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本編
冬休み・自分の中に眠る遺伝子
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父「な、なにをするっ!?」
バシンッ!
僕はお父さんを何度も叩いた
バシンッ!バシンッ!バシンッ!
父「お、おまっ・・・やめ・・・」
あれ・・・?
バシンッ!バシンッ!バシンッ!
父「いっ!・・・や・・・やめろ・・・」
僕・・・勝てる・・・?
叩くにつれてなんでこいつらにビクビクしてたのかわからなくなってきた
僕も本気を出せば勝てる
それがわかった瞬間、心の底から父親の存在が変わった
今まで怖い存在で、手なんか出したら殺されるかもしれないと・・・
そんな存在だったのに、今、目の前で僕が叩いている人物はそんな怖い存在には見えなかった
弱った生き物にしか見えない
「フ・・・ハハハw」
僕は笑いながら叩いていた
楽しい・・・とても楽しい!!
父親に復讐とかそんなことは考えたこともなかった
でも、今はこの復讐がとても楽しい!
「先輩が雑魚?wお前が雑魚じゃんw」
母「あんた!親に向かってっ!?」
バシンッ!
「僕に逆らうの?」
そういい何度も叩いた
母「やめ・・・」
「僕が何度も言ったよね?『やめて!』って?でも、あんたたちはやめなかったよね?wそれどころか僕の背中に傷を残したよね?w」
そういいお父さんの服を破った
父「!?」
そして近くのテーブルに置いてあるボールペンを握り締めた
「これで・・・同じことしていい?wてか・・・したい!w」
そういいボールペンを振り下ろした
「!?」
その手を誰かに止められた
僕はその相手をみた
それは先輩だった
獅子丸「もういい・・・やめろ・・・」
「先輩?なんで止めるんですか?」
獅子丸「・・・」
先輩は無言で抱きしめてきた
「先輩?」
獅子丸「もういいんだ・・・もう・・・」
「う・・・うぅ・・・」
涙が出てきた
そして我に返った
「僕・・・僕・・・」
手が震え始めて・・・次第に身体も震え始めた
僕・・・こんなことする奴だったっけ?
父「お、おおおおお前!覚悟はできてるんだろうな!!」
「お前こそ!!復讐される覚悟はできてるんだろうな!!」
僕は泣きながら叫び飛びかかろうとした
それを先輩が抱きしめ抑える
その勢いにお父さんは怯えた顔をして後ずさりした
校長「糸色くん・・・落ち着いて・・・」
「今すぐ出ていけ!!そして二度と僕の前に現れるな!!!今度現れたらこれで傷だらけにしてやる!!」
とボールペンをお父さんの顔目掛けて投げた
そして校長先生が両親を連れて寮を出て行った
「いいか!!二度とその面を見せるな!!!」
獅子丸「陽翔!!」
と強く抱きしめてくる
「うぅ・・・」
僕は先輩にしがみ付いて泣いた
怖かった・・・
自分の中にあの親と同じ遺伝子が眠っていることが・・・
人を平気で傷つけそれを楽しむ自分が・・・
「先輩・・・」
獅子丸「陽翔・・・」
「僕・・・怖いです・・・自分が・・・この遺伝子が・・・」
獅子丸「・・・休もう。疲れてるんだ」
そういい僕を抱えて部屋に来た
そして僕はベッドに寝かせられた
先輩も添い寝をしてくれた
抱きしめて添い寝してくれた
「先輩・・・」
獅子丸「陽翔・・・」
泣きながら何度も先輩を呼んだ
先輩はそれに何度も答えてくれた
頭を撫でて答えてくれた
「うぅ・・・」
獅子丸「よしよし・・・」
「僕・・・自分が怖い・・・平気で人を傷つけることができる・・・自分が・・・怖いよ・・・」
獅子丸「お前は平気で人を傷つける子じゃない」
「そんなわけない!!僕は・・・お父さんを叩いてる時・・・凄く楽しかった・・・凄く気持ちよかった・・・勝てると知って・・・嬉しかった・・・」
獅子丸「・・・」
「僕はあの人たちの子なんだ・・・負の遺伝子を受け継いじゃってるんだ・・・」
獅子丸「・・・」
「だから・・・僕・・・」
獅子丸「もういい・・・話すな・・・」
「うぅ・・・」
獅子丸「お前は簡単に人を傷つけない。お前は楽しんで人を傷つけない。それは俺が一番知ってる」
「うぅ・・・」
獅子丸「だから気にするな。お前はそんなことをする奴じゃないんだ。だから心配するな。な?」
「うぅ・・・う・・・」
僕は・・・先輩のこの優しさが・・・辛かった
こんな優しい人をいつか傷つけてしまうんじゃないのか・・・
その時、僕は楽しんでしまうんじゃないのか・・・
「・・・」
僕はしばらく泣いてそのまま眠ってしまった・・・
~校長視点~
「・・・もう来ないでくれ」
糸色父・母「・・・」
「・・・」
私は机に封筒を置いた
「もうこれが最後だ。次、糸色君に接近したりしたら法的に訴えることも視野に入れる」
糸色父「・・・」
「・・・」
糸色くんに叩かれたこと・・・復讐を宣言されたことが相当堪えたのか・・・
彼からは最初の勢いを感じない
それどころか・・・少し・・・老けた・・・気がする・・・
「・・・さぁ、帰ってくれ。そしてもう来るな。いいな?」
糸色父「あ、ああ・・・」
と封筒を持たずに二人は帰って行った
「・・・相当ダメージがあったのだろうな・・・」
確かに・・・糸色くんの行動には驚いたし・・・怖くも感じた
暴力を楽しんでいる・・・
そう見えた
「・・・はぁ・・・」
今後糸色くんはどうするんだろう・・・
暴力を嫌がってるのに暴力を楽しんでしまった・・・
「糸色くん・・・」
私は窓から外を見て囁いた
その時業者の方が来た
私は寮に業者の方を送った
~熊下視点~
「・・・」
犬橋「・・・」
兄「・・・」
沈黙が続く・・・
「・・・」
あんな糸色は初めて見た
正直・・・怖かった・・・
それで止めることができなかった
きっとみんなもそうだろう
獅子丸先輩が止めなかったら・・・きっと・・・
そう考えると・・・ゾッとする・・・
犬橋「俺・・・糸色を初めて怖いと感じた・・・あんな糸色・・・初めてだよ・・・」
「ああ・・・俺も・・・怖かった・・・」
兄「ああ・・・」
やっぱりみんな同じだった
犬橋「今後、どう接すればいいんだろう・・・」
兄「いつも通りでいいだろう」
犬橋「いつも通り・・・できる自信がない・・・」
「・・・俺も・・・きっと怖くて・・・話しかけられないかも・・・」
兄「お前まで・・・」
「兄ちゃんもだろう?」
兄「・・・」
兄ちゃんは何も言わなかった
「・・・」
犬橋「どうしたらいいんだ・・・」
「・・・」
獅子丸「いつも通りに接してやってくれ」
「「「!?」」」
獅子丸先輩が階段から降りてきたところだった
獅子丸「怖いのはわかる。本人も怖がってる」
「糸色が?」
獅子丸「ああ。自分に受け継がれてる負の遺伝子を怖がってる」
犬橋「負の・・・遺伝子・・・」
獅子丸「ああ」
兄「糸色は?」
獅子丸「今は眠ってる。きっと疲れたんだろう」
兄「そうか」
「・・・」
糸色自身が怖がってるのか
それはそうか・・・
あんなに優しい糸色が暴力を楽しむわけがない
「・・・俺は・・・できる限りいつも通りに接することにする」
兄「俺も」
犬橋「・・・俺も・・・できるだけ・・・そうします・・・」
獅子丸「すまないな」
その時、校長先生が業者さんを連れて寮に来た
校長「いまから作業に入ってもらうからね!すまないね・・・もう少し我慢してくださいね!」
「あの・・・糸色のご両親は?」
校長「お帰りになったよ・・・かなり堪えたみたいだった・・・」
獅子丸「そうですか・・・」
校長「糸色くんは?」
獅子丸「寝てます」
校長「そうですか・・・」
獅子丸「・・・校長先生は・・・昔、陽翔の親となにが?」
校長「・・・すまないけど、それは今は言えない・・・」
獅子丸「・・・そうですか・・・」
そういうと先輩は二階に向かって行った
「「「・・・」」」
しばらくの無言が続いた
ドタン!バタン!
二階が少し騒がしくなったと思ったら獅子丸先輩が慌てて下りてきた
獅子丸「陽翔がいない!!」
「「「!?」」」
獅子丸「荷物もなくなってる!」
兄「探そう!」
「ああ!手分けして探そう!」
犬橋「匂いをたどれば・・・探せるはず・・・」
校長「私はここに留まります」
そうして俺たちは糸色を探しに外に飛び出した・・・
バシンッ!
僕はお父さんを何度も叩いた
バシンッ!バシンッ!バシンッ!
父「お、おまっ・・・やめ・・・」
あれ・・・?
バシンッ!バシンッ!バシンッ!
父「いっ!・・・や・・・やめろ・・・」
僕・・・勝てる・・・?
叩くにつれてなんでこいつらにビクビクしてたのかわからなくなってきた
僕も本気を出せば勝てる
それがわかった瞬間、心の底から父親の存在が変わった
今まで怖い存在で、手なんか出したら殺されるかもしれないと・・・
そんな存在だったのに、今、目の前で僕が叩いている人物はそんな怖い存在には見えなかった
弱った生き物にしか見えない
「フ・・・ハハハw」
僕は笑いながら叩いていた
楽しい・・・とても楽しい!!
父親に復讐とかそんなことは考えたこともなかった
でも、今はこの復讐がとても楽しい!
「先輩が雑魚?wお前が雑魚じゃんw」
母「あんた!親に向かってっ!?」
バシンッ!
「僕に逆らうの?」
そういい何度も叩いた
母「やめ・・・」
「僕が何度も言ったよね?『やめて!』って?でも、あんたたちはやめなかったよね?wそれどころか僕の背中に傷を残したよね?w」
そういいお父さんの服を破った
父「!?」
そして近くのテーブルに置いてあるボールペンを握り締めた
「これで・・・同じことしていい?wてか・・・したい!w」
そういいボールペンを振り下ろした
「!?」
その手を誰かに止められた
僕はその相手をみた
それは先輩だった
獅子丸「もういい・・・やめろ・・・」
「先輩?なんで止めるんですか?」
獅子丸「・・・」
先輩は無言で抱きしめてきた
「先輩?」
獅子丸「もういいんだ・・・もう・・・」
「う・・・うぅ・・・」
涙が出てきた
そして我に返った
「僕・・・僕・・・」
手が震え始めて・・・次第に身体も震え始めた
僕・・・こんなことする奴だったっけ?
父「お、おおおおお前!覚悟はできてるんだろうな!!」
「お前こそ!!復讐される覚悟はできてるんだろうな!!」
僕は泣きながら叫び飛びかかろうとした
それを先輩が抱きしめ抑える
その勢いにお父さんは怯えた顔をして後ずさりした
校長「糸色くん・・・落ち着いて・・・」
「今すぐ出ていけ!!そして二度と僕の前に現れるな!!!今度現れたらこれで傷だらけにしてやる!!」
とボールペンをお父さんの顔目掛けて投げた
そして校長先生が両親を連れて寮を出て行った
「いいか!!二度とその面を見せるな!!!」
獅子丸「陽翔!!」
と強く抱きしめてくる
「うぅ・・・」
僕は先輩にしがみ付いて泣いた
怖かった・・・
自分の中にあの親と同じ遺伝子が眠っていることが・・・
人を平気で傷つけそれを楽しむ自分が・・・
「先輩・・・」
獅子丸「陽翔・・・」
「僕・・・怖いです・・・自分が・・・この遺伝子が・・・」
獅子丸「・・・休もう。疲れてるんだ」
そういい僕を抱えて部屋に来た
そして僕はベッドに寝かせられた
先輩も添い寝をしてくれた
抱きしめて添い寝してくれた
「先輩・・・」
獅子丸「陽翔・・・」
泣きながら何度も先輩を呼んだ
先輩はそれに何度も答えてくれた
頭を撫でて答えてくれた
「うぅ・・・」
獅子丸「よしよし・・・」
「僕・・・自分が怖い・・・平気で人を傷つけることができる・・・自分が・・・怖いよ・・・」
獅子丸「お前は平気で人を傷つける子じゃない」
「そんなわけない!!僕は・・・お父さんを叩いてる時・・・凄く楽しかった・・・凄く気持ちよかった・・・勝てると知って・・・嬉しかった・・・」
獅子丸「・・・」
「僕はあの人たちの子なんだ・・・負の遺伝子を受け継いじゃってるんだ・・・」
獅子丸「・・・」
「だから・・・僕・・・」
獅子丸「もういい・・・話すな・・・」
「うぅ・・・」
獅子丸「お前は簡単に人を傷つけない。お前は楽しんで人を傷つけない。それは俺が一番知ってる」
「うぅ・・・」
獅子丸「だから気にするな。お前はそんなことをする奴じゃないんだ。だから心配するな。な?」
「うぅ・・・う・・・」
僕は・・・先輩のこの優しさが・・・辛かった
こんな優しい人をいつか傷つけてしまうんじゃないのか・・・
その時、僕は楽しんでしまうんじゃないのか・・・
「・・・」
僕はしばらく泣いてそのまま眠ってしまった・・・
~校長視点~
「・・・もう来ないでくれ」
糸色父・母「・・・」
「・・・」
私は机に封筒を置いた
「もうこれが最後だ。次、糸色君に接近したりしたら法的に訴えることも視野に入れる」
糸色父「・・・」
「・・・」
糸色くんに叩かれたこと・・・復讐を宣言されたことが相当堪えたのか・・・
彼からは最初の勢いを感じない
それどころか・・・少し・・・老けた・・・気がする・・・
「・・・さぁ、帰ってくれ。そしてもう来るな。いいな?」
糸色父「あ、ああ・・・」
と封筒を持たずに二人は帰って行った
「・・・相当ダメージがあったのだろうな・・・」
確かに・・・糸色くんの行動には驚いたし・・・怖くも感じた
暴力を楽しんでいる・・・
そう見えた
「・・・はぁ・・・」
今後糸色くんはどうするんだろう・・・
暴力を嫌がってるのに暴力を楽しんでしまった・・・
「糸色くん・・・」
私は窓から外を見て囁いた
その時業者の方が来た
私は寮に業者の方を送った
~熊下視点~
「・・・」
犬橋「・・・」
兄「・・・」
沈黙が続く・・・
「・・・」
あんな糸色は初めて見た
正直・・・怖かった・・・
それで止めることができなかった
きっとみんなもそうだろう
獅子丸先輩が止めなかったら・・・きっと・・・
そう考えると・・・ゾッとする・・・
犬橋「俺・・・糸色を初めて怖いと感じた・・・あんな糸色・・・初めてだよ・・・」
「ああ・・・俺も・・・怖かった・・・」
兄「ああ・・・」
やっぱりみんな同じだった
犬橋「今後、どう接すればいいんだろう・・・」
兄「いつも通りでいいだろう」
犬橋「いつも通り・・・できる自信がない・・・」
「・・・俺も・・・きっと怖くて・・・話しかけられないかも・・・」
兄「お前まで・・・」
「兄ちゃんもだろう?」
兄「・・・」
兄ちゃんは何も言わなかった
「・・・」
犬橋「どうしたらいいんだ・・・」
「・・・」
獅子丸「いつも通りに接してやってくれ」
「「「!?」」」
獅子丸先輩が階段から降りてきたところだった
獅子丸「怖いのはわかる。本人も怖がってる」
「糸色が?」
獅子丸「ああ。自分に受け継がれてる負の遺伝子を怖がってる」
犬橋「負の・・・遺伝子・・・」
獅子丸「ああ」
兄「糸色は?」
獅子丸「今は眠ってる。きっと疲れたんだろう」
兄「そうか」
「・・・」
糸色自身が怖がってるのか
それはそうか・・・
あんなに優しい糸色が暴力を楽しむわけがない
「・・・俺は・・・できる限りいつも通りに接することにする」
兄「俺も」
犬橋「・・・俺も・・・できるだけ・・・そうします・・・」
獅子丸「すまないな」
その時、校長先生が業者さんを連れて寮に来た
校長「いまから作業に入ってもらうからね!すまないね・・・もう少し我慢してくださいね!」
「あの・・・糸色のご両親は?」
校長「お帰りになったよ・・・かなり堪えたみたいだった・・・」
獅子丸「そうですか・・・」
校長「糸色くんは?」
獅子丸「寝てます」
校長「そうですか・・・」
獅子丸「・・・校長先生は・・・昔、陽翔の親となにが?」
校長「・・・すまないけど、それは今は言えない・・・」
獅子丸「・・・そうですか・・・」
そういうと先輩は二階に向かって行った
「「「・・・」」」
しばらくの無言が続いた
ドタン!バタン!
二階が少し騒がしくなったと思ったら獅子丸先輩が慌てて下りてきた
獅子丸「陽翔がいない!!」
「「「!?」」」
獅子丸「荷物もなくなってる!」
兄「探そう!」
「ああ!手分けして探そう!」
犬橋「匂いをたどれば・・・探せるはず・・・」
校長「私はここに留まります」
そうして俺たちは糸色を探しに外に飛び出した・・・
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