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◆◇第一幕◇◆ 時空の監視者の愛情は伝わらない
♪半分の気持ち①
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「───………アカリ」
気を失っていたのは一瞬で、バルドゥールに名を呼ばれ、私は閉じていた眼をゆっくりと開けた。
そうすれば、すぐに金色の瞳に自分の姿が映る。瞳を潤ませ、与えられすぎた快感に頬を紅潮させている、気だるげな女の顔。
これが、私?と、目を瞠った途端、バルドゥールから、深い口付けをされ、視界は闇に閉ざされた。
そして、まだ硬さも質量もそのままでいる彼の熱いものが、静かに引き抜かれた。
「………あっ」
未だに熱を帯びている私の中は敏感で、抜かれる瞬間にすら、甘い吐息をあげてしまう。
けれど、次いで、どろりと熱いものが中から溢れてくれば、急に我に返り、慌てて膝を閉じた。でも、そのせいで太ももまで濡らしてしまう。
そしていつもより、溢れるものが多いのは、一方的に彼の吐き出したものだけではなく、自分の潤いもあるせいで………。
「◎$♪×△¥●&?#$!!」
自覚した途端、私は声にならない悲鳴を上げながら、両手で顔を覆って身悶えするしかなかった。
そんな中、バルドゥールは起き上がったと思ったら、濡れている私の秘所と太ももをあっという間に拭い、掛布をふわりと被せた。
「アカリ、身体は辛くないか?」
当然のように、私の恥ずかしいところを拭った彼は、これまた当然のように、私に優しい言葉をかけた。
これが本来のバルドゥールの姿なのだろうか。
そんな思いがよぎったけれど、恥ずかしさのあまり彼と目を合わせることすらできない私は、顔を覆ったまま小さく頷くのが精一杯だった。
「そうか………良かった。ゆっくり休むんだ」
心から安堵した声が聞こえたと思ったら、顔を覆っていた手をそっと剥がされる。
そして、バルドゥールは私の額に口付けを落とす。ただその唇はすぐに離れず、そのまま瞼に触れる。自然に私も目を閉じる。
「おやすみ、アカリ。ゆっくり休め」
「………はい。おやすみなさい、バルドゥールさん」
消え入りそうな声でそう返せばバルドゥールはそっと私の頬を撫でて、身体を離した。次いで少し離れた場所で衣擦れの音がする。
一瞬、違和感を感じたのは、彼が服を身に付けている音を、この部屋で初めて耳にするから。
それにしても、衣擦れというよりは、体を洗っているかのような素早い音だ。軍人というのは、動きもさることながら着替えも早いものなのか。
───と、目を瞑りながら、そんなことを考えて私は、私はいつの間にか眠りに落ちていた。
しばらくしてキィと扉が開く音がして、すぐにパタンと閉じられる。
けれどその音はいつもより小さく感じられた 。
多分、バルドゥールが部屋を出た音なのだろう。確認しようかと思ったけれど、眠気が全身を取り巻いていて、眼を開けるのが辛くてそのままでいる。
そして、夢と現の狭間で揺蕩いながら、ルークはリンさんに口付けをするだけで、ふらついていたけれど、彼の体調は大丈夫なのだろうかという不安がよぎる。
今まで、バルドゥールに抱かれることは苦痛でしかなかったし、そういう行為が私に力を分け与えていることなど知らなかった。
だから、相手の体調のことなど気にもしてなかった。けれど、知ってしまった今は、非常に気にしてしまう。
ただ、そういうことを自分から聞いても良いのだろうか。
ルークは、自分の失態を恥じて苦笑いを浮かべていたから、時空の監視者にとって、触れ合った後の気遣いは失礼にあたることなのかもしれない。
と、つらつらと考えていたけれど、なぜか足音がこちらに近づいて来ているのに気づき、思考がピタリと止まった。そして、眠気もそこそこぶっ飛んだ私は、ぱちりと目を開けた。
そうすれば、薄暗い部屋の、私の枕元に立つバルドゥールが居て、彼は目を開けた私に申し訳なさそうに口を開いた。
「ああ、すまない。起してしまったか」
身体に力が入らない私は、無言のまま小さく首を横に振る。ただ、起こす起こされるより、もっと気になることがる。
「…………………あの、これ────」
「いいから、寝ていろ」
バルドゥールは供をあやすような口調で私の言葉を遮った。
その言葉自体は不快ではない。ただ、言われたとおりに、すんなり寝ることができない事情が、こちらにはある。
なにしろバルドゥールはお湯を張ったタライと、おそらく布とか何やらが入ったかごを手にしている訳で………。
「あの………何をするんですか?」
「お前の身体を拭くだけだ」
「はい!?」
予想はしていたけれど、あっさり口にしたバルドゥールの言葉に、私は素っ頓狂な声を出してしまった。
けれど反対に、バルドゥールは今までにないくらい驚いた表情をした。そして一旦荷物を一式を床に置くと、真顔で私に問いかけた。
「お前の世界では、自分が抱いた女の身体を拭いたりしないのか?」
自分の抱いた女………何の抵抗もなくバルドゥールの口からさらりと紡がれた言葉が、柔らかくて慈しみが込められていて、私は頬に熱をもってしまう。
「………………し、しません……多分ですが」
未経験のままこの世界に来てしまった私は、実際、そういう行為をした後の男女がどうするかなんて、経験もなければ知識もない。
そんな理由で、しどろもどろになってしまった私の返答に、バルドゥールは腑に落ちない顔をした。
「アカリの世界の常識や考え方を否定するつもりはない。が、自分が抱いた女性をそのままにして、部屋を去ることは、どう考えても納得できることではないし、こうすることが間違いだとも思わない」
きっぱりと言い切られて、更に顔が熱くなる。そんな私を捨て置いて、バルドゥールは、ベッドの端に腰掛けると、私を覗き込みながら、こう言った。
「だからもし、この行為がアカリにとって間違っていることならば、それは説明をしてほしい」
………説明もなにも、恥ずかしいだけだ。
バルドゥールがきっぱりと自分の意志を説明したのに対し、私は感情論でしか反論できない。しかも、理由は恥ずかしという何とも情けない理由だけ。正直いって分が悪い。
けれど、何としても体を拭かれるのを避けたい私は、それらしい言い訳を捻り出した。
「自分のことは自分でしなさい、と、言われてきました。ですので、体は自分で拭けることなので、バルドゥールさんに拭いてもらわなくても………そ、その………大丈夫です」
これは本来、大人が子供に自立を促す言葉で、既に自立している私には当てはまるものではない。
ないけれど、ここは都合よく使わせてもらう。なぜならそれしか言い訳がないからだ。そうすれば、バルドゥールは顎に手を当て考え込んでしまった。
そしてしばらくの間の後、しっかりとした口調でバルドゥールは口を開いた。
「なるほど。確かに、その言葉は一理ある。だが、」
【、】で終わらせたバルドゥールの続きに、嫌な予感がする。伺うように、彼を覗き込んだ瞬間、彼は再び口を開いた。
「俺はアカリが自分で身体を拭けない人間だと思っているから、こう言っているわけではない。ただ単に自分自身がそうしたいだけだ」
そこでバルドゥールは、少し寂しそうに声をトーンを落として私に問うた。
「アカリは俺に身体を拭かれたくないのか?」
「…………っ!?」
どストレート且つ、一かゼロかの質問に、なんと答えて良いかわからず、口をぱくぱくと動かすことしかできない。
ぶっちゃけた話、嫌とか良いとかという問題ではない。
未だに私の身体の奥には、彼の吐き出した熱いものが残っている。そんな状態で、身体を拭かれるのは、私の気持ちが戸惑ってしまうのだ。
けれど、それを素直に口にするのは憚られる。ただ、もし仮にこれが理由なら、私も納得せざるを得ない。
「………あの……こういったことまでも、時空の監視者のお仕事なんですか?」
おずおずと問いかけた私に、バルドゥールはちょっと困った顔をして、質問を質問で返すのは悪いが、と前置きして口を開いた。
「そうだな……仕事ということなら、アカリは納得するのか?」
「そ、そうですね………。お仕事の邪魔はしたくないです」
そう答えれば、バルドゥールは小さく声を上げて笑った。でも、少し寂しそうだった。
「なら、半分はそうだ」
残りの半分は、何なのだろう。それと、そう言いながら、優しく頬を撫でるのはやめてほしい。
あんなに情熱的に抱かれた後なのだ。
少し寂しそうな笑みと、その手つきは悪戯に私の心をかき乱す。そのことを少しは理解して欲しい。でも、これもまた素直に言葉にできるわけもなく───。
「アカリ、これも仕事だから、大人しく身体を拭かれろ」
「………はい」
と、押し切られるように、バルドゥールは会話を終わらせてしまった。
そして彼は、混乱する私を残して布をお湯に浸して私の身体を拭き始めてしまった。
気を失っていたのは一瞬で、バルドゥールに名を呼ばれ、私は閉じていた眼をゆっくりと開けた。
そうすれば、すぐに金色の瞳に自分の姿が映る。瞳を潤ませ、与えられすぎた快感に頬を紅潮させている、気だるげな女の顔。
これが、私?と、目を瞠った途端、バルドゥールから、深い口付けをされ、視界は闇に閉ざされた。
そして、まだ硬さも質量もそのままでいる彼の熱いものが、静かに引き抜かれた。
「………あっ」
未だに熱を帯びている私の中は敏感で、抜かれる瞬間にすら、甘い吐息をあげてしまう。
けれど、次いで、どろりと熱いものが中から溢れてくれば、急に我に返り、慌てて膝を閉じた。でも、そのせいで太ももまで濡らしてしまう。
そしていつもより、溢れるものが多いのは、一方的に彼の吐き出したものだけではなく、自分の潤いもあるせいで………。
「◎$♪×△¥●&?#$!!」
自覚した途端、私は声にならない悲鳴を上げながら、両手で顔を覆って身悶えするしかなかった。
そんな中、バルドゥールは起き上がったと思ったら、濡れている私の秘所と太ももをあっという間に拭い、掛布をふわりと被せた。
「アカリ、身体は辛くないか?」
当然のように、私の恥ずかしいところを拭った彼は、これまた当然のように、私に優しい言葉をかけた。
これが本来のバルドゥールの姿なのだろうか。
そんな思いがよぎったけれど、恥ずかしさのあまり彼と目を合わせることすらできない私は、顔を覆ったまま小さく頷くのが精一杯だった。
「そうか………良かった。ゆっくり休むんだ」
心から安堵した声が聞こえたと思ったら、顔を覆っていた手をそっと剥がされる。
そして、バルドゥールは私の額に口付けを落とす。ただその唇はすぐに離れず、そのまま瞼に触れる。自然に私も目を閉じる。
「おやすみ、アカリ。ゆっくり休め」
「………はい。おやすみなさい、バルドゥールさん」
消え入りそうな声でそう返せばバルドゥールはそっと私の頬を撫でて、身体を離した。次いで少し離れた場所で衣擦れの音がする。
一瞬、違和感を感じたのは、彼が服を身に付けている音を、この部屋で初めて耳にするから。
それにしても、衣擦れというよりは、体を洗っているかのような素早い音だ。軍人というのは、動きもさることながら着替えも早いものなのか。
───と、目を瞑りながら、そんなことを考えて私は、私はいつの間にか眠りに落ちていた。
しばらくしてキィと扉が開く音がして、すぐにパタンと閉じられる。
けれどその音はいつもより小さく感じられた 。
多分、バルドゥールが部屋を出た音なのだろう。確認しようかと思ったけれど、眠気が全身を取り巻いていて、眼を開けるのが辛くてそのままでいる。
そして、夢と現の狭間で揺蕩いながら、ルークはリンさんに口付けをするだけで、ふらついていたけれど、彼の体調は大丈夫なのだろうかという不安がよぎる。
今まで、バルドゥールに抱かれることは苦痛でしかなかったし、そういう行為が私に力を分け与えていることなど知らなかった。
だから、相手の体調のことなど気にもしてなかった。けれど、知ってしまった今は、非常に気にしてしまう。
ただ、そういうことを自分から聞いても良いのだろうか。
ルークは、自分の失態を恥じて苦笑いを浮かべていたから、時空の監視者にとって、触れ合った後の気遣いは失礼にあたることなのかもしれない。
と、つらつらと考えていたけれど、なぜか足音がこちらに近づいて来ているのに気づき、思考がピタリと止まった。そして、眠気もそこそこぶっ飛んだ私は、ぱちりと目を開けた。
そうすれば、薄暗い部屋の、私の枕元に立つバルドゥールが居て、彼は目を開けた私に申し訳なさそうに口を開いた。
「ああ、すまない。起してしまったか」
身体に力が入らない私は、無言のまま小さく首を横に振る。ただ、起こす起こされるより、もっと気になることがる。
「…………………あの、これ────」
「いいから、寝ていろ」
バルドゥールは供をあやすような口調で私の言葉を遮った。
その言葉自体は不快ではない。ただ、言われたとおりに、すんなり寝ることができない事情が、こちらにはある。
なにしろバルドゥールはお湯を張ったタライと、おそらく布とか何やらが入ったかごを手にしている訳で………。
「あの………何をするんですか?」
「お前の身体を拭くだけだ」
「はい!?」
予想はしていたけれど、あっさり口にしたバルドゥールの言葉に、私は素っ頓狂な声を出してしまった。
けれど反対に、バルドゥールは今までにないくらい驚いた表情をした。そして一旦荷物を一式を床に置くと、真顔で私に問いかけた。
「お前の世界では、自分が抱いた女の身体を拭いたりしないのか?」
自分の抱いた女………何の抵抗もなくバルドゥールの口からさらりと紡がれた言葉が、柔らかくて慈しみが込められていて、私は頬に熱をもってしまう。
「………………し、しません……多分ですが」
未経験のままこの世界に来てしまった私は、実際、そういう行為をした後の男女がどうするかなんて、経験もなければ知識もない。
そんな理由で、しどろもどろになってしまった私の返答に、バルドゥールは腑に落ちない顔をした。
「アカリの世界の常識や考え方を否定するつもりはない。が、自分が抱いた女性をそのままにして、部屋を去ることは、どう考えても納得できることではないし、こうすることが間違いだとも思わない」
きっぱりと言い切られて、更に顔が熱くなる。そんな私を捨て置いて、バルドゥールは、ベッドの端に腰掛けると、私を覗き込みながら、こう言った。
「だからもし、この行為がアカリにとって間違っていることならば、それは説明をしてほしい」
………説明もなにも、恥ずかしいだけだ。
バルドゥールがきっぱりと自分の意志を説明したのに対し、私は感情論でしか反論できない。しかも、理由は恥ずかしという何とも情けない理由だけ。正直いって分が悪い。
けれど、何としても体を拭かれるのを避けたい私は、それらしい言い訳を捻り出した。
「自分のことは自分でしなさい、と、言われてきました。ですので、体は自分で拭けることなので、バルドゥールさんに拭いてもらわなくても………そ、その………大丈夫です」
これは本来、大人が子供に自立を促す言葉で、既に自立している私には当てはまるものではない。
ないけれど、ここは都合よく使わせてもらう。なぜならそれしか言い訳がないからだ。そうすれば、バルドゥールは顎に手を当て考え込んでしまった。
そしてしばらくの間の後、しっかりとした口調でバルドゥールは口を開いた。
「なるほど。確かに、その言葉は一理ある。だが、」
【、】で終わらせたバルドゥールの続きに、嫌な予感がする。伺うように、彼を覗き込んだ瞬間、彼は再び口を開いた。
「俺はアカリが自分で身体を拭けない人間だと思っているから、こう言っているわけではない。ただ単に自分自身がそうしたいだけだ」
そこでバルドゥールは、少し寂しそうに声をトーンを落として私に問うた。
「アカリは俺に身体を拭かれたくないのか?」
「…………っ!?」
どストレート且つ、一かゼロかの質問に、なんと答えて良いかわからず、口をぱくぱくと動かすことしかできない。
ぶっちゃけた話、嫌とか良いとかという問題ではない。
未だに私の身体の奥には、彼の吐き出した熱いものが残っている。そんな状態で、身体を拭かれるのは、私の気持ちが戸惑ってしまうのだ。
けれど、それを素直に口にするのは憚られる。ただ、もし仮にこれが理由なら、私も納得せざるを得ない。
「………あの……こういったことまでも、時空の監視者のお仕事なんですか?」
おずおずと問いかけた私に、バルドゥールはちょっと困った顔をして、質問を質問で返すのは悪いが、と前置きして口を開いた。
「そうだな……仕事ということなら、アカリは納得するのか?」
「そ、そうですね………。お仕事の邪魔はしたくないです」
そう答えれば、バルドゥールは小さく声を上げて笑った。でも、少し寂しそうだった。
「なら、半分はそうだ」
残りの半分は、何なのだろう。それと、そう言いながら、優しく頬を撫でるのはやめてほしい。
あんなに情熱的に抱かれた後なのだ。
少し寂しそうな笑みと、その手つきは悪戯に私の心をかき乱す。そのことを少しは理解して欲しい。でも、これもまた素直に言葉にできるわけもなく───。
「アカリ、これも仕事だから、大人しく身体を拭かれろ」
「………はい」
と、押し切られるように、バルドゥールは会話を終わらせてしまった。
そして彼は、混乱する私を残して布をお湯に浸して私の身体を拭き始めてしまった。
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