラリスとその夫の補助をするオールドミスとしてこの家の片隅に置いてもらう一生になってしまう……。
そんなのは絶対に嫌でした。
私は、クラリスが予言姫であるかのように振る舞う事にしました。両親はすぐにそれを信じました。
どちらかを選ぶ時はクラリスにお伺いを立て、「クラリスの選んだ方が正解だったわ」と言う。
西に用事がある時、クラリスが「西に行くと事故が起きる」と言ったら、ぐるっと南に向かってそこから北へ行って目的地に着くようにし、「クラリスのおかげで事故に遭わずに帰れたわ」と言う。
昨日のように「左手に気をつけて」と言われたら、左手を切った、ぶつけたと報告する。私の怪我などクラリスの容態に比べたら重要では無いので、心配や手当などされる事は無い。
半信半疑だったクラリスも、自分が予言姫と信じるようになりました。
「で……でも、エメラルド鉱山は利益を上げているぞ」
「詐欺師は、最初の配当だけは大盤振る舞いするそうですわ。欲をかいた出資者が追加投資をしたくなるように」
お父様が黙ってしまった。まさか追加投資したのかしら。
「な、なぜ最初に言わなかった」
どうやら、よほど多額の追加投資をしましたのね。
「そもそも、私は何も聞かれてませんわ。それに、もし私が反対してもクラリスが賛成すれば決まりでしょう?」
皆が黙り込んでしまったわ。おめでたい日というのに。
「だ、だから、フランツとの婚約も私の希望なの。クラリスは覚えていない? 『私は暖かい南にお嫁に行きたいわ』って言った事を。きっとそう言えばクラリスは南に行かせないと思ってたの。案の定、その後フランツの家から申し込みが来たら嬉々として賛成してくれて嬉しかったわ」
……あ、あら、和ませるつもりだったのにさらに固まってしまったわ。
ああ、クラリスが私に不利になる予言をしていた事に気付いてなかったのね。
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