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126話 透明化魔法

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 本が飛んでくるというのは予想もしていなかったが、なんとなく理解したような気がした。
 まずは、ミュルドーは確実にこの書店の中にいるということ。

 さらに、近づいて攻撃をしてこないということは単純にだけで動けば音が出るからではないだろうか。
 さらに言えば魔法を使えば位置がばれる。
 魔力の動きは魔法を使う者中心に動いていくからだ。

「つまり、秘伝で得た能力は透明になる能力だ、違うか?」

 ある程度の確信があった。
 透明になれると仮説をたてればこの状況ではある程度の説明がつくからだ。

「透明になる?それはそっちが導き出した現状の理解じゃないのか?」

 現状?一体どういうことだ?
 確かにミュルドーは透明になっている。見えてはいないんだ。

「その程度の考えじゃダメだろうな、残念だよ」

 左腕に鋭い痛みが走った。
 鋭利なもので斬られたのであろう痛みだが、刃物のようなものは見えない。

 思い返してみれば、本を投げるのであれば本は宙に浮いた不自然な状態になるはず。
 その状態を見逃すのだろうか?

「違う、透明になる能力じゃない、能力だ」

 見逃すはずがないだろう。
 なぜなら、この部屋には僕だけではない、フルヤさんもいるのだから。

 左腕の切り傷はナイフなんかを飛ばしてつけたのだろう。

「だが、その能力が分かったところでお前は意味がないんだ!」

 意味がない、本当にそうなのだろうか?

Name:TAGネーム・タグ!!」

 それはミトラスからもらった魔法。
 頭上に「ミュルドー」という名前が表示され、敵の場所を把握する。

「当然だが、無制限に透明に出来るわけじゃない。おそらく、透明に出来るのは触れた物だけなのだろう?」

 さっき本が飛んでくるのが分かったのはミュルドーの手を離れたから。
 逆に、斬られても何があったか分からなかったということはミュルドーは長剣を持っているのだろう。

「当然だが魔法には触ることはできない、お前の負けだ」

「勝手に決めんなよ?この前の時とはオレの覚悟も違う」

 まさか、ミュルドーは本棚の方にいる。

 ……!

「そうだ、その顔だ。二年前に絶望したオレと同じようにオマエも絶望した顔を見せろ!」

 このままでは、大量の本が、古谷書店が、僕の拠り所となったこの家が!
 消えてしまう!

「飛びっきりのやつ見せてやるよ、オマエにはよお!」

 いきなり目の前に現れるコルク。
 大きな音を立てて割れた瓶。
 つんと鼻を刺激するガソリンのにおい。

「エフェクトじゃない、本当の火魔法を見せてやるよ!」

「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
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