【完結】魔導師様と夢魔に囚われた少年 ─ファンジェレル大陸・男恋譚─

星谷芽樂(井上詩楓)

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第三章

第18話②

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「――――っうぅ! ふぇぇん!」

 カンリンの手の温もり、優しさがタキオンの傷に深く響いてくる。少年は声を振り絞り、嗚咽しながら自分の気持ちを打ち明けた。

「ボ、ボクは……先生ともっと親しくなりたかった。ひぐっ! でも、先生は凄く優しいのに……絶対にボクの心の一番深くに入ろうとしないんです……それがボクは寂しくて、辛くて……ぅう……先生の考えてる事が分かりませんっ……ぐすっ!」

 タキオンは言葉を紡ぐ度に自信を無くして俯いてしまい、最後にはカンリンへ紅髪のつむじを見せてしまっていた。
 カンリンは少年の落ち込み様に少し驚いたものの、しかし、すぐさま同情の笑みを浮かべて華奢な肩にそっと手を乗せてあげる。

「昔からそんな男でしたよ、デュボイズは。自分の気持ちより、任務や仕事を何よりも全うさせる人でした。だからこそ、浮ついた話の出ない彼にタキオン殿をお任せしたのです」
「ふぇ……そうなんですか……?」
「もちろんですとも。特に貴方の治療法はとてもデリケートな方法です。人によっては別の意図を持たれて弄ばれる可能性もあったわけですから」
「……そういう意味では、先生は安心できる人だったんですか?」
「えぇ、その通りです」

 確かにあれだけ何度も淫らな姿を曝け出したら、相手によっては淫楽に溺れ、いつの間にか目的が別のものにすり替わって遊ばれていたかもしれない。
 そう考えると、自我と冷静を保ったデュボイズの精神力は、どれほど強固なものだったのだろう。

「さて……タキオン殿がこちらにいらっしゃると言う事は、デュボイズもこの大図書館のどこかに居るのですよね?」
「は、はいっ。そうですけど……」

 肩を窄めるタキオンとは対照的に、カンリンは鼻でひと呼吸ついて辺りを見回す。しかし、この大図書館の広さでは、目当てのデュボイズはそう簡単に見つからなかった。

「何もなければデュボイズの横を素通りするつもりでしたが……タキオン殿の話を聞いてしまっては、そうもいきません。一度デュボイズに会ってよく話をしてみましょう」
「えっ、いいんですか……? お忙しいのに……」
「良いのですよ。デュボイズはもう少し素直になってもらわねばいけませんからねぇ」

 華奢な身体を更に縮こませる少年に、カンリンが優しくなだめて微笑み返した。その美麗で涼やかな笑顔と包み込むような優しさに、タキオンはすぐにでも心が溺れてしまいそうになる。

 その様子にカンリンも優しい笑みを返し、その場を後にした。
 そして去り際に一言。「性に関する本を調べたいなら、三階の左奥に行きなさい」と少年の耳元に甘く告げたのだった。

「えっえ? なんでボクが探してる本を知ってたの!?」

 タキオンは青年の優美な後ろ姿を眺めながら、再び顔を赤くして胸の中を締め付けられたのだった。

 カンリンにはタキオンが何の為にここへ来たのか、全て見透かされていたかもしれない。屋敷の本を読んだ事も、水晶の映像を見た事も、実は全て分かっていたのだろう。
 そう気づいた瞬間、タキオンは恥ずかしさが腹の奥から込み上げて、どこかに隠れたい衝動に駆られてしまった。

 あの水晶の映像を思い出す。カンリンと水色髪の少年の愛の強さを感じる。しかし、今のデュボイズとタキオンに、同じ強さはあるだろうか。

(いいなぁ……ボクもあんな風に先生と愛し合ってみたい……)

 タキオンは仲睦まじい二人の映像が脳裏に焼き付いて離れず、気付かぬ内に片頬には小さな雫が流れ落ちていた。
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