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110話 会長の正体

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 ミンキュは恐ろしいものに出会ったかのように汗を流して生徒会室へ飛び込んでくる。
 その後、すぐに扉を締め、鍵をかけ、こちらを向いてがくんと膝をついた。

 話によるとミンキュはケンドルトという人物に最初から正体がバレていたとか、目をつけられていたと話の所々から推測することができた。
 なぜ推測なのかというと、ミンキュは安堵からか嗚咽を出しながら泣いていて、なんとかかんとかその事をこちらに伝えてくれたからである。

「ひどい男もいるものだよ、下流貴族って傲慢だし」

 と、セイさんの妹が言う。
 こちらも下流貴族ではあるのだが、生まれは違うし下流貴族内でも思うところはあるのかもしれない。

 それにしてもとんだ災だ。
 よりによってミンキュを送りこんだことが失敗だったとは思いもよらなかった。

「とりあえず、落ち着こう?」

 ユナが優しくミンキュのケアをしてくれているため、一旦は落ち着いてきたようである。

「それで、会長とやらの事については調べることができたのか?」

 皆が少し気まずくて切り出しにくかったところでセイヨウが聞いてくれたため、ありがたいといえばありがたかった。

 まあ、こういう勇気ある所がセイヨウの長所だ。
 一歩間違えれば空気読めないという短所にもなるのだが。

「一応、か、顔と名前は……」

 どうやら情報を集めるという意味ではうまくいっていたらしいが、対価がデカすぎる気もする。

 名前はミュルドーというあまり聞き慣れない名前で誰かは分からない。

Give:MEMギブ・メモリー

 しかし、その顔を見ると、僕ともうひとり、驚いている人がいた。
 セイさんの妹だった。

 一年生の学園祭直前だった。
 彼女はミュルドーに操られ、濡れ衣を僕が着せられそうになった。

 脅しただけで情報を吐いて逃げていってくれたため過去の話だと思っていたが、どうやら向こうはこちらへの怒りは収まっていないらしい。
 ついでに言えば、元々は下流貴族だったのにもかかわらずシェイドの父ノーゼス公の養子になって上流貴族に昇格していたのもミュルドーである。

「また厄介なやつが相手になるのか……」

 シェイドに目をつけられた時点で厄介な事はさておいて、ミュルドーはおそらくこちらに対して敵意を向けてくることは間違いないだろう。

 しかも、ミンキュが手に入れた情報はそれだけではなかった。

「そのひと……、情報を手に入れたいと思ったらその情報は、絶対手に入れられるそうですよ……」

 一体全体どういうことか分からなかったが、こちらに関しては下流貴族の面々が知っているらしかった。

「情報屋ってやつか」

 情報屋?更に聞き慣れない言葉だが、言葉の意味から察するに、元いた世界でいうメディアやマスコミにあたるのだろうか。

 僕は更に厄介なことになったと肩を落とすのであった。
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