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第1章 はじまりの1歩
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私は、オルトの厳しい指導・教育を受ける毎日を過ごした。
オルトはこの魔王城のある大陸について教えてくれた。
魔王城は、魔の地域と呼ばれる場所にあり、陸の孤島のごとく深い峡谷に囲まれ、魔王城の北側はこの世界で一番高いとされる山々が連なっている。唯一、魔王城の南にある国ソランからしか入る道はない。
魔王城とソランの東西には2つの大国、東にイストリア王国、西にガジス王国がある。
ソランは小国ではあるが東西の大国に挟まれているため、交易拠点として栄えている。歴史的には両国からの侵略、属国の危機にあった時期もあった。大国の支援を受けて国の繁栄を進めようとした時のソラン王を、神職者たちが追い出し、政権を奪取したのだ。それから現在にいたるまで、ソランは神権を名乗っており、神の名のもとに神職者が政権を握っている。
約数十年毎に復活する魔王討伐により、神の名の下、世界の安寧を守っているのがソランという国だ。魔王討伐隊を編成したり、交易路の安全を確保しているのもソランであり、小国ながら強国である。ソランの南に広く東西に魔の大荒野と呼ばれる荒地が広がり、魔物も多く生息している。ソランをはじめイストリア、ガジスは、魔物の襲撃から国を守らなければならなかった。
同じ大陸に位置する3国は互いに侵略することなく、曲がりなりにも安定を維持していた。
「オルト、待ってください。おかしくないですか?」
「おや? 何かに気づかれましたか?」
オルトは、口角をクッとあげて、ニヤリとする。
「以前、アルさんが『魔王は魔力の張りぼてだ』って言いました。私たちは数十年毎に張りぼての魔王を倒しているということですか? 今回はアルさんが作ったみたいですけど、数十年毎に魔王を作っているということですか? なぜ? 魔王は本当にいるのですか? 」
「惜しいですねー、もう1歩というところでしょうか。
それから、アルさんではありません。主様とお呼びいただきたいものです。主様がそれでよいというのであれば、私から申し上げることではございませんが・・・・・・」
オルトは私をじっと見て言葉をつづけた。
「知っていることからその先に考え及ぼすことは大事なことです。マルルカ様は、魔王が張りぼてと知っているからこそ、疑いをもたれた。だからこそ知識を得ることは必要なのです。重要な知識、事実は奥深く隠されていることがほとんどで一部の者しか知りえない。それを得るためにも一般常識と言われる教養は必要なのです。わかりますね。あなた自身の答えを見つけるためにもね」
アルさんは教えてくれるといった。でも、答えを見つけるのは私
私はどうしたいのか、どこに帰りたいのか、何をしたいのか・・・・・・
決めるのは私だ!!
今は、私はまだ何もわからないことがわかった。
アルさん、これがあなたの教えたいことだった?
****************************
一般教養はもちろんのこと、マナーや立ちいふるまい、話し方に始まり、ダンスまで教えられる。
さらにはドレスの着こなしまで・・・・・・
「男だから、異性だからわかるのです。同じドレスでも着こなし方で、魅力は大きく変わります」 と・・・・・・
ドレスの肩にかかるスリーブのほんのちょっとした角度の違いで、上品にも下品にもなるという。
「出しすぎはダメです!! 下品にならないギリギリのラインを目指すのです!!!」
「話し方や立ち居振る舞い、ドレスの着こなし方で魅せ方を変えるのです。すべては計算です! 私が教えて差し上げているのはすべて魅せ方です。魅了の魔法を使うのは下の下です! 」
なぜか、一番力入れてオルトは教えてるような気がする。
オルトの厳しい教育が続いているある日、
「体もなまっていることでしょうから、中庭で運動をいたしましょう。お嬢様は魔王を倒されたと伺っております。少し私と手合わしましょうか」
「手合わせ? 魔法を使ってもいいのですか?」
「かまいませんよ。まずは基本のファイア系でいきましょうか」
オルトの楽しそうな笑顔を初めて見た。
オルトは、1歩も動かずに私の魔法をすべて防ぐか打ち消している。
オルトめっちゃ強いんですけど・・・・・・
「あなたの魔力の放出は無駄が多すぎますね。粗野な魔力だ。魔力を練り上げれば、洗練された魔力にできるはずです。しばらく中庭の運動も教育項目に入れることにしましょう」
「魔力を練る。編み上げる。これを覚えると、髪と瞳の色は変えることができるようになりますよ」
オルトは本当に楽しそうに笑った。
「魔力を練る? ・・・・・・どうしたらできるのでしょう?」
「主様から魔力の木を、枝葉を伸ばせと言われたのでしょう? 今度は剪定するのですよ。枝葉一枚一枚に日の光がいっぱい当たるように、要らない枝葉を切り落としていくイメージです。そうすれば、魔力の木はもっと大きく育ちます。日の光は事象と捉えてください。光を感知する、即ち、事象を感知する力を高めることです」
ムズカシイ・・・・・・
それから、中庭で運動という名のオルトとの手合わせが、私の教育項目に新たに加えられた。
でも、ここ魔王城よね? 3人で魔王を倒したお城で、なんでオルトに教育されてるんだろ??
オルトはこの魔王城のある大陸について教えてくれた。
魔王城は、魔の地域と呼ばれる場所にあり、陸の孤島のごとく深い峡谷に囲まれ、魔王城の北側はこの世界で一番高いとされる山々が連なっている。唯一、魔王城の南にある国ソランからしか入る道はない。
魔王城とソランの東西には2つの大国、東にイストリア王国、西にガジス王国がある。
ソランは小国ではあるが東西の大国に挟まれているため、交易拠点として栄えている。歴史的には両国からの侵略、属国の危機にあった時期もあった。大国の支援を受けて国の繁栄を進めようとした時のソラン王を、神職者たちが追い出し、政権を奪取したのだ。それから現在にいたるまで、ソランは神権を名乗っており、神の名のもとに神職者が政権を握っている。
約数十年毎に復活する魔王討伐により、神の名の下、世界の安寧を守っているのがソランという国だ。魔王討伐隊を編成したり、交易路の安全を確保しているのもソランであり、小国ながら強国である。ソランの南に広く東西に魔の大荒野と呼ばれる荒地が広がり、魔物も多く生息している。ソランをはじめイストリア、ガジスは、魔物の襲撃から国を守らなければならなかった。
同じ大陸に位置する3国は互いに侵略することなく、曲がりなりにも安定を維持していた。
「オルト、待ってください。おかしくないですか?」
「おや? 何かに気づかれましたか?」
オルトは、口角をクッとあげて、ニヤリとする。
「以前、アルさんが『魔王は魔力の張りぼてだ』って言いました。私たちは数十年毎に張りぼての魔王を倒しているということですか? 今回はアルさんが作ったみたいですけど、数十年毎に魔王を作っているということですか? なぜ? 魔王は本当にいるのですか? 」
「惜しいですねー、もう1歩というところでしょうか。
それから、アルさんではありません。主様とお呼びいただきたいものです。主様がそれでよいというのであれば、私から申し上げることではございませんが・・・・・・」
オルトは私をじっと見て言葉をつづけた。
「知っていることからその先に考え及ぼすことは大事なことです。マルルカ様は、魔王が張りぼてと知っているからこそ、疑いをもたれた。だからこそ知識を得ることは必要なのです。重要な知識、事実は奥深く隠されていることがほとんどで一部の者しか知りえない。それを得るためにも一般常識と言われる教養は必要なのです。わかりますね。あなた自身の答えを見つけるためにもね」
アルさんは教えてくれるといった。でも、答えを見つけるのは私
私はどうしたいのか、どこに帰りたいのか、何をしたいのか・・・・・・
決めるのは私だ!!
今は、私はまだ何もわからないことがわかった。
アルさん、これがあなたの教えたいことだった?
****************************
一般教養はもちろんのこと、マナーや立ちいふるまい、話し方に始まり、ダンスまで教えられる。
さらにはドレスの着こなしまで・・・・・・
「男だから、異性だからわかるのです。同じドレスでも着こなし方で、魅力は大きく変わります」 と・・・・・・
ドレスの肩にかかるスリーブのほんのちょっとした角度の違いで、上品にも下品にもなるという。
「出しすぎはダメです!! 下品にならないギリギリのラインを目指すのです!!!」
「話し方や立ち居振る舞い、ドレスの着こなし方で魅せ方を変えるのです。すべては計算です! 私が教えて差し上げているのはすべて魅せ方です。魅了の魔法を使うのは下の下です! 」
なぜか、一番力入れてオルトは教えてるような気がする。
オルトの厳しい教育が続いているある日、
「体もなまっていることでしょうから、中庭で運動をいたしましょう。お嬢様は魔王を倒されたと伺っております。少し私と手合わしましょうか」
「手合わせ? 魔法を使ってもいいのですか?」
「かまいませんよ。まずは基本のファイア系でいきましょうか」
オルトの楽しそうな笑顔を初めて見た。
オルトは、1歩も動かずに私の魔法をすべて防ぐか打ち消している。
オルトめっちゃ強いんですけど・・・・・・
「あなたの魔力の放出は無駄が多すぎますね。粗野な魔力だ。魔力を練り上げれば、洗練された魔力にできるはずです。しばらく中庭の運動も教育項目に入れることにしましょう」
「魔力を練る。編み上げる。これを覚えると、髪と瞳の色は変えることができるようになりますよ」
オルトは本当に楽しそうに笑った。
「魔力を練る? ・・・・・・どうしたらできるのでしょう?」
「主様から魔力の木を、枝葉を伸ばせと言われたのでしょう? 今度は剪定するのですよ。枝葉一枚一枚に日の光がいっぱい当たるように、要らない枝葉を切り落としていくイメージです。そうすれば、魔力の木はもっと大きく育ちます。日の光は事象と捉えてください。光を感知する、即ち、事象を感知する力を高めることです」
ムズカシイ・・・・・・
それから、中庭で運動という名のオルトとの手合わせが、私の教育項目に新たに加えられた。
でも、ここ魔王城よね? 3人で魔王を倒したお城で、なんでオルトに教育されてるんだろ??
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※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
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