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コレ星人ーリターンズー
しおりを挟むピコの帰還から、ちょうど一年後。
地球は、すっかり「コレブーム」に染まっていた。
世界中の家庭に、ピコそっくりのぬいぐるみが置かれ、スマホの待ち受けはピコの画像。テレビでは「コレ星人ちゃんねる」が24時間放送され、子供たちは「コレ!」と挨拶するようになった。大人たちも、ストレスが溜まると「コレ!」とつぶやいて癒される。
ピコのぬいぐるみは、発売からわずか数ヶ月で10億個を突破。どの家にも、少なくとも一つはあった。
誰も気づいていなかった。
ぬいぐるみの目が、夜中にかすかに光っていることに。
そして、すべてのぬいぐるみが、母星と繋がっていることに。
コレ星の本星では、ピコが報告を終えていた。
巨大なドーム型の司令室。そこに並ぶのは、数万体のコレ星人。みんな同じくふわふわで、可愛らしい。
最高司令官(見た目はピコと全く同じ)が、テレパシーで宣言した。
「地球人の精神支配、完了。
抵抗勢力は0.02%未満。
最終段階――『物理降下』を執行せよ。」
地球の夜空に、異変が起きた。
世界中の空に、ドーナツ型の巨大宇宙船が、無数に出現した。
しかし、人類はパニックにならなかった。
むしろ、歓声を上げた。
「ピコが来たー!」「コレ星人が本物で来た!」「かわいいいいいい!」
街頭ビジョンに、ピコの姿が映し出された。
「コレ!」
人々は涙を流して喜んだ。
「ようこそ地球へ!」「ずっと待ってたよ!」
コレ星人の艦隊は、静かに着陸を開始した。
主要都市の公園、スタジアム、学校の校庭――どこも「コレ!」の歓声で埋め尽くされた。
コレ星人たちは、降りてきて、人間たちを抱きしめた。
「コレ!」
人間たちは、幸せそうに笑った。
その瞬間から、本当の支配が始まった。
コレ星人の体から、微弱な電磁波が放出された。
それは、人間の脳に直接作用する「服従信号」。
ぬいぐるみを通じて、すでに一年間、少しずつ調整されていた波長だ。
人々は、気づかないうちに、コレ星人の命令に喜んで従うようになった。
「地球の資源を、コレ星に運んでください」
「コレ!」
人々は笑顔で、工場を動かし、鉱山を掘り、食料を積み込んだ。
「地球の政府は、もう必要ありません」
「コレ!」
国連は解散され、すべての権力がコレ星人に委譲された。
「人間は、これからは遊ぶだけでいいのです」
「コレコレコレ!」
人々は仕事を辞め、毎日「コレ!」と遊び始めた。
抵抗したわずかな人々――科学者や、ぬいぐるみを買わなかった者たち――は、すぐに「再教育キャンプ」に送られた。
そこでは、ピコの映像を24時間見せられ、「コレ!」と言うまで眠れない。
やがて、誰も抵抗しなくなった。
ピコは、地球の最高指導者として、東京の公園に巨大な宮殿を建てた。
毎朝、世界中の人々が宮殿に集まり、ピコに挨拶する。
「コレ!」
ピコは、満足そうに(ように見える)微笑んだ。
地球は、完全にコレ星の一部となった。
戦争はなく、貧困はなく、争いはなく――ただ、永遠の「癒し」と「服従」のみ。
人類は、幸せだった。
少なくとも、自分たちがそう信じている限りは。
そして、コレ星の次なる標的は、隣の銀河へ。
ピコは、新しい偵察用のぬいぐるみを準備しながら、静かに呟いた。
「コレ……」
――まだまだ、征服は続く。
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