~エシックスギア~

海音²

文字の大きさ
5 / 22
序章 旅立ち……そして入学

5話

しおりを挟む
 俺はユーリと、受付でされた質問の得意な武器について話してた。

「レイジって剣が得意なんやなぁ♪ ウチも剣と答えたで♪ まぁ…ウチの場合ちいっと特殊なんやけどね♪」

 そう言ってユーリは、腰に刺さってる木の棒に手を置いた。

「えっと…ユーリは木刀が得意って事なのかな?」

「レイジ絶対ウチの事、バカにしとるやろ?」

「そんなんじゃないよ!! でもそうやって木刀に手を置いてたら……さ?」

「レイジは見る目ないなぁ~ コレ木刀やなくて、仕込み刀っちゅうねん♪」

 そう言ってユーリは木刀を握りしめ、少しスライドさせた。中から、一瞬煌めいた片刃の剣が見えた。

「初めで見た剣だな。それにしても、普通の剣より細いし、何より片刃って大丈夫なのか?」

「コレなぁ、王虎百神国では、よぅ使われとる武器なんよ♪ まぁ確かに、普通の剣より耐久性は劣るんやけど、その分軽いから、素早く、そして鋭く斬る事ができるねん♪ それにな! ……まぁ手の内を、初日で全部見せるんは、やめとこか♪」

 そう言って仕込み刀の話を、暑く語り出そうとしてたユーリは、一瞬考えてからそれをやめ、納刀した。

「それに、もうすぐ倫理的歯車エシックスギアが手に入るさかい、この刀を使う事も、のぅなるやろしな…」

 どこか寂しそうに刀を撫でるユーリに、声をかけようとした時

「これより!入学式を始める!新調律師志望者は、速やかにそこの椅子に座るように!」

 突然大きな声が場を支配した。

「ほな行こか♪」

「…そうだな」

 さっきまでの寂しそうな顔はもう無くなり、それまでの様子と変わらないように見えた。

 その後俺たちは学校長の…なんだっけ? そうそう! ありがたいという話を、眠気と戦いながら聞いた。唯一覚えてるのは、『卒業1か月前に上位20名は優先的に自由に滞在地を決めることが出来る!』との事だった。上位に入れば確実に村に帰れる。それがすごく魅力的に感じ、そこだけはしっかり聞いて覚えてた。

 長く過酷なありがたいお話と言う、学校長の修行に耐えた俺達は、10組のグループに分けられた。俺は、名前を呼ばれ8組のグループの方へ行った。グループ内を見たがユーリの姿が無く、せっかく仲良くなったのにと思い、少し残念だった。

 全員のグループ分けが終わり、1人の先生が魔法陣を展開させ、全体に聞こえるほどの声で話し始めた。

「それでは今から入学試験を開始する!」

「「「はぁ!?」」」

 いやいや待ってくれ、今までのは一体なんだったんだ?

「静かに! 確かに驚くのは無理もない。各国の試験に合格し、やっとの思いで今日の入学式を、迎えたものたちばかりだろう。だが!! 実際の実力がどれくらいか、ちゃんと見ないことには、正式な合否は学校側も出せないのです。ですから、今からその入学試験を行います。試験内容はノアを守る現役の調律師と、模擬戦をしてもらいます。 ですが安心してください負けたら失格ではなく、あくまで実力を見る模擬戦ですから。それでは、頑張ってください」

 それだけ言い終わると、俺の居るグループに1人の調律師が現れた。誰かと思えば、昨日会ったトールだった

「8組の担当になったトールだ! みんなよろしく!!」

「「「よろしくお願いします」」」

「それでは、やりたいやつから順番に前に出てきてくれ!!」

 そう言って仁王立ちしたトールだが、すぐには誰も、前に出てこなかった。そりゃそうだろ…普通に考えたら何も手の内が分からない相手と、一体誰が我先にと前に出るのか……少し考えたら分かるだろうに……

「おーい! 試験不参加で不合格になってもいいのか?」

 そう言われたらやるしかないよな……俺は覚悟を決め自前の片手剣を握り、前に出た。

「おっ? やっと来たなって、 レイジじゃないか!? そうか8組に入ってたのか、それなら昨日教えとかなくて正解だったな」

「俺的には、教えて欲しかったんですけどね」

「それじゃ、早速武器を構えな」

 そう言ってトールは背中に背負ってた大剣を両手で構えた。

「安心していいぞ? 能力と武器は使わないから、コレもどこにでもある普通の大剣だ」

「あはは…それって安心要素になります?」

 正直構えは適当に見えるけど、経験の差なのか隙がないように感じる。

「初手は譲ってやるから、好きなタイミングでかかってきな」

「それでカウンターで終わりは、避けたいものですね」

「それはレイジの実力次第だろ?」

 トールはニカッと笑って左手を上げクイックイっと挑発してきた。

 俺は深呼吸して無駄な力を抜きトールめがけて駆け出した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

処理中です...