サングレアル ―王の血脈―

フジーニー

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第一章

第九話 ごめんより、ありがとう

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___話は戻り、タクシー車内。

ヒマレは小さく息を吐いた。

「……初対面のあなたに、こんな重い話してごめんなさい」

少し照れたように笑う。

「なんか、止まらなくなっちゃって」

アグネロはすぐに首を振った。

「謝るなって」

軽く笑う。

「俺、ごめんよりありがとう派なんだよ」

親指を立てる。

「ヒマレ、ブドウありがとうな」

「それと、話してくれてありがとう」

ヒマレは一瞬驚いた顔をして、それからふっと笑った。

「……こちらこそ」

「聞いてくれてありがとう」

「少し軽くなった」

タクシーの中の空気が、ほんの少し柔らぐ。

アグネロは背もたれに体を預ける。

「ワインの作り方は分かんねぇけどさ」

にっと笑う。

「命の恩人だし、縁だろ?」

「俺が楽にしてやるよ」

ヒマレは苦笑する。

「大きいこと言うの好きなのね」

「まあな」

「でも、ありがとう」

やがてタクシーがゆっくりと停まる。

「到着だよー。二千五百ベイル」

「レッドで一括」

赤いカードを差し出す。

運転手が感心したように笑う。

「若いのにやるな」

決済音が鳴る。

二人は車を降りた。


___ミサト町。

空気が重い。

静まり返った通り。

遠くで、工場の機械音だけが響いている。

アグネロが辺りを見回す。

「……元気ねぇな」

ヒマレは静かに答える。

「みんな、生きるのに必死なの」

少し間を置く。

「明日が上納日。今夜は大詰め」

「まだ働くのか?」

「そうよ」

当然のように言う。

アグネロは眉を寄せる。

「大変だな。ごめんな、力になれなくて」

ヒマレがにやっと笑う。

  「あー、謝ったー!ごめんよりありがとうが好きなんでしょ?そんなに謝らなくて良いから、道端に倒れてた誰かさんはゆっくり休んでくださいね」


  「そうだな、ありがとうだ。それじゃ、無理せず頑張ってな」


  「うん、ありがとう。ばいばい」


    働かなければ、殺されてしまう者。道で死にかけていた者。偶然出会った2人は、互いに背を向け、それぞれの行き先へと歩いて行った。
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