サングレアル ―王の血脈―

フジーニー

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第一章

第十三話 炎と火

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___ウェルシア大聖堂

「お前誰だ、この辺じゃ見ねぇ顔だな。その態度が気に入らねぇ、バロンドーム舐めてんのか? 死ぬ前に名前だけでも言ってみろ、墓作ってやるよ」

キレた黒スーツBが吐き捨てる。

アグネロはニヤリと笑った。

「バロンドーム舐めてんのはどっちだって」

一歩踏み出す。

「俺の名前はアグネロ。アグネロ・バロンドーム!」

声が大聖堂に響く。

「サングレアル、バロンドーム家の末裔だ。この世に俺以外のバロンドームは存在しねーはずなんだがなぁ!」

黒スーツAとBの顔色が変わる。

窓の外から覗くヒマレも、息を呑んだ。

(唯一……?)

「う、うるせーな! お前みたいなボロボロがバロンドームな訳ねーだろ! この偽物が! 死ねぇぇえ!」

Bがナイフを抜き、突進する。

アグネロは動かない。

「あー、だりぃっての。久しぶりに一発かますか」

右手を握り、天へ突き上げる。

「血に選ばれしも天の運命この世に受けた魂は紅蓮の炎で焼き尽くす」

滴る血が炎へと変わる。

拳が紅蓮に包まれる。

「いくぜ? 炎拳!!」

燃える拳がBの頬へ叩き込まれる。

身体ごと吹き飛び、Aを巻き込み、二人は黒焦げの塊となって床に転がった。

「んー、少し鈍ったかな。炎の調子悪い」

ヒマレは震える。

「何あの力……サングレアルの本当の力って、バケモノじゃない」

アグネロは倒れた二人を見下ろす。

「バロンドーム名乗るなら、これくらい出来ねぇと困るっての。本当は俺しかいねーのに」

視線を奥へ向ける。

「てかさ、お前らファイって奴じゃねーよな。居るなら出てこいよ」

その時、奥の扉がゆっくり開く。

「ちょちょちょーい。待てよ、ボロボロ服」

白スーツの男が姿を現した。

長身、長髪、整った顔。

ファイ。

アグネロは振り返る。

「あぁ? テメェがファイか」

「いかにも。僕の仲間を黒焦げにしてどういうつもりかな。せっかく上納日でウキウキしてたのに気分台無しだよ」

にこやかに笑う。

「ここでは僕に逆らったら死刑って決まりだけど、大丈夫そ?」

「あ? 悪ぃけどワインは来ねぇぞ。俺が飲んじまったからな。町の奴らは関係ねぇ。悪いのは俺だ」

ファイの笑みが消える。

「君、死刑ね」

「上等だっての。なんでバロンドームの名を騙ったのか、教えてもらおうか」

「聞いてどうする? ここで死ぬのに……ね!」

一瞬で間合いを詰める。

ドンッ。

アグネロの頬がえぐられ、壁へ叩きつけられる。

「ぐはっ……」

床に転がる。

「黒スーツとは違うみてぇだな……」

立ち上がる。

「本気で来いよ」

ファイは指先に火を灯す。

「お互い火の使い手なんだし、一発で決めよっか。絶対殺す」

「火じゃねぇ。炎だ」

アグネロの掌に紅蓮が灯る。

「へぇ。本物のサングレアル様は火じゃなくて炎ってやつ? ダジャレみたいだけど」

「分かってねぇな」

アグネロが低く言う。

「さっきのパンチ、足裏からブースト、肘で二段加速だろ? いい戦い方だ」

ファイが笑う。

「流石はサングレアルの一族。次は確実に殺す」

「あぁ、こいよ。次は俺も撃つ」

アグネロが掌を天へ向ける。

炎が浮かび上がる。

直径三メートルの炎球。

五秒の静寂。

ほむら!」

「ファイアスピア!」

炎と火が激突。

轟音。

爆炎。

煙。

窓の外でヒマレは言葉を失う。

数秒後――

煙が晴れる。

炎の中に、二つの影。

「中々やるなお前」

「君もね」

二人とも無傷だった。
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