あなたが愛人を作るのなら

あんど もあ

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「……まぁ」
 それしか言葉が出なかった。
 
 夫と約束したレストラン。
 約束の時間に行ってみれば、夫の横には華やかなドレスを纏った私の推しの女優のジャンヌ。
 確かに夫を観劇に誘ってジャンヌを引き合わせたのは私だけど、それは「期待の女優」としてで、あなたの愛人にお勧めした訳じゃ無い!

 高級なレストランとプレゼントされたドレスに、とても嬉しそうなジャンヌ。そんな愛人の様子に、更に嬉しそうな旦那様。
 ……はぁ、なんて少年のような顔をしているの。
 結婚して八年。二人の息子にも恵まれ、無難に堅実に伯爵家を維持していると思っていたあなたに、愛人を作る情熱があったなんて。

 でもね! これは「裏切り」っていうのよ!

 何とか味の分からないディナーを終えて、食後のお茶を飲みながら私は言った。
「残念だわ。ジャンヌはいい女優になると思ったのに」
 驚いたようにジャンヌが否定する。
「いいえ! 私は伯爵様のお力添えをいただいて、立派な女優になります!」
「ジャンヌはお前と違って才能がある。才能を後援するのも貴族の役目だ」
 ……なれるかしらね。でも、その言葉に私も思いついた。
「貴族の役目、ね。それじゃあ、私も才能豊かな愛人を持って後援する事にするわ」
 二人の動きが止まる。
 本気?、という顔をしている二人に、私はにっこりと笑った。
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