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「んっ…」

私の指を咥えて舐める煌大の舌使いに変な声が漏れてしまった。

「可愛い…。ねぇリノさん、もっと聞かせてください」

私の声が聞こえた煌大は、指から口を離し、悪魔のような笑みを浮かべてぐっと私に顔を近づける。
そして、そのまま私の返事を聞くことなくそっとキスをしてきた。

唇を離して、すぐにそっと触れ、時々私の唇を舐めてそのまま口の中に入れてくる。
微かに香るお酒の匂いに私まで酔ってしまいそうだ。

「ふっ…ん…こう…煌大…」

「何ですか?」

自然と出た煌大の名前に反応すると、何事もなかったかのようにキスを止め、私に聞いてきた。
余裕な表情を見せる煌大に何だかムカツク。

「これ以上はやめて」

「これ以上って何ですか?」

きっと抵抗しても煌大には適わない。
それは過去の元カレたちからも学んだことだが、煌大が唯一元カレたちと違うのは、そこまで無理矢理犯そうという考えていないように感じたという所だ。

キスはしてきたけど、決して体には触れようとしてこないし、よく元カレたちがしてきた、ぐっと逃げられないよう体を引き付けてくるという行動もない。
どちらかと言うと、顔は近いが、体は離れているような感じだ。

「意地悪い顔しないで」

私が何のことを言いたいのか分かっているくせに、わざと不敵な笑みを浮かべる煌大に、私は目を反らして唇を尖らせた。
その隙をついてまた煌大がそっとキスをしてくる。

「分かりました。これ以上はしません。その代わり、俺とのこと考えてくれますか?」

俺とのことって…。

こっちは煌大を弟としてしか見たことがなかったが故に、こんな急な展開になって戸惑っている。
頭の中の色んな私が悲鳴を上げている中、煌大のことを急に恋愛対象として見ろだなんて難しい話だ。

「お願いです。今は俺のこと好きじゃないって知ってますが、今答えを出さないでください」

辛そうな表情を見せる煌大に、私は無理だとは言えず、結局答えは持ち越しとなった。
その後、煌大は何もしないという前提でうちに泊まると、翌朝素直に帰って行った。

昨日の急に男になった煌大が嘘のように、本当に何事もなかったかのように。
その様子に私も一瞬夢だったのではないかと感じたほどだ。

その後も煌大は特に私に何をしてくるでもなく、むしろ少し距離が空いてしまったかのように感じる。
毎日仕事終わりには家まで送ってくれるし、夜は一緒に4人でゲームもする。

だけど、家に寄っていくことはなくなり、話もあまりしなくなった。

『最近コウ、リノによそよそしくない?』

その日は久しぶりにみぃと2人でゲームをしていて、ふとみぃが言ってきた。
私はその言葉にドキっとしたが、みぃは煌大と私のことを知らないため、何を話せばいいのか分からず、無言になる。

『…なに?なんかあったの?』

「いや…うーん…」

『何よ!はっきりしないなぁ!言え!言うんだ!』

先ほどまで私の前を歩いていたみぃのゲームキャラが私の元まで駆け寄ると何度もジャンプし、声とキャラの行動がマッチし始め、私をどんどん追い込んでくる。
本当にみぃに詰め寄られているような感じだ。

「ちょっと待って。それなら場所変えよう。コウがくると気まずいから」

『よし、そうしよう』

私たちはゲームからログアウトすると、グループから抜けて2人で話すことにした。

最初は何だかワクワクしたようなみぃだったか、私が話をしていくにつれて静かに聞き始めた。

『なるほどね、だいたい読めた』

話終わったみぃはフムっと小さく言った後に微かに笑いながら言う。

『コウも頑張ったんだなぁ…まぁ、コウが我慢できず手を出したのは悪いけど、今はきっとリノにこれ以上警戒されないよう予防線張ってるって感じなんじゃないの?』

「予防線?」

『だって、そんなことがあってリノ自身、もうコウに前みたいな感じで接することできないでしょ』

それはそうだ。
正直、これで煌大が変わらず家に来てゲームをしたり、泊まるなんて言っても私には許すことはできない。

『これ以上責めればリノの警戒心を強めるどころか、怖がらせるかもしれないし、だからと言ってなかったことにもできない。だからコウなりに色々考えてそれなりの距離を取ってるってことだよね』

んー…。

返事に困った私は頭を悩ませる。

『とりあえず、リノの気持ちはどうなの?』

「気持ちって?」

『コウとどうなりたいとかあるの?それとももうコウとは関わりたくないとか思ってる?』

みぃにそう言われて、私にある気持ちを考えてみる。
コウとどうなりたいとかは分からないけど、関わりたくないとは思っていない。
できるなら前みたいに笑い合いたいし、楽しく一緒にゲームをしたい。

『黙ってるってことは想像つかないって感じか。じゃあさ、コウにキスされた時とかどんな気持ちだった?怖かった?元カレみたいに憎悪とか感じたの?』

「…怖くはなかった」
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