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第一章
第十一話 殺されろ
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___ここはワイン工場
上納二時間前。
目の下を紫に染めた従業員たちが、それでも手を止めずに最後の工程を進めていた。三千本。今月も揃えなければ、生きられない。
「工場長ー!とりあえずラスト1本、コルク閉めたら終わりです!」
ヒマレの声が響く。
「あいよ、ヒマレちゃん。お疲れ様ね。みんなも、本当にお疲れ様。今月もよく乗り切ってくれた」
最後の一本にコルクが押し込まれる。
その音が、やけに重い。
「やっと終わった……」
「今月も生きれるな」
安堵が広がる。
ヒマレは息を整え、微笑んだ。
「みんな、お疲れ様! じゃあ私は輸送車の手配をしてくるね」
出口へ向かう。
――その瞬間。
轟音。
扉が内側へ吹き飛んだ。
粉塵の向こうに、ひとりの男。
「……アグネロ?」
昨日までの明るい顔は、そこにない。
彼は何も言わず、積まれたワインへ歩み寄る。
「何やってんのよアグネロ! ねぇ!」
一本を掴む。
コルクが抜ける。
「やめなさいよ。あんた、まさか飲むつもりじゃないわよね……」
アグネロが振り返る。
「飲むんだよ」
低い声。
「命懸けで作ったんだろ。どんな味かくらい、知っといてやる」
瓶を傾ける。
喉が鳴る。
「……悪くねぇな」
ヒマレの視界が赤く染まる。
「アグネロォーー!! 騙したな、殺してやる!」
ナイフを握り、駆ける。
「死ねぇぇぇえ!!」
振り下ろす。
グサッ。
ナイフはアグネロの右手に突き刺さった。
血が滴る。
「痛ってぇな……」
眉一つ動かさない。
ゆっくりとナイフを抜き、床へ放る。
ヒマレを見下ろす。
「俺を殺す?」
一歩近づく。
「死ぬのが怖くて、ロイヤルの言いなりになってるような奴が?」
ヒマレの呼吸が荒い。
アグネロの声がわずかに低くなる。
「足掻く力があんなら、ナイフ向ける相手、間違えてんじゃねーのか」
その言葉が、工場に落ちる。
一瞬の静寂。
アグネロは別の瓶を開ける。
「アルコール消毒って聞くよな」
傷口にワインをかける。
血と赤が混ざる。
空瓶を投げ捨てる。
数十本を薙ぎ倒す。
ガラスが砕ける。
ヒマレは膝から崩れ落ちる。
涙が止まらない。
アグネロが耳元に顔を寄せる。
「楽にしてやるって言ったろ?」
低く、冷たく。
「これでお前らは終わりだ。バロンドームに殺されろ」
ほんの一瞬だけ、瞳が揺れる。
「……短い付き合いだったな。ありがとな、ヒマレ」
背を向ける。
壊れた扉の向こうへ歩き去る。
残されたのは、
割れた瓶と、
流れた血と、
取り返しのつかない沈黙だった。
上納二時間前。
目の下を紫に染めた従業員たちが、それでも手を止めずに最後の工程を進めていた。三千本。今月も揃えなければ、生きられない。
「工場長ー!とりあえずラスト1本、コルク閉めたら終わりです!」
ヒマレの声が響く。
「あいよ、ヒマレちゃん。お疲れ様ね。みんなも、本当にお疲れ様。今月もよく乗り切ってくれた」
最後の一本にコルクが押し込まれる。
その音が、やけに重い。
「やっと終わった……」
「今月も生きれるな」
安堵が広がる。
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「みんな、お疲れ様! じゃあ私は輸送車の手配をしてくるね」
出口へ向かう。
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轟音。
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「……アグネロ?」
昨日までの明るい顔は、そこにない。
彼は何も言わず、積まれたワインへ歩み寄る。
「何やってんのよアグネロ! ねぇ!」
一本を掴む。
コルクが抜ける。
「やめなさいよ。あんた、まさか飲むつもりじゃないわよね……」
アグネロが振り返る。
「飲むんだよ」
低い声。
「命懸けで作ったんだろ。どんな味かくらい、知っといてやる」
瓶を傾ける。
喉が鳴る。
「……悪くねぇな」
ヒマレの視界が赤く染まる。
「アグネロォーー!! 騙したな、殺してやる!」
ナイフを握り、駆ける。
「死ねぇぇぇえ!!」
振り下ろす。
グサッ。
ナイフはアグネロの右手に突き刺さった。
血が滴る。
「痛ってぇな……」
眉一つ動かさない。
ゆっくりとナイフを抜き、床へ放る。
ヒマレを見下ろす。
「俺を殺す?」
一歩近づく。
「死ぬのが怖くて、ロイヤルの言いなりになってるような奴が?」
ヒマレの呼吸が荒い。
アグネロの声がわずかに低くなる。
「足掻く力があんなら、ナイフ向ける相手、間違えてんじゃねーのか」
その言葉が、工場に落ちる。
一瞬の静寂。
アグネロは別の瓶を開ける。
「アルコール消毒って聞くよな」
傷口にワインをかける。
血と赤が混ざる。
空瓶を投げ捨てる。
数十本を薙ぎ倒す。
ガラスが砕ける。
ヒマレは膝から崩れ落ちる。
涙が止まらない。
アグネロが耳元に顔を寄せる。
「楽にしてやるって言ったろ?」
低く、冷たく。
「これでお前らは終わりだ。バロンドームに殺されろ」
ほんの一瞬だけ、瞳が揺れる。
「……短い付き合いだったな。ありがとな、ヒマレ」
背を向ける。
壊れた扉の向こうへ歩き去る。
残されたのは、
割れた瓶と、
流れた血と、
取り返しのつかない沈黙だった。
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