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「え?」

一瞬自分の聞き間違いかと思うような言葉が聞こえ、私は固まった。

「少しでもリノさんに近づけるように自分を偽ってました」

全く持って意味が分からない。
私は淡々と真実を話し始める煌大の言葉に頭が真っ白になり始める。

「いつから…」

「リノさんが莉乃さんって気づいた時です」

「でも…私に全く興味なさそうにしてたじゃん」

煌大の話では、私をリノだと気づいたのは一緒にゲームをするようになって1年くらいした時だと言っていた。
その時、私の声を聞いてもしかしてと思っていたようだが、確信したのはオフ会の日にカフェで会った時と言っていたような気がする。

それまでは職場でもゲーム内でも一切私に興味があるような素振りは見せたことがない。
それどころか、全くもって興味なしという感じだった印象だ。

「一番最初にリノさんのことを好きだって気づいたのは、一緒にゲームをするようになって1年くらいでした。でもみぃさんに聞いたことがあったんです。リノさんが男性を苦手としているってこと」

あぁ、確かにみぃに過去の恋愛について聞かれた時にさらっと話したことがあったような気がする。

「だから、俺なりに気持ちを気づかれないように必死でした。でも日に日に会ってみたいなとか、もっと近づきたいとか気持ちが強くなってきて。それくらいに莉乃さんの声を聞いてもしかしてって思ったんです」

全く表情を崩さず話し続ける煌大だが、私の顔は徐々に熱くなってきた。
こんな思いを真っすぐ伝えられるようなことがないので、恥ずかしくなってくる。

「それからちょっとずつ莉乃さんと会話を重ねていくうちに、可能性が高いなって思って。で、オフ会の時にリノさんが莉乃さんだって確信した感じです。嬉しかったんですよね、こんな近くに好きな人がいたって知った時は。でも、焦ったら絶対距離置かれるし、いっそ興味ないふり続けて、近づいて行こうって。だから、俺の頭の中は下心満載でした」

そんなサラっと下心満載って…。

「嫌いになりましたか?俺のこと」

話終えた煌大は、下に向けていた目を私の方に向けるが、その顔はまたしてもしゅんっとした子犬のようだ。

ぐっ!ずるい!!その表情!

煌大の表情を見て何も言えずにいると、煌大はくすっと笑って立ち上がり、私の前に立った。
そして、私の髪の毛を少しすくうと、目線が合うように座って髪の毛に唇をつける。

「リノさん、可愛い系に抵抗できないですよね。知ってますよ俺」

何をしているのかとぎょっとして煌大を見ていると、そのまま煌大は髪の毛から手を離しソファーに座り込む私を逃げられないように腕を置いて囲い、にやっと笑った。

「な、なんで急に僕から俺になるのよ!」

私はぐっと近づこうとしてきた煌大を何とか手で押し、大きな声で言う。

「俺って言うよりも僕の方がリノさん的には安心するでしょ?それに最初から僕で言ってたし、今更変えるのもなと思って変えませんでした」

「な、なんで私なのよ!煌大の周りにはたくさん可愛い女の子もいるし大学にだって!それに年も離れすぎてるし!」

ぐいぐい押してくる煌大を私も精一杯自分の体重を乗せて押し返すが、徐々に距離が近づいてくる。

「他の女とか興味ないです。リノさんが好きなんで。それに年齢も離れてるって言っても、たった6歳差です。すぐ気にならなくなりますよ」

にっこり笑った煌大は、押し続ける私の手首を掴むと、そのまま自分の唇に掴んだ手を持っていく。
そして静かに手にキスをすると、次はゆっくりと指を舐め始めた。

ぬるっとした煌大の舌が私の指をなぞるように這い、それと同時に全身にぞわっとした感覚が襲う。
手を抜こうとするも、男性の力に適うはずもなく、しまいには私の指先を自分の口に含んだ。
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