司令官さま、絶賛失恋中の私を口説くのはやめてください!

茂栖 もす

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私と司令官さまのすれ違い

拘束からの投獄②

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 腕章を付けたおじさんから手渡されたものは、とある人間からの密告書だった。

 そして、その内容はこうだった────。

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 シンシア・カミュレは、大変、淫売な女です。

 私の恋人に色目を使う、品行の悪い女であり、
 淫蕩な女でもあります。

 軍事施設で働くのも、男漁りの為でしかありません。
 こんな女今すぐ解雇するべきです。

 そして最後に、この女は、私の恋人に貢ぐために、
 窃盗団と手を組んで、金品を売りさばいている
 悪党でもあります。

 今すぐ厳しい処罰を与えて下さい。

□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

 感情丸出し。そして、筆跡乱れまくりのそれをみて、差出人が誰なのかすぐにわかった。

 あの女ジェーン、やってくれたね!こんちくしょうっ!!

 店をつまみ出された時、脅しのような言葉を吐いていたけれど、どうせ捨て台詞のようなものだと思って、すっかり忘れていた。

 でも、まさかこんな陰湿なことをしてくれるとはっ。どうしてくれようっ。

 怒りが最高潮になった私は、今すぐジェーンの元に殴り込みに行こうかと考える。けれど次の瞬間、警備兵の一人と目が合い、はっと我に返った。

 いや、その前に、これが真っ赤な嘘だということを伝えないといけない。特に後半はでっちあげも、いいところだ。

「私、悪党なんかじゃありませんっ。窃盗団とか、意味不明ですっ。それに、淫蕩な女でもなければ、淫売でも淫乱でもないですっ。私……私の身体は───純潔ですっ!!」

 恥も外聞のかなぐり捨てて、身の潔白を証明しようとすれば、ここにいる警備兵の全員が慌てふためいた。

「ちょっ、君、そんなこと大声で言わないでっ」
「女の子が自分から、そんなこと言っちゃ駄目でしょっ」
「最後のヤツ、聞かなかったことにさせてもらいますからねっ」

 次々にそんなことを言われ、どうして良いのかわからずオロオロとしてしまう。でも、警備兵の皆さんももっとオロオロとしている。

 そんな中、腕章のおじさんだけが静かに口を開いた。

「シンシア殿、落ち着いてください。君が容疑を否認していることは良くわかった。ただ、この密告書を受け取ってしまった以上、これが真っ赤な嘘だということを証明するためにも、尋問会を開き審議を確かめることになった。よって、君はそれまで逃亡防止、及び、証拠隠滅の恐れが無いよう拘束させてもらう」

 抑揚の無い声でそう説明され、私は反論ができない。

 だけれども、一つだけ不安なことがあって思わず尋ねてしまった。

「……あの……私の部屋の中、捜索するんですか?」

 拘束されるのは嫌だ。でも、私が何もしていないという証拠を今すぐ出すこともできない。だからといって、プライベートな場所を荒らされるのは絶対に嫌だ。

 所詮は仮住まいと思っていたから、宿舎の自室には私物なんて、ほとんどない。だから、見られて困るものはない。ただ、見られたら恥ずかしいものはある。

 例えば、下着とか。……それから、下着とか、ああ、あと下着とか。

 それに私のそれは、お色気ムンムンのものじゃなくて、大変、お粗末で質素なもの。だから、きっと警備兵の皆さまも、そんなもの見ても楽しめるものじゃないと思う。 

 ただ、さすがに今のこれを口にするのは、躊躇ってしまう。できれば察して欲しい。

 そんな気持ちで腕章のおじさんを見つめれば、承知しているといった感じでやっと目元を少しだけ和らげてくれた。

「君が拒めば拒むほど、疑いが深くなる。そうなった場合、そうせざるを得ない。私達も、妙齢の女性の部屋を捜索するのは気が進まない。できれば、このまま大人しく付いて来てもらいたい」

 腕章のおじさんの言い分は、ごもっともだ。言い含められた感はあるけれど。

「……わかりました」

 少し間を置いて、私は頷いた。
 
 これ以上ここで何を言っても無駄だと諦めた部分もある。でも少しだけ、どうにでもしてくれという投げやりな気持ちもあった。

 あらぬ疑いをかけられ、とても悔しい。しかも、司令官さまのデート現場を目撃して、弟からあんな話を聞かされた後だ。まさに踏んだり蹴ったり。

 ちょっとでも気を抜けば、すぐさま感情が高ぶって泣いてしまいそうになる。

 でも、ここで泣いたら負けだと自分に言い聞かせ、根性で涙を引っ込める。そして前後に警備兵に挟まれ私は、とぼとぼと歩く。
 
 ただ一つ言いたいことがある。腕章つけてるおじさん、大事な密告書は、そんなぴらぴら片手で持たないで、ちゃんと懐にしまった方が良いと思う。……言わないけど。

 ちなみに目的地は、軍事施設の地下にある牢屋だった。

 初めて見る鉄格子は、鈍く光っていて、それが得も言われぬ恐怖を感じた。
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