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転生令嬢はレベル上げする必要がございます。
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どうやら私は、RPGで言えば、レベル1の状態で最高クラスの魔人を喚び出そうとしたらしい。そのせいで、あっという間に体内の魔力を枯渇させて、倒れてしまったのだ。
深い眠りから目が覚めて、ほうと深くため息を吐く。そして、ぽつりと呟いた。
「……『竜が普段から全裸』だなんて……ッ!! これから、私はどう竜と向き合えば」
刺激が強すぎる。
だってそうでしょう、目の前に全裸の推しがいるようなものよ? 全てを曝け出した推しが、無防備な姿でそこにいるだなんて、ああ……なんてこった!!
黒竜の治療が出来なかったショックよりも、その事実に気がついてしまったことが余りにも衝撃的過ぎて、私は手で顔を覆って体を捩った。
「これは駄目だ。お水でも飲もう……」
そう言えば、随分と口の中がカラカラだ。
私は体を起こして、枕元に置いてあった水差しに手を伸ばした。その時だ。私室の扉が開きカーラが入ってきたのは。カーラは私に意識があるのを確認するなり、感動で涙を潤ませて、持っていたタオル類を放り投げて私に抱きついてきた。
「お、お嬢様ああああ! 目が、目が覚めましたのね……!!」
どうやら、私は丸一日眠っていたらしい。
その間、随分と心配を掛けてしまったようだ。カーラに「ごめんごめん」と笑いながら謝る。そして、ふとバルコニーの方を見て――そこにあったものに、愕然としてしまった。
それは天井から縄で吊るされたオルバだ。まるで蓑虫のように、ぷらぷらと揺れて白目を剥いている。
「……オルバどうしたの」
「お嬢様に添い寝をすると、何度も何度も侵入してくるものですから……面倒なので捕獲しましたの」
「それは……なんというか、頑張ったね」
「お嬢様に添い寝するのは、わたくしだけで間に合っておりますのにね。まったく、愚かなことですわ」
「……私は何も聞かなかった……!!」
私は「お嬢様ったら、うふふ」なんて、目をぐるぐるさせているメイドを無視して、身支度を整える。そして、カーラの用意したパン粥を口にしてなんとか栄養を補給すると、心配するメイドを振り切って屋敷の外に出た。
一面の草原を、心地よい風が吹いている。そして、湖のほとり――そこには、先日私がイフリートを喚び出そうとした魔法陣があった。
「……へい、ご機嫌はいかが」
『……最悪だな』
そこには、顔だけが地面から突き出している炎の魔人イフリートの姿があった。
イフリートは私が中途半端な魔力で喚び出したせいで、顔だけが現界してしまったらしい。まるで茸みたいに強面の顔が地面から生えている。赤い瞳に、燃えるような赤い髪。額からは捻れた角が生え、頬には、真紅の炎の入れ墨が入っている。一見すると、非常に恐ろしい生き物だ。顔の大きさからすると、かなりの巨躯を持つのだろう。
私はイフリートの傍らにしゃがみ込むと、指先で頬をツンツンしながら言った。
「ごめんね。もうちょっと修行してからにすればよかったね」
『……ええい、突くな! 当たり前だろう。俺様は、S級精霊だぞ! 今すぐ還せ!』
「それは無理。還すのにも魔力がいるの。また倒れちゃう」
『ぐぬぬ……!』
イフリートは苛立ちを露わにすると、私を燃えるような赤い瞳で睨みつけた。
私はその視線を受けて、涙を浮かべて口元を押さえた。
「……顔は悪鬼みたいでかっこいいのに……ダルマみたい」
『誰のせいだッ、誰の!!』
「よーしよしよし、なんとかして戻してあげるからね」
『頭を撫でるな……! 俺は犬ころじゃないぞ!』
私は真っ赤な髪をワシャワシャと混ぜると、イフリートの隣に敷物を敷いた。
そして、色々と準備を始める。大きな鍋にそれを乗せる五徳。空き瓶に、漏斗に銀の匙。その様子を、イフリートは不満そうに見つめると「なにをしているんだ、早く戻せ」と唇を尖らせている。
私は小さく首を振ると、イフリートに向き合った。
「だから、貴方を返すために準備しているんじゃない。魔力が足りないって言ったでしょう? 正直なところ、今の私の実力じゃどうにも出来ないのよ。でも、このまま放って置くわけには行かないし。……つまりはレベル上げが必要なわけ」
『……レベル?』
「そうよ。この世界ってまるでゲームみたいなのね。レベルと言う概念がある」
日本のゲームによく似たレベルシステムは、勿論経験値を得ることで上がっていく。
――だから、私は錬金をするのだ。
経験値が得られる行動は、なにも戦闘だけじゃない。錬金術もそのうちのひとつだ。
都合のいいことに、オルバは錬金術師だから材料は山ほどある。しかも、貴重なものも勢揃い。RPGならば、後半に入らないと手に入れられない素材が、既に揃っているような状態。質が高く、効能が強い薬ほど得られる経験値が高い。私はかなり恵まれていると言えるだろう。
因みに、私は相手のレベルを見ることも出来る。
イフリートはレベル50だ。半端ない。イフリート凄い。
所謂、一般的な大人の平均レベルは10程度らしい。イフリートのレベルの高さが伺われる。私は勿論レベル1。まあ、私は見た目は五歳児だけれど、生まれたばかりだからしょうがないだろう。
「さあ、レベルを上げるために、錬金をしましょうかね……! レベル2には、傷薬を3つくらい作れば上がるはずー!」
『おお、頑張ってレベルを上げてくれ』
「頑張れ、頑張れってハートマーク付きで言ってくれないとやる気がでません」
『お前は鬼か!?』
私は「冗談ですう」なんていいながら、鍋に材料を入れていく。
薬のレシピは私の中にある。なにせ、この世の全ての情報を識っているのだ……!!
「うえっげほん、げほっ! い、イフリート炎をちょうだ……げほん!」
『おい、早速粉を吸い込んでるぞ、大丈夫かお前』
「げほん、まだ、レベル1だからね……!!」
『失敗をレベルのせいにするな! 馬鹿者!」
まるで真面目な体育教師みたいな事を言いだしたイフリートに辟易しながらも、魔力を注いで鍋の中身を混ぜる。イフリートは渋々炎を出してくれた。流石レベル50の炎だ。綺麗な青色をしている。
すると、目の前に小さいウィンドウが現れた。そこには『精霊の炎による加熱、効果1・5倍とある。……ひゅう! なんだか、オラワクワクしてきたぞ……!!
私は上機嫌で鍋を掻き混ぜながら、材料を次々と追加していった。
『……おい。お前』
「なあに、イフリート」
『お前が作っているの、普通の傷薬ポーションなんだよな……?』
「そうー」
すると、イフリートは恐怖の表情を浮かべて言った。
『なら、なんでそこにセイレーンの肝やら、不死鳥の尾羽根やら貴重な材料をバンバン入れているんだ!』
「えー。だって、ほら。こういうの入れたほうが、凄いのが出来そうじゃない?」
『お前……錬金をするのは初めてなんだよな?』
「うん」
『基本のレシピを無視するな! なんでもかんでも入れるな! マズ飯を作る新婚妻かお前は!』
「ええ~。ほら、火を通せば大体のものはイケるわよ」
『うわああああ! そういうところ!! そういうところだぞ、お前!!』
私は、イフリートの制止を無視して、鍋に色々と投げ込んだ。
そして、仕上げとばかりに、注ぎ込む魔力の量を一層多くする。
すると、鍋の中身がカッと光り、辺りにまばゆい光を放った。
「……お?」
不思議に思って、鍋の中を覗き込む。すると、鍋の中身と目が合った。
「ぎゃぴー!」
それはぴょん、と鍋から飛び出すと、地面をずりずりと這い出した。
「『…………』」
私とイフリートは、チベットスナギツネみたいな顔になってそれを暫く眺める。
ぬるぬる地面を這っているそれをじっと見つめて――忘れることにした。
そして、徐に自分のレベルを確認する。すると、何故かレベルが上がっていた。どうやら、傷薬以上の効果を持つ何かを作り出したことによって、余分に経験値を貰ったらしい。
「……やったぜ!」
『お前はちょっとそこに正座しろ……!!』
この後、私は世界で初めて、イフリートに説教をかまされたホムンクルスになったのだった。
*
現在のアンジェリカさんのレベル 2
深い眠りから目が覚めて、ほうと深くため息を吐く。そして、ぽつりと呟いた。
「……『竜が普段から全裸』だなんて……ッ!! これから、私はどう竜と向き合えば」
刺激が強すぎる。
だってそうでしょう、目の前に全裸の推しがいるようなものよ? 全てを曝け出した推しが、無防備な姿でそこにいるだなんて、ああ……なんてこった!!
黒竜の治療が出来なかったショックよりも、その事実に気がついてしまったことが余りにも衝撃的過ぎて、私は手で顔を覆って体を捩った。
「これは駄目だ。お水でも飲もう……」
そう言えば、随分と口の中がカラカラだ。
私は体を起こして、枕元に置いてあった水差しに手を伸ばした。その時だ。私室の扉が開きカーラが入ってきたのは。カーラは私に意識があるのを確認するなり、感動で涙を潤ませて、持っていたタオル類を放り投げて私に抱きついてきた。
「お、お嬢様ああああ! 目が、目が覚めましたのね……!!」
どうやら、私は丸一日眠っていたらしい。
その間、随分と心配を掛けてしまったようだ。カーラに「ごめんごめん」と笑いながら謝る。そして、ふとバルコニーの方を見て――そこにあったものに、愕然としてしまった。
それは天井から縄で吊るされたオルバだ。まるで蓑虫のように、ぷらぷらと揺れて白目を剥いている。
「……オルバどうしたの」
「お嬢様に添い寝をすると、何度も何度も侵入してくるものですから……面倒なので捕獲しましたの」
「それは……なんというか、頑張ったね」
「お嬢様に添い寝するのは、わたくしだけで間に合っておりますのにね。まったく、愚かなことですわ」
「……私は何も聞かなかった……!!」
私は「お嬢様ったら、うふふ」なんて、目をぐるぐるさせているメイドを無視して、身支度を整える。そして、カーラの用意したパン粥を口にしてなんとか栄養を補給すると、心配するメイドを振り切って屋敷の外に出た。
一面の草原を、心地よい風が吹いている。そして、湖のほとり――そこには、先日私がイフリートを喚び出そうとした魔法陣があった。
「……へい、ご機嫌はいかが」
『……最悪だな』
そこには、顔だけが地面から突き出している炎の魔人イフリートの姿があった。
イフリートは私が中途半端な魔力で喚び出したせいで、顔だけが現界してしまったらしい。まるで茸みたいに強面の顔が地面から生えている。赤い瞳に、燃えるような赤い髪。額からは捻れた角が生え、頬には、真紅の炎の入れ墨が入っている。一見すると、非常に恐ろしい生き物だ。顔の大きさからすると、かなりの巨躯を持つのだろう。
私はイフリートの傍らにしゃがみ込むと、指先で頬をツンツンしながら言った。
「ごめんね。もうちょっと修行してからにすればよかったね」
『……ええい、突くな! 当たり前だろう。俺様は、S級精霊だぞ! 今すぐ還せ!』
「それは無理。還すのにも魔力がいるの。また倒れちゃう」
『ぐぬぬ……!』
イフリートは苛立ちを露わにすると、私を燃えるような赤い瞳で睨みつけた。
私はその視線を受けて、涙を浮かべて口元を押さえた。
「……顔は悪鬼みたいでかっこいいのに……ダルマみたい」
『誰のせいだッ、誰の!!』
「よーしよしよし、なんとかして戻してあげるからね」
『頭を撫でるな……! 俺は犬ころじゃないぞ!』
私は真っ赤な髪をワシャワシャと混ぜると、イフリートの隣に敷物を敷いた。
そして、色々と準備を始める。大きな鍋にそれを乗せる五徳。空き瓶に、漏斗に銀の匙。その様子を、イフリートは不満そうに見つめると「なにをしているんだ、早く戻せ」と唇を尖らせている。
私は小さく首を振ると、イフリートに向き合った。
「だから、貴方を返すために準備しているんじゃない。魔力が足りないって言ったでしょう? 正直なところ、今の私の実力じゃどうにも出来ないのよ。でも、このまま放って置くわけには行かないし。……つまりはレベル上げが必要なわけ」
『……レベル?』
「そうよ。この世界ってまるでゲームみたいなのね。レベルと言う概念がある」
日本のゲームによく似たレベルシステムは、勿論経験値を得ることで上がっていく。
――だから、私は錬金をするのだ。
経験値が得られる行動は、なにも戦闘だけじゃない。錬金術もそのうちのひとつだ。
都合のいいことに、オルバは錬金術師だから材料は山ほどある。しかも、貴重なものも勢揃い。RPGならば、後半に入らないと手に入れられない素材が、既に揃っているような状態。質が高く、効能が強い薬ほど得られる経験値が高い。私はかなり恵まれていると言えるだろう。
因みに、私は相手のレベルを見ることも出来る。
イフリートはレベル50だ。半端ない。イフリート凄い。
所謂、一般的な大人の平均レベルは10程度らしい。イフリートのレベルの高さが伺われる。私は勿論レベル1。まあ、私は見た目は五歳児だけれど、生まれたばかりだからしょうがないだろう。
「さあ、レベルを上げるために、錬金をしましょうかね……! レベル2には、傷薬を3つくらい作れば上がるはずー!」
『おお、頑張ってレベルを上げてくれ』
「頑張れ、頑張れってハートマーク付きで言ってくれないとやる気がでません」
『お前は鬼か!?』
私は「冗談ですう」なんていいながら、鍋に材料を入れていく。
薬のレシピは私の中にある。なにせ、この世の全ての情報を識っているのだ……!!
「うえっげほん、げほっ! い、イフリート炎をちょうだ……げほん!」
『おい、早速粉を吸い込んでるぞ、大丈夫かお前』
「げほん、まだ、レベル1だからね……!!」
『失敗をレベルのせいにするな! 馬鹿者!」
まるで真面目な体育教師みたいな事を言いだしたイフリートに辟易しながらも、魔力を注いで鍋の中身を混ぜる。イフリートは渋々炎を出してくれた。流石レベル50の炎だ。綺麗な青色をしている。
すると、目の前に小さいウィンドウが現れた。そこには『精霊の炎による加熱、効果1・5倍とある。……ひゅう! なんだか、オラワクワクしてきたぞ……!!
私は上機嫌で鍋を掻き混ぜながら、材料を次々と追加していった。
『……おい。お前』
「なあに、イフリート」
『お前が作っているの、普通の傷薬ポーションなんだよな……?』
「そうー」
すると、イフリートは恐怖の表情を浮かべて言った。
『なら、なんでそこにセイレーンの肝やら、不死鳥の尾羽根やら貴重な材料をバンバン入れているんだ!』
「えー。だって、ほら。こういうの入れたほうが、凄いのが出来そうじゃない?」
『お前……錬金をするのは初めてなんだよな?』
「うん」
『基本のレシピを無視するな! なんでもかんでも入れるな! マズ飯を作る新婚妻かお前は!』
「ええ~。ほら、火を通せば大体のものはイケるわよ」
『うわああああ! そういうところ!! そういうところだぞ、お前!!』
私は、イフリートの制止を無視して、鍋に色々と投げ込んだ。
そして、仕上げとばかりに、注ぎ込む魔力の量を一層多くする。
すると、鍋の中身がカッと光り、辺りにまばゆい光を放った。
「……お?」
不思議に思って、鍋の中を覗き込む。すると、鍋の中身と目が合った。
「ぎゃぴー!」
それはぴょん、と鍋から飛び出すと、地面をずりずりと這い出した。
「『…………』」
私とイフリートは、チベットスナギツネみたいな顔になってそれを暫く眺める。
ぬるぬる地面を這っているそれをじっと見つめて――忘れることにした。
そして、徐に自分のレベルを確認する。すると、何故かレベルが上がっていた。どうやら、傷薬以上の効果を持つ何かを作り出したことによって、余分に経験値を貰ったらしい。
「……やったぜ!」
『お前はちょっとそこに正座しろ……!!』
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