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第6夜 夢みる羊
第9話 カウントダウン
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「ナイスキャッチ!」
羊を捕まえた子に声をかけると、嬉しそうに応えてくれる。クラスメートたちの協力のおかげで、どうにか緋鞠の視界に入るすべての羊を捕獲し終えることができた。
これで全員、問題なく合格だろう。
「緋鞠ちゃん、やりましたね!」
琴音が駆け寄ってきたタイミングでハイタッチをすると、つんざくような爆発音が上がった。
「きゃあああ!?」
「なんだ!?」
「全員逃げろ!!」
空から一直線に飛んで、黒い弾丸が雨のようにグラウンド中に降り注ぐ。
「なんなの!?」
「これは、もしかして……」
琴音が腕時計を確認すると、残り時間が十分を切っていた。
「十分切ってます! これが先生の言っていた妨害ですよ!」
「ええっ!?」
緋鞠はあまりの暴挙に理解が追い付かない。確かに妨害をするとは言っていたが、まさか爆発物を使ってくるとは思わなかった。
飛来してくる弾丸に向かって、琴音は弓を引いた。矢は弾丸を貫き、爆発する。緋鞠は爆風から身を守るように、月姫で盾を描く。
『驚いている暇はないぞ!』
「銀狼!」
残り時間以内に、囲いの外のにあるスタート地点まで戻らなければいけない。緋鞠たちがいるのはその反対側だ。
「急いで戻らないと!!」
「でもこれじゃあ、きりがありませんよ! たどり着く前に爆弾の餌食です!」
琴音が矢を放っても放っても、次から次へと弾丸が降ってくる。周囲の状況は爆風や轟音のせいで掴めない。
銀狼にスタート地点まで連れてってもらうにしても、弾丸はおそらく追尾型だろう。銀狼に弾丸が当たるかもしれないし、クラスメートたちを巻き込んでしまうかもしれない。
『ふふふ、お困りのようですね』
月姫が話しかけてきた。
「何か名案でもあるの!?」
『ありますとも! 私は優秀なのですよ? 緋鞠のお役に立つ、とっておきを教えてあげちゃいます』
月姫が手を添えたのか、緋鞠の手が自動書記のように文字を綴る。
『鞭』
文字が青白く輝きだし、黒い筆がしなやかな黒い鞭へと形を変える。鞭を扱ったことはないが、月姫であるからか手にしっかり馴染んだ。
「すごーい! こんな武器にも変化させれられるんだ!」
『さぁ、これで弾丸なんか叩き落としてしまいましょう!』
緋鞠は弾丸に向かって鞭を振るう。空中を滑るように飛ぶ弾丸は、パンっと気持ちのよい音と共に破裂した。初めて使ってみたけれど、基が月姫だからか使いやすい。
「これ、すっごくいいね! そりゃ!」
円を描くように二、三回転して強く引くと、空を覆いつくしていた弾丸が花火のように爆発する。晴れた爆風の先に、ゴールが見えた。
「これで進めるよ! 琴音ちゃん、銀狼、行こう!」
「はいっ!」
『了解!』
クラスメートたちも封月を駆使しながら進んでいる。いつのまにか全員が一丸となってスタート地点を目指し始めた。自然と協力しあっている皆を見て、緋鞠は自然と笑顔になる。
あんなに嫌だと言っていたものだから、本当に協力しなかったらどうしようと思っていたけれど。
(……よかった)
あと数十メートルといったところで、何かが緋鞠の足に引っ掛かった。思わず立ち止まって、原因を確かめる。
『緋鞠! なにを止まっている!?』
「ごめん、ちょっと待って! 足に……あれ?」
一瞬、歪んだ空間が緋鞠の目に入ったが、すぐに消えてしまった。しゃがんでみても、何もない。
(気のせい? でも、あんなにはっきりした感触があったのに)
「緋鞠ちゃん! 時間がありませんよ!」
『早く行くぞ!』
「……わ、わかった」
見間違いだったのだろうか? やっぱり、どうしても気になる。緋鞠は首を傾げながら、二人の背を追う。そのとき、背後から泣き声が聞こえた。
「た、助けてくださぃ~!!」
はっと緋鞠が振り返ると、先程までなかった空間が宙に浮かび上がる。そこにいたのは、昨日瑠衣と共にいたもう一人の少女だった。足を怪我しているのか、足を抑えながら泣いている。
「あと五分ですよー!」
愛良の声が耳に届く。けれども緋鞠は迷わず、泣いている少女へと足を踏み出そうとする。
琴音が気付いて、こちらを振り返った。
「緋鞠ちゃん?」
「琴音ちゃんは先に行ってて!」
「私もいっしょに行きます!」
「ダメ!」
時間以内にたどり着けなかったら、不合格になるかもしれない。緋鞠は琴音の胴を鞭に巻き取ると、囲いの外へと放り投げる。
「ひ、緋鞠ちゃんっ!?」
「大丈夫! 待ってて!!」
にっと笑って見せると、緋鞠は駆け出した。
羊を捕まえた子に声をかけると、嬉しそうに応えてくれる。クラスメートたちの協力のおかげで、どうにか緋鞠の視界に入るすべての羊を捕獲し終えることができた。
これで全員、問題なく合格だろう。
「緋鞠ちゃん、やりましたね!」
琴音が駆け寄ってきたタイミングでハイタッチをすると、つんざくような爆発音が上がった。
「きゃあああ!?」
「なんだ!?」
「全員逃げろ!!」
空から一直線に飛んで、黒い弾丸が雨のようにグラウンド中に降り注ぐ。
「なんなの!?」
「これは、もしかして……」
琴音が腕時計を確認すると、残り時間が十分を切っていた。
「十分切ってます! これが先生の言っていた妨害ですよ!」
「ええっ!?」
緋鞠はあまりの暴挙に理解が追い付かない。確かに妨害をするとは言っていたが、まさか爆発物を使ってくるとは思わなかった。
飛来してくる弾丸に向かって、琴音は弓を引いた。矢は弾丸を貫き、爆発する。緋鞠は爆風から身を守るように、月姫で盾を描く。
『驚いている暇はないぞ!』
「銀狼!」
残り時間以内に、囲いの外のにあるスタート地点まで戻らなければいけない。緋鞠たちがいるのはその反対側だ。
「急いで戻らないと!!」
「でもこれじゃあ、きりがありませんよ! たどり着く前に爆弾の餌食です!」
琴音が矢を放っても放っても、次から次へと弾丸が降ってくる。周囲の状況は爆風や轟音のせいで掴めない。
銀狼にスタート地点まで連れてってもらうにしても、弾丸はおそらく追尾型だろう。銀狼に弾丸が当たるかもしれないし、クラスメートたちを巻き込んでしまうかもしれない。
『ふふふ、お困りのようですね』
月姫が話しかけてきた。
「何か名案でもあるの!?」
『ありますとも! 私は優秀なのですよ? 緋鞠のお役に立つ、とっておきを教えてあげちゃいます』
月姫が手を添えたのか、緋鞠の手が自動書記のように文字を綴る。
『鞭』
文字が青白く輝きだし、黒い筆がしなやかな黒い鞭へと形を変える。鞭を扱ったことはないが、月姫であるからか手にしっかり馴染んだ。
「すごーい! こんな武器にも変化させれられるんだ!」
『さぁ、これで弾丸なんか叩き落としてしまいましょう!』
緋鞠は弾丸に向かって鞭を振るう。空中を滑るように飛ぶ弾丸は、パンっと気持ちのよい音と共に破裂した。初めて使ってみたけれど、基が月姫だからか使いやすい。
「これ、すっごくいいね! そりゃ!」
円を描くように二、三回転して強く引くと、空を覆いつくしていた弾丸が花火のように爆発する。晴れた爆風の先に、ゴールが見えた。
「これで進めるよ! 琴音ちゃん、銀狼、行こう!」
「はいっ!」
『了解!』
クラスメートたちも封月を駆使しながら進んでいる。いつのまにか全員が一丸となってスタート地点を目指し始めた。自然と協力しあっている皆を見て、緋鞠は自然と笑顔になる。
あんなに嫌だと言っていたものだから、本当に協力しなかったらどうしようと思っていたけれど。
(……よかった)
あと数十メートルといったところで、何かが緋鞠の足に引っ掛かった。思わず立ち止まって、原因を確かめる。
『緋鞠! なにを止まっている!?』
「ごめん、ちょっと待って! 足に……あれ?」
一瞬、歪んだ空間が緋鞠の目に入ったが、すぐに消えてしまった。しゃがんでみても、何もない。
(気のせい? でも、あんなにはっきりした感触があったのに)
「緋鞠ちゃん! 時間がありませんよ!」
『早く行くぞ!』
「……わ、わかった」
見間違いだったのだろうか? やっぱり、どうしても気になる。緋鞠は首を傾げながら、二人の背を追う。そのとき、背後から泣き声が聞こえた。
「た、助けてくださぃ~!!」
はっと緋鞠が振り返ると、先程までなかった空間が宙に浮かび上がる。そこにいたのは、昨日瑠衣と共にいたもう一人の少女だった。足を怪我しているのか、足を抑えながら泣いている。
「あと五分ですよー!」
愛良の声が耳に届く。けれども緋鞠は迷わず、泣いている少女へと足を踏み出そうとする。
琴音が気付いて、こちらを振り返った。
「緋鞠ちゃん?」
「琴音ちゃんは先に行ってて!」
「私もいっしょに行きます!」
「ダメ!」
時間以内にたどり着けなかったら、不合格になるかもしれない。緋鞠は琴音の胴を鞭に巻き取ると、囲いの外へと放り投げる。
「ひ、緋鞠ちゃんっ!?」
「大丈夫! 待ってて!!」
にっと笑って見せると、緋鞠は駆け出した。
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