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種なしスイカの種を探す会
しおりを挟むむかしむかし、ある小さな村に、四人の子どもたちがいました。
ケンタ、アキラ、ユウコ、ショウタ。みんな小学五年生で、いつも一緒に遊ぶ仲良しでした。村はのどかで、夏になると周りの畑がスイカでいっぱいになり、甘い香りが風に乗って村中を包み込みました。子どもたちは毎日のように川で泳いだり、木に登ったり、秘密基地を作ったりして、夏を満喫していました。
ある蒸し暑い夏の午後、アキラが興奮した顔でみんなを呼んだ。
「見てみろよ! これ、すげえんだ! 『種なしスイカ』だって! 種が一つも入ってないんだぜ!」
アキラの家のおじいさんが、遠くの市場から珍しいものとして買ってきたものでした。四人は木陰に座って、大きなスイカを包丁で割り、冷えた果肉にかぶりつきました。赤い果肉は宝石のように輝き、汁が滴って手がべとべとになるほど甘くて、食べると体の中まで夏の陽射しが染み込んでいくようでした。
「うまい! 種がないから、吐き出さなくていいし最高!」
ケンタが笑った。
でも、ユウコがスプーンを止めて、ふと小さな声で言いました。
「でも……種がないってことは、このスイカはどうやって生まれたの? 次のスイカは、どうやって増えるの?」
四人は顔を見合わせ、黙り込みました。
普通のスイカなら、黒い種を土に埋めると、新しい蔓が伸びて花が咲き、実がなります。でも、種がないなら……この魔法のように甘い果物は、いつかこの世界から完全に消えてしまうのではないか?
ショウタが目を大きく見開いて言いました。
「これは大危機だ! 種なしスイカは、絶滅の運命にある幻の果実なんだ! 僕たちが守らないと、永遠の夏が失われちゃう!」
アキラが拳を握りました。
「そうだ! 会を作ろう!」
こうして、「種なしスイカの種を探す会」が結成されました。
目的はただ一つ──
種なしスイカの中に、古代の伝説で語られる「最後の一個の種」を見つけて、それを守り、永遠の夏をこの世に残すこと。
四人は村の古い図書館へ行き、埃まみれの本棚を漁りました。そこにあった一冊の黄ばんだ古書に、驚くべき伝説が書かれていました。
「種なしスイカの真の種は、遥かなカルハリ砂漠の奥深く、『幻獣スフィン・スイカ』が守護している。
その種はただ一つだけ、黄金に輝き、植えれば永遠に実を結ぶ魔法の樹となる。
しかし、砂漠へ至る道は、幻の門によって閉ざされており、心が純粋で、友情に満ちた子どもたちだけが通れる。
門を開く鍵は、種なしスイカへの純粋な愛と、諦めない心である」
四人は胸を高鳴らせました。
「絶対に行こう! 砂漠へ! 本物の種を取り戻して、みんながずっと種なしスイカを食べられる世界にするんだ!」
冒険の準備が始まりました。
お小遣いを貯め、家の手伝いを増やし、近所のおじいさんおばあさんから昔話を聞いて小銭をもらいました。お年玉は全部貯金箱へ。誕生日には「冒険資金」と紙に書いて親に頼み、みんな少しずつお金を集めました。地図を買い、砂漠の写真を部屋に貼り、リュックに水筒や帽子、虫除けを詰めました。
ある満月の夜、四人は村はずれの古い井戸の前で集まりました。伝説によると、ここが「幻の門」だというのです。
ケンタが、みんなで最後に食べた種なしスイカの皮を井戸に投げ込みました。
「種なしスイカの未来を、僕たちに託してください! 僕たちは、永遠の夏を守りたいんです!」
すると、井戸の底から青く美しい光が湧き上がり、四人を優しく包み込みました。風が甘いスイカの香りを運び、星々が瞬きました。
目を開けると、そこは果てしない黄金の砂漠でした。
空には二つの太陽が輝き、熱い風が砂を舞い上げ、遠くに蜃気楼が揺れていました。地面には、ところどころにスイカのような緑の蔓が這っていました。
四人は手を繋いで歩き始めました。
遠くに、巨大な影が見えました。ライオンの体にスイカの蔓が絡まり、頭には緑の葉の冠を被った幻獣──スフィン・スイカです。獣は悠然と座り、前足で大きな黄金のスイカを守っていました。
四人は恐れながらも近づきました。
アキラが勇気を出して叫びました。
「スフィン・スイカさん! 種なしスイカが、この世界から消えようとしています。最後の種をください! 僕たちが守ります!」
幻獣はゆっくりと黄金の目を開け、低く響く声で答えました。
「子どもたちよ。真の種はここにある。しかし、与えるには三つの試練を乗り越えねばならない。それぞれの試練は、お前たちの心を試すものだ」
試練は三つでした。
第一の試練:灼熱の砂丘を渡り、幻のオアシスを見つけること。
砂は足を焼くほど熱く、喉は渇き、蜃気楼が何度も偽りの水辺を見せました。四人は何度も倒れそうになりましたが、ユウコが言いました。「みんなの笑顔を思い出せば、本物が見えるよ!」みんなで昔の思い出を語り合い、笑いながら歩き続け、ついに緑のヤシと清らかな湖が見える本物のオアシスにたどり着きました。
第二の試練:オアシスの湖に棲む「涙の魚」を一匹、傷つけずに捕まえること。
魚たちは銀色に輝き、触れると悲しい涙を流すと言われていました。ショウタが優しく歌を歌うと、魚たちは集まってきて、自ら小さな網の中に入りました。一匹の魚が囁きました。「純粋な心には、涙は不要だよ。お前たちは、すでに喜びで満ちている」
第三の試練:スフィン・スイカに、自分の一番大切なものを差し出すこと。
四人は悩みました。
ケンタは大好きな野球グローブ。
アキラは宝物の冒険小説全巻。
ユウコはおばあちゃんからもらった大切な髪飾り。
ショウタはお母さんが縫ってくれたお守り。
でも、四人は同時に気づきました。
「僕たちの本当に大切なものは……この友情だ。でも、それをあげるわけにはいかない。だから、代わりに……」
四人は、リュックから残っていた最後の種なしスイカを取り出し、幻獣に差し出しました。
「これを食べてください。そして、種なしスイカの甘さを、永遠に覚えていてください。僕たちは、この味をみんなに届けたいんです」
スフィン・スイカは、静かにスイカを食べました。果肉を噛むたび、獣の表情が優しくなりました。
そして、満足げに頷きました。
「よくぞ言った。真の種は、外にあるものではない。
お前たちの心の中に、すでに芽吹いている。友情と純粋な願いが、永遠の夏を生むのだ」
獣の前足の下から、小さな黄金の種が現れました。種は温かく、光を放ち、四人の手に収まりました。
四人は種を抱きしめ、涙を流しました。
光が再び包み込み、気づくと村の井戸の前に戻っていました。
手の中には、黄金の種。
四人は家の裏の秘密の畑に、種を丁寧に植えました。水をやり、毎日祈りました。
次の夏、奇跡が起きました。
一本の蔓が伸び、無数の花が咲き、大きな大きなスイカが実りました。
割ってみると──種が一つもない、完璧な種なしスイカ。
でも、四人だけが知っていました。
そのスイカを食べると、心の中に永遠の夏が広がり、どんなに悲しい日でも笑顔になれること。
そして、どんなに食べても、次の年もまた新しい実がなること。
なぜなら、種は友情という魔法で、永遠に芽吹き続けるから。
それから四人は、大人になりました。
それぞれ別の町で暮らし、仕事を持ち、家族を持ちました。
でも、夏になると、必ず村に帰ってきて、あの秘密の畑のスイカを食べます。
甘くて、懐かしくて、少しだけ魔法の味がする。
子どもたちや孫たちに、昔の冒険を語りながら。
「種なしスイカの種を探す会」は、今も続いています。
心の中で、カルハリ砂漠の冒険を繰り返しながら。
黄金の種は、みんなの胸の中に、ちゃんと根を張って、永遠に実を結んでいるから。
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