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112話 トリオス公の結婚?
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その報告は、突然にやってきた。
古谷書店の掃除をして、さて本の訳に取り掛かろうかというところでトリオス公のカードから着信したようだった。
『シュン、そのな……。俺とレイシェル姫の結婚が正式にとり行われることになった。明日の朝に馬車が迎えに来るからそれに乗って来てくれ』
兄からの報告はいつも唐突である。
しかし、どうやら今回の報告は僕に限らずほとんどの人が知らない情報らしかった。
『結婚の準備は内密にとり行われる。参加者たちは一週間前ほどから貴族区での生活を義務付けられている』
どうやら情報漏えいを防ぐためのものらしいが、なぜ結婚の情報を直前まで隠しておくのかは分からなかった。
「ちなみに、参加しないっていうのは……」
『無理だろうな。そもそも、兄の門出くらい祝ってくれてもいいだろ?』
確かに、ごもっともな意見である。
僕は貴族も家族も嫌いだったが、貴族の中でも家族の中でも兄であるトリオスのことだけは好きだった。
しかし、こちらも一応学生である。
アトラト学園の生徒としては……。
『学校のことが心配か?アステイモ公に許しはもらっているが……』
まあ、なんとなくは察していた。
そもそも、上流貴族どころか一国の姫が結婚するわけだから他の上流貴族たちに話が渡っていないはずがない。
「それじゃあ、明日の朝に来る馬車に乗れば良いんだね?」
トリオスはこちらが理解したのを知ったため通話は切れた。
僕は通話が切れた後もトリオスのカードをしまわず、見つめていた。
トリオスが結婚すれば、称号は上流貴族第二位本家ではなく、この国の王子になるのだろう。
称号の兼任は基本的に出来ないため、上流貴族第二位本家の称号は別の人が担うことになる。
ミトラス家は父親の弟がいたらしいのだが、とある事件で亡くなったためその称号は僕に来るらしい。
兄がこの国の姫以外に結婚を受けていればどんな立場の人であろうと称号は別のところに移らないというのに。
「……これも、運命なのか?」
思わず、そんな言葉が口をついて出てきた。
トリオスの結婚なので僕しか呼ばれていないと思っていたが、そんなことはなかった。
馬車の隣に座っているのはハルカさん。
「そういえば、トリオス公はシュン君のお兄さんだったわねー!」
お互いに相手が上流貴族と関係があることなど忘れていたため、馬車が来たときにやっと気がつくというちょっとした喜劇を繰り広げた。
とはいえ、僕は上流貴族とはほとんど関係がなかったため、ハルカさんがいることだけでも心強かった。
そのまま馬車に揺られ、貴族門の中へと入っていくのだった。
古谷書店の掃除をして、さて本の訳に取り掛かろうかというところでトリオス公のカードから着信したようだった。
『シュン、そのな……。俺とレイシェル姫の結婚が正式にとり行われることになった。明日の朝に馬車が迎えに来るからそれに乗って来てくれ』
兄からの報告はいつも唐突である。
しかし、どうやら今回の報告は僕に限らずほとんどの人が知らない情報らしかった。
『結婚の準備は内密にとり行われる。参加者たちは一週間前ほどから貴族区での生活を義務付けられている』
どうやら情報漏えいを防ぐためのものらしいが、なぜ結婚の情報を直前まで隠しておくのかは分からなかった。
「ちなみに、参加しないっていうのは……」
『無理だろうな。そもそも、兄の門出くらい祝ってくれてもいいだろ?』
確かに、ごもっともな意見である。
僕は貴族も家族も嫌いだったが、貴族の中でも家族の中でも兄であるトリオスのことだけは好きだった。
しかし、こちらも一応学生である。
アトラト学園の生徒としては……。
『学校のことが心配か?アステイモ公に許しはもらっているが……』
まあ、なんとなくは察していた。
そもそも、上流貴族どころか一国の姫が結婚するわけだから他の上流貴族たちに話が渡っていないはずがない。
「それじゃあ、明日の朝に来る馬車に乗れば良いんだね?」
トリオスはこちらが理解したのを知ったため通話は切れた。
僕は通話が切れた後もトリオスのカードをしまわず、見つめていた。
トリオスが結婚すれば、称号は上流貴族第二位本家ではなく、この国の王子になるのだろう。
称号の兼任は基本的に出来ないため、上流貴族第二位本家の称号は別の人が担うことになる。
ミトラス家は父親の弟がいたらしいのだが、とある事件で亡くなったためその称号は僕に来るらしい。
兄がこの国の姫以外に結婚を受けていればどんな立場の人であろうと称号は別のところに移らないというのに。
「……これも、運命なのか?」
思わず、そんな言葉が口をついて出てきた。
トリオスの結婚なので僕しか呼ばれていないと思っていたが、そんなことはなかった。
馬車の隣に座っているのはハルカさん。
「そういえば、トリオス公はシュン君のお兄さんだったわねー!」
お互いに相手が上流貴族と関係があることなど忘れていたため、馬車が来たときにやっと気がつくというちょっとした喜劇を繰り広げた。
とはいえ、僕は上流貴族とはほとんど関係がなかったため、ハルカさんがいることだけでも心強かった。
そのまま馬車に揺られ、貴族門の中へと入っていくのだった。
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