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しおりを挟むそれからは4人で渋谷を散策したり、
スカイツリーに行きたいと言っていたので、連れて行ったりして気づけば夜の8時を回っていた。
そのまま夕食を食べるために通りかかったファミレスに入った。
「今夜はどこで泊まるの?」
注文を終え、待っている間に食後に解散かと思った私は、みぃに聞いた。
しかし、質問が良くなかったのか、みぃとキラ君が顔を合わせ、渋い表情を浮かべる。
「実は着いてからビジネスホテルでも予約すればいいと思ったんだけど、この長期休みでどこもいっぱいでさ。お金もそこまで多いわけじゃないから…カプセルホテルしかないかなって…」
「何も考えてないんですね」
いじいじしながら言うみぃに宮島君がズバっと切り裂く。
それにキラ君も苦笑いを浮かべた。
「カプセルホテルも取れるか微妙ですよ。」
そして追い打ちをかけるかのようにまた続けた。
その言葉に2人は「え」と声を上げ衝撃的な表情を見せる。
確かに長期休み中、ビジネスホテルなどの安い所はもちろん、カプセルホテルなどもいっぱいになってしまうと聞いたことがあるため、あながち宮島君の言っていることは間違っていない。
「そんな…どうしよう」
今にも泣きだしそうなみぃに、キラ君も眉間にシワを寄せ考え始めている。
「…うちでよければ泊まる?」
もうこうなっては見捨てることなどもできない。
どうせ無駄なお金を払うくらいなら、1日くらい私も構わないと思ったので提案してみた。
幸い掃除もしておいたので、汚い部屋を見せることもなく、私も問題ない。
「いや、でも悪いだろ」
目を輝かせたみぃとは別にキラ君は申し訳なさそうにしている。
「大丈夫だよ」
「やった!!リノのおうちだ!」
いやぁと小さな声を漏らすキラ君の横でみぃは両手を上げて喜ぶ。
そんなに喜んでくれるなら提案したかいがあった。
「でもなんか俺まで…いいのか?」
さすがに抵抗を感じているのか、キラ君はなかなか首を縦に振らず、ずっとごもごもとしているが、それも私はあんまり気にしていない。
さすがにキラ君一人となると話は変わるものの、彼女のみぃも一緒だし、1LDKなので雑魚寝にはなるかもしれないが、何かが起きるような心配もないので、私的には何がキラ君自身ひっかかっているのか分からなかった。
「そうだ!リノさえ良ければこの後みんなでリノのお家でお酒飲んでパーティーしようよ!」
「え?」
ごもるキラ君をよそにみぃは続けて嬉しそうに言う。
そこまでは許してないぞ。
と思ったものの、みぃの性格はだいたい把握しているので、きっと私がダメと言っても、また可愛い顔をしていつもの甘え声でお願いと言ってくるに違いない。
私が断れないことを知っててやってくるので質が悪いと言えるが断り切れない私にも非はあるので、仕方がない。
「僕もですか?」
「当たり前じゃん!ねえ、リノいいよね?これでバイバイも寂しいし…」
まさか自分も参戦するとは思っていなかった宮島君も目を丸くしている。
しかしそんなことお構いなしでどんどん突っ込んでくるみぃは私にうるうるした目を向け、手を重ねて言ってきた。
声だけでもみぃのお願いの破壊力があるのに、それに顔と可愛い動作がつけば、断るやつなんていないだろう。
私は大きく溜息をつくと、あっさりとみぃのお願いを聞くこととなってしまった。
そのまま私たちはご飯を済ませると、近くのスーパーに寄りお酒を購入。
幸い宮島君も成人しているので、お酒は問題ない。
たくさんのお酒を宮島君抜きで割り勘にすると、私たちは私の家に向かった。
もう時間は夜9時過ぎ。
静かな住宅街にあるアパートなので、夜道も閑散としており、街灯と家の明かりのみ。
「こんな暗い所を毎日歩いてるの?」
さすがの暗さにみぃは心配そうな声を上げる。
「うん。ここは静かだし特に問題もないよ」
「いやいや、ちょっとは危機感持たないと。そうだ、コウと同じ職場なんでしょ?送ってもらえば」
こやつは何を言い出すんだ。
「いや、コウ君の家は…どこか知らないけどこの付近じゃないし、そんなことを頼めるような間柄でも」
「いいですよ」
おいー!!!
私がやんわり断ろうとしているのにこいつは何あっさりと言っているんだ。
宮島君に目を向けると、特に何も考えていないのか目をぱちぱちさせているだけ。
マスクをしているせいか表情も読み取れない。
「確かにこんな暗いと危ないだろ。コウがいいなら送ってもらった方が安心じゃないか?」
キラ君まで…。
私は頭を抱えるように額に手を当てると首を振った。
「もういいから!ほら、あれがうちだよ」
これ以上話すと本当に送ってもらうことになりかねないと思い、私は見えて来たアパートを指した。
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