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一章.怨念
第4話 御恩
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遠くに逃げていた村人達が、事が終わったことに気付いてヤスケの元に戻ってくる。
だが、村人達は村で起きた惨劇を目の当たりにする。
「おとぅ! おかぁ! 起きてけれ、起きてけれぇ」
ある子供は、自分の両親の死を受け入れられず。
「嘘だぁ、嘘だぁ。ああああ・・・なんでじゃぁ・・・あああああああああああああ」
ある者は、愛しい人の死に嗚咽するほど泣き悲しむ。皆、殺された者達の死を嘆く。その姿にヤスケは何もできず、その様子を茫然と見ていることしかできなかった。
∴ ∴ ∴ ∴ ∴ ∴
そうして惨劇から一夜明けるが、それでも村人達の表情は暗いままでいる。村人の目には生気がなく、今にも死にそうな様子であった。
「このままではいかんなぁ・・・」
その様子を見かねたミナカは、ヤスケの手を握って連れ出し、昨日訪れた雑木林へ向かう。
「ヤスケ、今こそ村人を救う時じゃぞ。心して事にあたれよ」
そう言って、ミナカはヤスケに同化し、
「腹が減っているとな、人の心は悲しい気持ちになるんじゃ」
そうヤスケに語りかける。その言葉に彼は
「そだな。腹を空かした村人を少しでも楽にしてやるために、なんとかするだ」
と、言って地面に腕を突っ込んで、土の肥えを掴む。その栄養で、腕から蔓を生やしていく。その蔓は、次第に変化していき地表から芽を出して、グングンと成長していく。
「よいぞ、よいぞ。もっと生やせ、もっと生やせ」
「どっこいしょ、どっこいしょ、どっこいしょ」
力の限り、生やしていく。
「よぉし、もうそれぐらいでいいじゃろう」
とミナカが声をかけた頃には、そこには作物が溢れていた。ヤスケはそれらを一つ一つ丁寧に収穫していき、それらを村へ持って帰る。
「なんじゃこりゃ、食料じゃねぇか。ど、どうしてこんなにたくさんあるだべさ。ヤスケさ、こげなこともできるんべさ、すげーなすげーな。」
「おおお、食べ物じゃ。たくさんの食べ物じゃぁ、ありがてぇありがてぇ。」
村人は喜び、ヤスケらに大いに感謝しそれらを調理し始める。
「うめぇだ、うめぇだ。」
「久しぶりぶりにこげな、うめぇ飯さ食った。ヤスケさは、本当に村の救世主だべさ。」
村人達は、久方ぶりのまともな食事に少し元気を取り戻す。その後もヤスケは作物を作っては村に与え続け、そうしてひと月ほどは皆が食べていける量までになっていた。
村人らに活気が戻ったと判断したヤスケらは、本来の目的である異世界人を追うため、その村を離れようとする。
「それじゃ、異世界人は向こうからいつも来てるんだな。」
「へえ、そうです。いつもあいつ等は向こうから来てますだ。」
ヤスケらは、村人達に異世界人がどこから来ているかを教えてもらい、その方向へ向かって歩み始める。
別れ際、
「ヤスケさ、本当にありがとうごぜぇます。このご恩は一生忘れません。」
「ヤスケさぁー、また来てけれ。今度はわーらが育てた飯を食うだべさ。」
「ありがとうぉーーー。」
「ありがとうぉーーー。」
村のすべての村民がヤスケらを見送る。それに手を振りながら、ヤスケらは異世界人に復讐を果たすために進むのであった。
だが、村人達は村で起きた惨劇を目の当たりにする。
「おとぅ! おかぁ! 起きてけれ、起きてけれぇ」
ある子供は、自分の両親の死を受け入れられず。
「嘘だぁ、嘘だぁ。ああああ・・・なんでじゃぁ・・・あああああああああああああ」
ある者は、愛しい人の死に嗚咽するほど泣き悲しむ。皆、殺された者達の死を嘆く。その姿にヤスケは何もできず、その様子を茫然と見ていることしかできなかった。
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そうして惨劇から一夜明けるが、それでも村人達の表情は暗いままでいる。村人の目には生気がなく、今にも死にそうな様子であった。
「このままではいかんなぁ・・・」
その様子を見かねたミナカは、ヤスケの手を握って連れ出し、昨日訪れた雑木林へ向かう。
「ヤスケ、今こそ村人を救う時じゃぞ。心して事にあたれよ」
そう言って、ミナカはヤスケに同化し、
「腹が減っているとな、人の心は悲しい気持ちになるんじゃ」
そうヤスケに語りかける。その言葉に彼は
「そだな。腹を空かした村人を少しでも楽にしてやるために、なんとかするだ」
と、言って地面に腕を突っ込んで、土の肥えを掴む。その栄養で、腕から蔓を生やしていく。その蔓は、次第に変化していき地表から芽を出して、グングンと成長していく。
「よいぞ、よいぞ。もっと生やせ、もっと生やせ」
「どっこいしょ、どっこいしょ、どっこいしょ」
力の限り、生やしていく。
「よぉし、もうそれぐらいでいいじゃろう」
とミナカが声をかけた頃には、そこには作物が溢れていた。ヤスケはそれらを一つ一つ丁寧に収穫していき、それらを村へ持って帰る。
「なんじゃこりゃ、食料じゃねぇか。ど、どうしてこんなにたくさんあるだべさ。ヤスケさ、こげなこともできるんべさ、すげーなすげーな。」
「おおお、食べ物じゃ。たくさんの食べ物じゃぁ、ありがてぇありがてぇ。」
村人は喜び、ヤスケらに大いに感謝しそれらを調理し始める。
「うめぇだ、うめぇだ。」
「久しぶりぶりにこげな、うめぇ飯さ食った。ヤスケさは、本当に村の救世主だべさ。」
村人達は、久方ぶりのまともな食事に少し元気を取り戻す。その後もヤスケは作物を作っては村に与え続け、そうしてひと月ほどは皆が食べていける量までになっていた。
村人らに活気が戻ったと判断したヤスケらは、本来の目的である異世界人を追うため、その村を離れようとする。
「それじゃ、異世界人は向こうからいつも来てるんだな。」
「へえ、そうです。いつもあいつ等は向こうから来てますだ。」
ヤスケらは、村人達に異世界人がどこから来ているかを教えてもらい、その方向へ向かって歩み始める。
別れ際、
「ヤスケさ、本当にありがとうごぜぇます。このご恩は一生忘れません。」
「ヤスケさぁー、また来てけれ。今度はわーらが育てた飯を食うだべさ。」
「ありがとうぉーーー。」
「ありがとうぉーーー。」
村のすべての村民がヤスケらを見送る。それに手を振りながら、ヤスケらは異世界人に復讐を果たすために進むのであった。
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