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◆◇第一幕◇◆ 時空の監視者の愛情は伝わらない
裏口から帰るのには理由がある②
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バルドゥールの年齢に疑いを持ってしまった感情は胸の内だけに留まらず、思いっきり顔に出てしまっていたようだった。ルークと目が合った途端、彼は堪えきれずぷっと吹き出した。
「バルドゥールは老け顔だから、絶対三十路に見えるよね?ってか、それを口に出すのは、さすがにマズいよ。地味に気にしてるからね」
「いっ.........言いませんよ。そんなこと」
というか、私とバルドゥールはそんな世間話をする間柄ではない。
ルークはリンさんとこの部屋でおしゃべりをしたり、歌を聞かせてもらったりと、二人で過ごす時間が多かったのかもしれない。
けれど私は、バルドゥールがいつ職場に行って、いつ帰ってきたのかもわからないくらい接点が無い生活を送っている。変な言い方だけれど、家庭内別居状態なのだ。
そんな意味も込めて、髪の毛がバサバサと音がするぐらい大きく首を横に振れば、ルークはくすりと笑ってテーブルに頬杖をついた。そして、ちょっと眉を上げて私に向かいの席に座るよう促してくる。断る理由もないので素直に着席すれば、なぜだかわからないけれどルークの昔話が始まってしまった。
「昔って言っても、5年くらい前のことなんだけどさぁ」
「はい」
「俺、時空の監視者になったんだ」
「それは…………えっと.........」
おめでとうございますと言っていいことなのだろうか。言葉尻を濁した私だったけれど、ルークはまったく気にする素振りもなく遠い目をして言葉を続ける。
「生まれてからずっと、時空の監視者になることは決まっていたから、そんなに緊張することはないと思っていたんだ。でもねぇー」
「はい」
「出勤初日にさ、上官に挨拶に行ったんだけど、もうその人さぁ厳つくて無愛想でね、しかもその頃その上官は今みたいに短髪じゃなくて、長い前髪を後ろに撫で付けていたんだ。もう貫禄有りすぎで、おっかなくって、何か一つでも失敗したら殺されるってマジで思ったんだ」
「…………………」
その上官とやらは多分私の知っている人だ。間違いなく。これは迂闊にルークの言葉に頷いたりしないほうが良いだろう。
あと、ルークはご丁寧に自分の長い前髪を後ろに撫で付けて、その頃の上官の髪形を表現してくれているけれど、私にはそれが場末のホストか、どこぞの組の構成員さんにしか見えない。
という私の感想はどうでも良いことなので、口に出すことはしないし、ルークも感想は求めていないみたいで、すぐに昔話を再開した。
「で、カチコチになりながらも、一応、形式通り挨拶をしたら、その上官さぁ、なんて言ったと思う?」
頬杖を付いたまま、くるりと視線を向けて来るルークに、私は首を傾げることで返事とする。
「真顔でね【そんなに気負わなくて良い。俺とお前の年齢は2つしか変わらない】って言ったんだ」
「............はぁ」
「はぁって............アカリ全然驚かないんだ。僕なんか心底驚いて【マジかよ!?】って思わずタメ口で返しちゃったよ」
そっちの方がはるかに驚くところだ。思わず瞬きを繰り返せば、ルークは『だよねー』と嬉しそうに笑った。そして、頬杖を付いていた腕を伸ばして私に向かって人差し指をぴんと立てた。
「で、出勤初日に上官にタメ口叩いた僕は、いきなり問題児というレッテルを貼られ、今もずっとその上官と組まされているんだ。酷い話だろ?ま、この話は続きがあって、僕がタメ口を叩いた数日後、その上官さぁ短髪にしてきたんだ。誰もそこには触れなかったけど、間違いなく僕のリアクションのせいなんだよね。だからアカリ、バルドゥールに老け顔ってことだけは言っちゃダメだからね」
昔話かと思ったけれど、これはどうやら私への忠告だったらしい。随分と余計な話が混ざっていたような気がする。でも、ルークの表情は物凄く真剣で、私が頷くのを待っている。
「.................................わかりました」
長い間の後、ようやく承諾した私に、ルークは安堵の笑みを浮かべ、もう一度『本当に言っちゃだめだよ』とクギを指した。その顔は真顔だったけれど、わずかに自分の黒歴史を晒してしまったような、恥ずかしさが滲んでいた。
「大変だったんですね」
「うん、もう本当に」
いや、私はルークに向けて言ったわけではない。この労りの言葉はここにはいない、朱色の髪の上官に向けて言ったもの。
カチコチに固まった新人の緊張を解そうと気を利かせた挙句、ため口でしかもあんなことを言われた上官の心情を考えるととても不憫な気持ちになる。
それにルークは上官と組まされたとぼやいてるけれど、これはきっと正しい判断だと思う。というか、その人と組んでいるからルークは今でも五体満足で時空の監視者としていられるのだ。
そして、朱色の髪の上官…………もとい、バルドゥールのお仕事がとても激務なのも頷けてしまう。
というここには居ないあの人のことをつらつらと考えながら、そろそろ折り鶴作りを再開しようとしたその時、不意にリンさんの歌が止まった。
「あ、ちょっとごめん。席外すね」
リンさんは私とルークが喧嘩しようが、折り鶴を作ろうが、昔話を語ろうがお構いなしに、歌ったり眠ったりする。でも、ルークは違う。常にリンさんに意識を向けている。そして、今、席を立ったのは、リンさんに自分の力を分け与えるため。
それを察した私は意識を折り紙に向け、二人を視界に入れないようにする。それは、以前のように不快に思うからではなく、エチケット的な問題で。私がバルドゥールから力を分け与えられている姿を見られたくないように、やっぱりリンさんだって見て欲しくないだろう。
だから必要以上に集中して折り鶴を作成していたけれど────。
「アカリ、悪いけど今すぐ帰ってくれっ」
という突然、尖った声が耳朶に突き刺さった。驚いて声を方を振り返れば、なぜか切羽詰まった様子でリンさんを胸の中に掻き抱くルークが居た。
「あ、あの………ルークさん、私、何か失礼なことをしてしまいましたか?」
「違う違うっ。そんなんじゃないっ」
おずおずと問いかければ、ルークは私の言葉を否定してくれる。でもその表情は今まで見たことがない程険しいものだった。そして顔色は、リンさんに力を分け与えた直後のせいか青白かった。
「嫌な奴が来たんだ」
「は?」
随分と抽象的な説明で、状況がさっぱり理解できず、首を傾げたまま、どうして良いのかわからずその場から動くことができない。
そんな私にルークは整った顔を歪めてこう吐き捨てた。
「アイツに君を会わす訳にはいかないんだ」
そう言ってルークはチラリと窓に視線を移す。つられるように私も視線を向ければ、そこにはいつも通り丁寧に整えられた花壇がある。けれど、もっと奥には見慣れない人影があった。
遠目からでははっきりと見えないけれど、細身の壮年の男性。寒色の長いフロックコートのようなものを着ている。
髪は黒っぽく見えて、元の世界で良く目にしていた色なので親近感を覚えるけれど、長い髪を一纏めにしているところは違和感を覚えてしまう。
でも、どんな表情をしているのかまでは、ここからではわからない。
「────アイツだよ。失敗例って言ったの、あのクズ野郎さ」
目を細めて窓を見つめる私に、ぞっとする程、低く憎悪が込められた声音が耳朶に響く。たったこれだけの言葉で、ルークがどれだけ窓から見えるその男性に対して怒りを覚えているのかが伝わってくる。
それはどれくらいかというと、私に向けられたものではないというのは、頭ではわかるけれど、無意識に身体が強張ってしまう程に。
「ごめん、僕は今はちょっと動けない。すぐに侍女が来るから、一緒に裏口から出て。馬車も回してあるはずだから。あと、当分、ここには来ないでくれ」
「ちょ、ちょっと.........」
「落ち着いたらまた連絡するから。あっ、この折り紙全部持って帰って良いよ。っていうか、持って帰って───」
そう言い終える前にメイド服を着た女性が一人、部屋に飛び込んできた。その形相はルーク同様に険しいもの。
「ルーク様、失礼します。火急の用件が────」
「あいつが来たことだよね?窓から見えたから、もうわかってる。それよりアカリを裏口まで送ってあげて」
「かしこまりました。アカリ様、ご案内いたします。さっこちらに」
侍女の方に振り返って曖昧に頷けば、背後から全部折れたら連絡してと、ルークはのちゃっかりとしたお願い事が聞こえてくる。もちろん私は考える間もなく、即座にルークに向かって大きく頷いた。
そして緊迫した空気の中、何一つ状況はわからないけれど、私がもたもたするのは非常に良くないということだけは理解する。
なので、テーブルに山積みにしてある折り紙を取れる分だけ抱えると、走る手前の競歩のスピードで侍女に先導され廊下を抜ける。そして、裏口をから屋敷を出た私は、馬車に飛び乗ったのだ。
馬車が無事にルークの屋敷の門を抜けたのを窓の景色で確認すると、私は胸に抱いていた折り紙の束を膝に載せ、小さく息を吐いた。
「.........リンさん、大丈夫かなぁ」
独り言を呟きながら思い出すのは、リンさんを抱きしめるルークの姿だった。その姿は、まるで小さな子供が大切にしている宝物を奪われないように必死になっているそれだった。
でもルークは以前、時空の監視者はそこそこ地位が高いと言っていたのも私は覚えている。つまり、さっきの男は相当な身分の人間であり、リンさん.........いや、私も含む異世界の人間に興味を示しているということ。
そして、ルークの態度から察するに、きっと良くない方面に興味を示しているのだろう。と、そこまでは推理できる。でも、言い換えればここまでが私の推理の限界だった。
あの男の目的は何なのだろう。私達をどうしたいのだろう。そんな疑問が湧いて出てくるけれど、それ以上に漠然とした恐怖が全身を取り巻いていく。
「大丈夫............きっと、大丈夫.........バルドゥールさんがいるのだから」
声に出して、あの人の名を紡げば少しだけ身体の強張りが解ける。そして、本当に大丈夫なような気がしてくるのは、私がバルドゥールを信頼している何よりの証拠。
でも残忍ながら私は、そのクズ野郎と対面することになる。それは、もう少し先のこと────。
「バルドゥールは老け顔だから、絶対三十路に見えるよね?ってか、それを口に出すのは、さすがにマズいよ。地味に気にしてるからね」
「いっ.........言いませんよ。そんなこと」
というか、私とバルドゥールはそんな世間話をする間柄ではない。
ルークはリンさんとこの部屋でおしゃべりをしたり、歌を聞かせてもらったりと、二人で過ごす時間が多かったのかもしれない。
けれど私は、バルドゥールがいつ職場に行って、いつ帰ってきたのかもわからないくらい接点が無い生活を送っている。変な言い方だけれど、家庭内別居状態なのだ。
そんな意味も込めて、髪の毛がバサバサと音がするぐらい大きく首を横に振れば、ルークはくすりと笑ってテーブルに頬杖をついた。そして、ちょっと眉を上げて私に向かいの席に座るよう促してくる。断る理由もないので素直に着席すれば、なぜだかわからないけれどルークの昔話が始まってしまった。
「昔って言っても、5年くらい前のことなんだけどさぁ」
「はい」
「俺、時空の監視者になったんだ」
「それは…………えっと.........」
おめでとうございますと言っていいことなのだろうか。言葉尻を濁した私だったけれど、ルークはまったく気にする素振りもなく遠い目をして言葉を続ける。
「生まれてからずっと、時空の監視者になることは決まっていたから、そんなに緊張することはないと思っていたんだ。でもねぇー」
「はい」
「出勤初日にさ、上官に挨拶に行ったんだけど、もうその人さぁ厳つくて無愛想でね、しかもその頃その上官は今みたいに短髪じゃなくて、長い前髪を後ろに撫で付けていたんだ。もう貫禄有りすぎで、おっかなくって、何か一つでも失敗したら殺されるってマジで思ったんだ」
「…………………」
その上官とやらは多分私の知っている人だ。間違いなく。これは迂闊にルークの言葉に頷いたりしないほうが良いだろう。
あと、ルークはご丁寧に自分の長い前髪を後ろに撫で付けて、その頃の上官の髪形を表現してくれているけれど、私にはそれが場末のホストか、どこぞの組の構成員さんにしか見えない。
という私の感想はどうでも良いことなので、口に出すことはしないし、ルークも感想は求めていないみたいで、すぐに昔話を再開した。
「で、カチコチになりながらも、一応、形式通り挨拶をしたら、その上官さぁ、なんて言ったと思う?」
頬杖を付いたまま、くるりと視線を向けて来るルークに、私は首を傾げることで返事とする。
「真顔でね【そんなに気負わなくて良い。俺とお前の年齢は2つしか変わらない】って言ったんだ」
「............はぁ」
「はぁって............アカリ全然驚かないんだ。僕なんか心底驚いて【マジかよ!?】って思わずタメ口で返しちゃったよ」
そっちの方がはるかに驚くところだ。思わず瞬きを繰り返せば、ルークは『だよねー』と嬉しそうに笑った。そして、頬杖を付いていた腕を伸ばして私に向かって人差し指をぴんと立てた。
「で、出勤初日に上官にタメ口叩いた僕は、いきなり問題児というレッテルを貼られ、今もずっとその上官と組まされているんだ。酷い話だろ?ま、この話は続きがあって、僕がタメ口を叩いた数日後、その上官さぁ短髪にしてきたんだ。誰もそこには触れなかったけど、間違いなく僕のリアクションのせいなんだよね。だからアカリ、バルドゥールに老け顔ってことだけは言っちゃダメだからね」
昔話かと思ったけれど、これはどうやら私への忠告だったらしい。随分と余計な話が混ざっていたような気がする。でも、ルークの表情は物凄く真剣で、私が頷くのを待っている。
「.................................わかりました」
長い間の後、ようやく承諾した私に、ルークは安堵の笑みを浮かべ、もう一度『本当に言っちゃだめだよ』とクギを指した。その顔は真顔だったけれど、わずかに自分の黒歴史を晒してしまったような、恥ずかしさが滲んでいた。
「大変だったんですね」
「うん、もう本当に」
いや、私はルークに向けて言ったわけではない。この労りの言葉はここにはいない、朱色の髪の上官に向けて言ったもの。
カチコチに固まった新人の緊張を解そうと気を利かせた挙句、ため口でしかもあんなことを言われた上官の心情を考えるととても不憫な気持ちになる。
それにルークは上官と組まされたとぼやいてるけれど、これはきっと正しい判断だと思う。というか、その人と組んでいるからルークは今でも五体満足で時空の監視者としていられるのだ。
そして、朱色の髪の上官…………もとい、バルドゥールのお仕事がとても激務なのも頷けてしまう。
というここには居ないあの人のことをつらつらと考えながら、そろそろ折り鶴作りを再開しようとしたその時、不意にリンさんの歌が止まった。
「あ、ちょっとごめん。席外すね」
リンさんは私とルークが喧嘩しようが、折り鶴を作ろうが、昔話を語ろうがお構いなしに、歌ったり眠ったりする。でも、ルークは違う。常にリンさんに意識を向けている。そして、今、席を立ったのは、リンさんに自分の力を分け与えるため。
それを察した私は意識を折り紙に向け、二人を視界に入れないようにする。それは、以前のように不快に思うからではなく、エチケット的な問題で。私がバルドゥールから力を分け与えられている姿を見られたくないように、やっぱりリンさんだって見て欲しくないだろう。
だから必要以上に集中して折り鶴を作成していたけれど────。
「アカリ、悪いけど今すぐ帰ってくれっ」
という突然、尖った声が耳朶に突き刺さった。驚いて声を方を振り返れば、なぜか切羽詰まった様子でリンさんを胸の中に掻き抱くルークが居た。
「あ、あの………ルークさん、私、何か失礼なことをしてしまいましたか?」
「違う違うっ。そんなんじゃないっ」
おずおずと問いかければ、ルークは私の言葉を否定してくれる。でもその表情は今まで見たことがない程険しいものだった。そして顔色は、リンさんに力を分け与えた直後のせいか青白かった。
「嫌な奴が来たんだ」
「は?」
随分と抽象的な説明で、状況がさっぱり理解できず、首を傾げたまま、どうして良いのかわからずその場から動くことができない。
そんな私にルークは整った顔を歪めてこう吐き捨てた。
「アイツに君を会わす訳にはいかないんだ」
そう言ってルークはチラリと窓に視線を移す。つられるように私も視線を向ければ、そこにはいつも通り丁寧に整えられた花壇がある。けれど、もっと奥には見慣れない人影があった。
遠目からでははっきりと見えないけれど、細身の壮年の男性。寒色の長いフロックコートのようなものを着ている。
髪は黒っぽく見えて、元の世界で良く目にしていた色なので親近感を覚えるけれど、長い髪を一纏めにしているところは違和感を覚えてしまう。
でも、どんな表情をしているのかまでは、ここからではわからない。
「────アイツだよ。失敗例って言ったの、あのクズ野郎さ」
目を細めて窓を見つめる私に、ぞっとする程、低く憎悪が込められた声音が耳朶に響く。たったこれだけの言葉で、ルークがどれだけ窓から見えるその男性に対して怒りを覚えているのかが伝わってくる。
それはどれくらいかというと、私に向けられたものではないというのは、頭ではわかるけれど、無意識に身体が強張ってしまう程に。
「ごめん、僕は今はちょっと動けない。すぐに侍女が来るから、一緒に裏口から出て。馬車も回してあるはずだから。あと、当分、ここには来ないでくれ」
「ちょ、ちょっと.........」
「落ち着いたらまた連絡するから。あっ、この折り紙全部持って帰って良いよ。っていうか、持って帰って───」
そう言い終える前にメイド服を着た女性が一人、部屋に飛び込んできた。その形相はルーク同様に険しいもの。
「ルーク様、失礼します。火急の用件が────」
「あいつが来たことだよね?窓から見えたから、もうわかってる。それよりアカリを裏口まで送ってあげて」
「かしこまりました。アカリ様、ご案内いたします。さっこちらに」
侍女の方に振り返って曖昧に頷けば、背後から全部折れたら連絡してと、ルークはのちゃっかりとしたお願い事が聞こえてくる。もちろん私は考える間もなく、即座にルークに向かって大きく頷いた。
そして緊迫した空気の中、何一つ状況はわからないけれど、私がもたもたするのは非常に良くないということだけは理解する。
なので、テーブルに山積みにしてある折り紙を取れる分だけ抱えると、走る手前の競歩のスピードで侍女に先導され廊下を抜ける。そして、裏口をから屋敷を出た私は、馬車に飛び乗ったのだ。
馬車が無事にルークの屋敷の門を抜けたのを窓の景色で確認すると、私は胸に抱いていた折り紙の束を膝に載せ、小さく息を吐いた。
「.........リンさん、大丈夫かなぁ」
独り言を呟きながら思い出すのは、リンさんを抱きしめるルークの姿だった。その姿は、まるで小さな子供が大切にしている宝物を奪われないように必死になっているそれだった。
でもルークは以前、時空の監視者はそこそこ地位が高いと言っていたのも私は覚えている。つまり、さっきの男は相当な身分の人間であり、リンさん.........いや、私も含む異世界の人間に興味を示しているということ。
そして、ルークの態度から察するに、きっと良くない方面に興味を示しているのだろう。と、そこまでは推理できる。でも、言い換えればここまでが私の推理の限界だった。
あの男の目的は何なのだろう。私達をどうしたいのだろう。そんな疑問が湧いて出てくるけれど、それ以上に漠然とした恐怖が全身を取り巻いていく。
「大丈夫............きっと、大丈夫.........バルドゥールさんがいるのだから」
声に出して、あの人の名を紡げば少しだけ身体の強張りが解ける。そして、本当に大丈夫なような気がしてくるのは、私がバルドゥールを信頼している何よりの証拠。
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