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しおりを挟む沢でのことがあったあとも、ズィーロは少しずつ、だが着実にマゼンダと触れる時間を増やしていった。
付き合って2ヶ月したころ、薬を卸している商会から大量の受注があり、家から運び出すのを手伝うためにマゼンダの家に初めて来たズィーロは、それから何かしらの理由をつけては彼女の家に来るようになった。
商会での仕事が終わると、彼女に夕食としてつまめるものを手土産にわざわざ森のなかの家に来る。昼に薬を卸すために出掛けようとすると必ず迎えに来る。
ひとりで大丈夫だから、と伝えても、森のひとり歩きは危ないよ、と言うズィーロに愛おしげに頬をなぞられると、大切にされている実感が湧いて本当に幸せだった。
なんせこの2年、すべてひとりでこなしてきたのだ。
ずっと実は寂しかった。家族と暮らしていた頃はひとりきりになるなんてなかなかなかったし、何より末っ子のマゼンダを家族たちはとても大切にしてくれていた。
家を出て、ひとりで頑張って、ここまでやってきた。ずっと気を張っていたし、疲れていたし、何よりも優しく甘やかされることに飢えていた。そんなところにこんな風に愛してもらえたら、嬉しいに決まっている。
マゼンダは、ズィーロの与えてくれる環境が心地良すぎることを何となく感じてはいたが、どうしても、拒むことは出来ずにいた。
今日もお昼から家を訪れてきたズィーロと、焼いてあったキノコのキッシュを食べて、彼が持ってきてくれたサーモンのマリネと白葡萄のジュースを楽しんだ。
彼の持ち込んでくれる食事はいつもマゼンダの好みに合う。
なぜかと問うても「好きな人のことは分かるものなんだよ」と言われるばかりだった。
食後にまったりとふたりで話をしていても本を読んでいても、なぜかズィーロは最終的にマゼンダを脚の間に挟んで抱き込んで座る。
恥ずかしい思いはあるが、毎回おいでと言われると抗い難くて素直に寄って行ってしまう。
恥ずかし過ぎて彼には言えないが、ぴったりと密着できるこの体勢は、実はマゼンダも好きだからだ。
「マゼンダ、良い匂い。大好き」
「ふふ、わたしも大好きだよ」
後ろから抱き締められ匂いを嗅がれるのにも、慣れてしまった。
これは普通にお付き合いしている人たちもやることなんだろう。きっとそう。
初恋中のマゼンダは初めての彼氏であるズィーロに全幅の信頼を寄せていたので、そう信じていた。
彼女を強く抱き込んでうっとりと耳の裏の匂いを嗅ぐズィーロは少し変態フェチが強めかも知れないけど。
ちゅ、ちゅ、と耳の下辺りの柔らかいところに何度もキスをされて身体が震える。恥ずかしい。いつも暮らしている、自分の家のなかだから、より一層恥ずかしい気持ちが強くなる。
「や、ズィーロ、くすぐったいよ」
「ごめん、あまりにも可愛くて」
額がつくほどに近い距離でそう言われると何だか強く拒めない。
だって好きな人から可愛いと言われているのだ。
嬉しくてマゼンダも彼の指に自分の指を絡めて、キスをする。
「ん…マゼンダ、もうちょっと、舐めて良い?」
うん?舐める?
キスではなく?
話しながらも柔らかな舌でペロリペロリと舐め上げてくる感触に震えながら、マゼンダは聞き返す。
「…舐めるの?」
「お願い」
「えーっと、」
「お願い、マゼンダ。…ダメ?」
請われながら何度も優しく首筋や耳の裏にキスをされて、何だかジワジワと絆されていく自覚はある。
でも舐めるって変じゃない?それって普通なの?それともズィーロがそういう趣味なの?とぐるぐる考えているのに、お願い、マゼンダ、と低い声を耳のなかへ囁かれて、思わず頷いてしまった。
きっと、これは、普通のカップルが、普通にすることだ。
わたしは初恋を楽しんでいるんだから、大丈夫。
マゼンダはそう思うことにする。
ズィーロに請われると、戸惑いながらもどうしても強く拒めない。
だって、初恋の人なのだ。
まず、声が良い。
顔も素敵。
今まで出会った男性のなかで、群を抜いて一番好みの男性が他でもない自分に甘えてくるのに、強く嫌なんて言えるひとはなかなかいないと思う。
仕方ない、弱くもなる、とマゼンダは自分を慰める。
「マゼンダ、嬉しい、大好き」
頷いた途端にギュッと強く抱き締められ、力を抜いて彼に背中を預けたマゼンダの胸元のボタンがサクサクと外されていく。
うん?
…良くない!
「ちょっ…!ズィーロ、何してるのっ」
「何って、舐めるのに邪魔だから」
「え、」
「洋服、邪魔だから脱ごうね」
え、え、と混乱している間に胸元のボタンは全開となり、思わず立とうと身を起こすが彼女を抱き込んだズィーロの身体はびくともしない。そのまま首に吸いつかれ、首筋を舐め上げられてすぐに力が抜けてしまった。
柔らかい長めの舌で首を舐めながら、晒された下着も手早くずらされる。形の良い、少し小ぶりな胸をマゼンダの肩越しに見下ろして、ズィーロは恍惚と息を吐く。
「可愛い、マゼンダ。大好き」
「まって、」
「やだ。こんなに柔らかくて可愛いマゼンダがいけない」
「や…んんっ」
振り向かされて、キスをされる。
もう片方の手が胸にやわやわと触れて、思わず腰を引く。が、ズィーロに後ろから抱かれているせいで、彼の身体により密着するような状態になってしまう。
ズィーロの指がマゼンダの胸の先端に触れ、なぞる。口の中で彼の長くて柔らかい舌が歯の裏を擦り、マゼンダの舌に絡んでくる。
「ふ、ふぅ、…っんぅう!」
振り向きながらの不自然な体勢でのキスに苦しさを覚えると、ズィーロはそれを感じ取ったのかすぐ唇を離した。
そのままの流れで後頭部にキスを落とし、マゼンダを抱き込んだまま身体を反転させる。
「うぇ?」
「マゼンダ、可愛い。肌、綺麗だね。しっとりしてて、吸い付いてくるみたい」
マゼンダの思考が追いつく前に、どんどんズィーロは追い込んでいく。
ふたりで座っていたソファに、マゼンダの背が触れている。
横に寝転ぶような格好のマゼンダに、上から見下ろしてくるズィーロは、すぐに彼女に深いキスを始めた。
「…んんっ」
「…ん、はぁ、マゼンダ、大好きだよ」
囁いて、唇から離れたと思えば見せつけるように柔らかい舌を彼女の胸の先へあてる。獣が水を飲むように、ペチャペチャと軽く触れるだけの愛撫をされて、くすぐったいとはまた違う感覚に鳥肌をたてた。
背筋を何かが走るように、ゾクゾクする。
こんな感覚は初めてで、何をどうすれば良いのか全く分からない。
こわい。くすぐったい。恥ずかしい。
「ふ、ぅ…!ズィーロ…っ」
「気持ちが良いんだね、可愛いマゼンダ」
「や、やだ、…んっふぁっ」
「まだまだ、もっと。たくさん味わせて」
肌を舐め回す湿った音と、衣擦れの音、マゼンダの喘ぐ声にズィーロの吐息の音。
耳がそれしか拾ってこない。
身体中が初めて与えられる変な感覚に支配されて、もう動けなくなってしまっているマゼンダに、ズィーロは舌で丹念に余すところなく嬲っていく。時折触れるカサついた指が肌を撫でると、それだけで何だか身体の奥がキュウっとなるのが分かる。
なに、これ。
翻弄されて考えのまとまらない、むしろどんどん溶かされていく思考。それとは反対に、下腹部にずくずくと熱がこもるような疼きが溜まっていく。ズィーロの与える刺激が、全身から波のようにマゼンダを飲み込んでいった。
そんなマゼンダの姿を見て、嬉しげに微笑んだズィーロは、身体を彼女の脚の間に入れたのを見て、彼女は焦る。
何だか下着が濡れてしまっているのだ。見えてしまう。
彼女にも知識はある。濡れているということは、彼女の身体がそういう風になってしまっているのだということ。
「っズィーロ…!」
「ここ、この前怖くなっちゃったところ。…触るよ」
「…ん、やだ、そんなとこ…っあぁっ」
「良かった、ぬれてる。気持ち良いんだね」
一気に腰を上げられ下着を脱がされると、濡れているせいでひんやりと冷えてしまう。
なのに、何だかそこだけが変に疼いて熱い。
やだ、そんなところ、と抵抗しようにも、ズィーロと目が合うと身体が動かない。腰がいうことを聞かないし、太腿を這い回る柔らかい舌が秘所に行き着いたせいで、言葉が霧消してしまう。
「あ、やぁっズィーロ…!や、んん…!」
「おいし、マゼンダ、良いにおい…やべ、止まらなくなる」
「やっこわい、ズィーロぉ…っ」
「大丈夫、怖くないから。…もっともっと、気持ち良くしてあげる」
足の付け根に顔を埋めたまま、ズィーロは大丈夫だよ、大好きだよ、と彼女の秘所にキスをする。
秘所にキスをされて割れ目を舐め上げられ、舌を差し入れられて腰が浮く。今まで感じたことのない、痛いくらいの気持ち良さが迫り上がって来る。粘りけのある、湿った音が絶えず聴こえて、それだけでも恥ずかしくて死にそうなのに、ズィーロの舌は動きを止めない。
「ああっズィーロ、や、こわい、…うぅっん!」
安心させるように、彼女の太ももを掴んでいたズィーロの乾いた手のひらがスルスルと肌を撫で上がってくる。腰から脇腹を伝って、胸へ。
胸の突起に指が触れて、つままれ、こねられると同時に、陰核に強く吸い付かれ頭が真っ白になった。
「は、は…っ!やぁ、なに、んんー!」
お腹のなかで何かが爆発した感覚。
身体が痙攣して、足先に力が入る。視界がチカチカするような感覚と、どこにいるのか分からないような浮遊感に、マゼンダは意識を飛ばした。
「可愛いマゼンダ。上手にイけたね」
そのまま散っていく意識を本格的に手放す前に、ズィーロの声が聞こえた気がした。
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