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悪役令息の事情 4
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「だが、そのことを殿下になぜお話にならなかったのです?殿下であれば、あなたの訴えを無碍にはしなかっただろうに」
彼の疑問は最もだ。事ここに至ってもクリスは僕の身を気遣っていた。王族である彼に訴えれば婚約解消は免れずとも、あの爺のところへ行かずともすむかもしれない。
ただし、大前提として僕は今日の今日まで『婚約は解消されない』と思っていたのだ。つまりは言う必要がないと判断して頭の隅に追いやっていた事案だった。
「そうですね。そうすればもっとマシな結果になったかもしれません。でも、急すぎてあの場では思い至らなかったのです。ここに腰を落ち着けて、この先のことを考えていた時に思い出してどうしようかと頭を悩ませていました」
「なるほど」
そう答えれば僕から手を離し、腕を組んで何かを思案しているギリアン卿。彼も僕の今後を憂えてくれているのだろうか。そう思うと何だか嬉しい。
「しかし、聞いたからにはそのまま放ってくことなどできませぬな。このコンラッド、微力ながらあなたにご助力いたそう」
挙句、己の身可愛さにシャルルに嫌がらせを重ねていた事実を知ってなお彼は僕を擁護しようと言うのだった。
僕は驚いて、慌てて頭を振った。
「そんな、話を聞いてくださっただけで充分です!あなたに迷惑はかけられない」
「迷惑などと。これは私が好きでやること。何か私に、頼ることはありませんかな?」
にこ、と目を細めて彼が笑う。その頼り甲斐のある笑顔はいつも僕に力をくれた。クリスとは違う形で僕の支えになり、背中を押してくれた。
あなたはこんなことになってもまだ、僕の背を支えてくれるのか。
その優しさに、つけ込んでもいいのだろうか。
「なら…それなら…」
声が震える。
差し伸べられた救いの手。迫り来る最低を回避し、幸せを掴むための次の一手。
このチャンスをフイにするわけにはいかない。僕はせめて少しでも愛らしく見えるように精一杯目を潤ませて、ギリアン卿の手を両手でしっかりと握りしめた。
「卒業までに、婚活をしたいです。父にばれないよう、秘密裏に」
「婚活?」
「はい。父にも周囲にも知られないように、新しい婚約者を。僕を愛し、僕も愛を返せるようなそんな方とめぐり逢いたい」
潤んだ瞳で見上げる僕の願いにギリアン卿が目を見開く。ギリアン卿は多分、クリスや陛下に口利きをしたり、ベッケル侯爵家からそれとなく僕の父に話をしたりという根回しを想像していたんだろう。
それも一つの手ではある。というかそれが一番楽だ。けれど僕は、この際だから自分の力で将来を掴み取りたいと思った。
王子の婚約者と決められた時から、恋を諦めた。クリスと苦楽を共にしていけるのならそんなもの要らないと思っていた。
でも本当は。本当は。
「僕だって本当は、恋がしたかったんです」
ギリアン卿の目を見てはっきりと僕は願いを口にする。それが冗談でも何でもないのだとわかったのか、彼は少し苦笑いを浮かべた後に頷いてくれた。
「婚活とは……あまり慣れぬことだが他ならぬレッドメイン殿の頼み。全力を尽くしましょう」
「ありがとうございます!」
僕もぱぁっと明るい笑顔を見せて感謝の言葉を口にする。そしてここは畳みかけるべきところ!とばかりに握ったままだった手にぎゅっと力を込め、起死回生の一手を打った。
「ではギリアン卿、婚活の第一歩として、僕とデートをしてくれませんか?」
「……なんですと?」
「婚活、協力してくれるんですよね?」
さあ、僕の幸せのため、あなたを罠に嵌めましょう。
悪い話ではないはずです。あなたもきっと、僕を愛してくれるはずだから。
彼の疑問は最もだ。事ここに至ってもクリスは僕の身を気遣っていた。王族である彼に訴えれば婚約解消は免れずとも、あの爺のところへ行かずともすむかもしれない。
ただし、大前提として僕は今日の今日まで『婚約は解消されない』と思っていたのだ。つまりは言う必要がないと判断して頭の隅に追いやっていた事案だった。
「そうですね。そうすればもっとマシな結果になったかもしれません。でも、急すぎてあの場では思い至らなかったのです。ここに腰を落ち着けて、この先のことを考えていた時に思い出してどうしようかと頭を悩ませていました」
「なるほど」
そう答えれば僕から手を離し、腕を組んで何かを思案しているギリアン卿。彼も僕の今後を憂えてくれているのだろうか。そう思うと何だか嬉しい。
「しかし、聞いたからにはそのまま放ってくことなどできませぬな。このコンラッド、微力ながらあなたにご助力いたそう」
挙句、己の身可愛さにシャルルに嫌がらせを重ねていた事実を知ってなお彼は僕を擁護しようと言うのだった。
僕は驚いて、慌てて頭を振った。
「そんな、話を聞いてくださっただけで充分です!あなたに迷惑はかけられない」
「迷惑などと。これは私が好きでやること。何か私に、頼ることはありませんかな?」
にこ、と目を細めて彼が笑う。その頼り甲斐のある笑顔はいつも僕に力をくれた。クリスとは違う形で僕の支えになり、背中を押してくれた。
あなたはこんなことになってもまだ、僕の背を支えてくれるのか。
その優しさに、つけ込んでもいいのだろうか。
「なら…それなら…」
声が震える。
差し伸べられた救いの手。迫り来る最低を回避し、幸せを掴むための次の一手。
このチャンスをフイにするわけにはいかない。僕はせめて少しでも愛らしく見えるように精一杯目を潤ませて、ギリアン卿の手を両手でしっかりと握りしめた。
「卒業までに、婚活をしたいです。父にばれないよう、秘密裏に」
「婚活?」
「はい。父にも周囲にも知られないように、新しい婚約者を。僕を愛し、僕も愛を返せるようなそんな方とめぐり逢いたい」
潤んだ瞳で見上げる僕の願いにギリアン卿が目を見開く。ギリアン卿は多分、クリスや陛下に口利きをしたり、ベッケル侯爵家からそれとなく僕の父に話をしたりという根回しを想像していたんだろう。
それも一つの手ではある。というかそれが一番楽だ。けれど僕は、この際だから自分の力で将来を掴み取りたいと思った。
王子の婚約者と決められた時から、恋を諦めた。クリスと苦楽を共にしていけるのならそんなもの要らないと思っていた。
でも本当は。本当は。
「僕だって本当は、恋がしたかったんです」
ギリアン卿の目を見てはっきりと僕は願いを口にする。それが冗談でも何でもないのだとわかったのか、彼は少し苦笑いを浮かべた後に頷いてくれた。
「婚活とは……あまり慣れぬことだが他ならぬレッドメイン殿の頼み。全力を尽くしましょう」
「ありがとうございます!」
僕もぱぁっと明るい笑顔を見せて感謝の言葉を口にする。そしてここは畳みかけるべきところ!とばかりに握ったままだった手にぎゅっと力を込め、起死回生の一手を打った。
「ではギリアン卿、婚活の第一歩として、僕とデートをしてくれませんか?」
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さあ、僕の幸せのため、あなたを罠に嵌めましょう。
悪い話ではないはずです。あなたもきっと、僕を愛してくれるはずだから。
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