【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん

文字の大きさ
153 / 233

152:ハインツの前世~⑯~ 

しおりを挟む
 それは一瞬だった。

 金髪の男の肩の辺りから片腕が変貌した。腕は鮮やかな緑色の鱗で覆われていた。そしてその先の指先は、鋭い爪が付いており、その形は禍々しいものであった。腕を薙ぎ払ったと思ったら、一瞬でカタはついてしまったのだ。

 「うっ・・・な、なんだよぉ」
 「ば、化け物・・・」
 
 イベルナに暴行を加えた輩達は、体中に鋭い爪に抉られた傷跡が無数にあり、それは決して浅くなかった。深い爪痕は、彼らを動けなくしたのだ。そして金髪の男は言い放った。

 「本当ならもっと時間をかけていたぶってやりたいところだが、お前らが火を点けたことで、ここはそうもたないからね。だから・・・」

 男は美しくも冷たい微笑みを浮かべ

 「自分達が点けた火で生きながら焼かれるのは、どんな気持ちだろうな。」

 「「「「「!!!」」」」」

 そのセリフを聞いた途端、この人ではない男が、自分達をわざと息の根を止めずに、この方法を選んだのだとわかった。

 「い、いや・・・だ」
 「し、死にたく・・・ない・・・」
 「お、俺達は・・・雇われた・・・だけだ・・・」
 「た、助けてくれ・・ぇええ!」
 
 泣き言をいうも、抉られた傷のせいで、歩くことはままならない。金髪の男は意識は残るようにわざと体にだけ、重傷を負わせていたのだ。そして、それらにはもう目もくれず、金髪の男は、イベルナに向き合い、お姫様抱っこをした。

 「ひぃいい!」

 だが、イベルナは一瞬とはいえ、目の前で行われた惨たらしい制裁とも言える所業を受け入れられないことと、今しがた男たちによって汚された自分に触れられたくなかったこともあって、助けてくれたことはわかっていたものの、悲鳴をあげずにはいられなかった。
 金髪の男は驚いたが、宥めるように優しく言った。

 「ごめんね。いきなり現れた男に抱っこされて嫌だよね。だけど、今はここを脱出しないといけないから、少しだけ我慢してね。」

 イベルナは言われた意味はわかっていたが、マーサが死んだことも然り陵辱されたことがイベルナの心に大きく傷となっていたことで、イベルナは死にたい気持ちになっていたのだ。 
 
 「置いていって!私もう生きてられないの!お願い・・・死なせて・・・」

 イベルナは泣きじゃくっていた。金髪の男は、悲しそうな目を向けて、

 「うん、辛いよね。でも俺は君を置いていくことはできないよ。死なせたくないんだ。ごめんね。このまま脱出する。」

 そうして、その金髪の男は燃える屋敷を後にして、イベルナを連れて脱出した。










 あれから、今は人里離れた小さな家にイベルナは住んでいた。あんなことがあったせいで今は人に対して、特に男性には会いたくないであろうとラーファイルは考えたからである。というのも、イベルナは脱出後から、男性を見ただけでパニックを起こすようになっていたのである。

 イベルナの様子は以前とはかけ離れたものになっていた。急に泣き喚いたり、静かになってボーっとしたり、そうかと思えば、ただ一点を見つめて涙を流したりと、精神が不安定になっていたのだ。

 金髪の男は『ラーファイル』と名乗った。そして自分が『竜の祖』であること。そしてイベルナが自分の番(つがい)であると説明した。イベルナはそんな中ではあったが、確かにラーファイルについては、初めて会った時から、他の人とは違う何かを感じてはいた。それに窮地を救ってくれ、自分に献身的に尽してくれるラーファイルにだけはなんとか受け答えはできるまでになっていたのだ。そしてある時、イベルナはポツリと言った。

 「ね、ラーファイル。」
 
 「ん?どうしたの?」

 「お願いがあるの。聞いてくれる?」

 ラーファイルは驚いた。イベルナがお願いをしてきたことが初めてだったからである。 

 「あぁ、番の頼みなら何でも。」

 「本当ね、嬉しいわ。」

 「で、望みは何なの?」

 「人を殺して欲しいの。貴方なら、容易いでしょ?」

 イベルナは妖艶に微笑んでいた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

王宮侍女は穴に落ちる

斑猫
恋愛
婚約破棄されたうえ養家を追い出された アニエスは王宮で運良く職を得る。 呪われた王女と呼ばれるエリザベ―ト付き の侍女として。 忙しく働く毎日にやりがいを感じていた。 ところが、ある日ちょっとした諍いから 突き飛ばされて怪しい穴に落ちてしまう。 ちょっと、とぼけた主人公が足フェチな 俺様系騎士団長にいじめ……いや、溺愛され るお話です。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。

向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。 それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない! しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。 ……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。 魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。 木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ! ※第○話:主人公視点  挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点  となります。

処理中です...