異世界の恋

ジャム

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不測の事態

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あれから4か月後・・・
ひどい吐き気で目を覚ました遥斗
視界がグルグル回っていた

「うっ・・・」

遥斗はベッドから起き急いでトイレに駆け込んだ

「うっ・・・おぇ・・・」

獅子丸「大丈夫か?」

一緒に寝ていた獅子丸が心配そうに声をかけてきた

「だ、大丈夫・・・風邪かな?」

獅子丸「最近、訓練とかしてるからな。疲れてるんだろう。今日はゆっくり休め」

「うん・・・」

獅子丸「狼原には連絡しとく。薬買いに行ってくるから無理するなよ」

そういうと獅子丸は身支度をして家を出た

「うっ・・・」

吐き気は収まらず、悪化していく気がした

「気持ち悪い・・・」

しばらくして獅子丸と狼原が帰ってきた

「おかえり・・・あ、狼原さん・・・」

獅子丸「ただいま」

狼原「おじゃまします!遥斗くん具合悪いんだって?大丈夫?」

「はい・・・いえ、ちょっと悪化してる気がします」

狼原はなにかを感じた
遥斗に近づき、お腹に鼻をあてた

遥斗も獅子丸もなにをやっているのかわからなかった

狼原「!!君って『オメガ』だったのかい?」

遥斗はなにを聞かれたのかわからなかった
獅子丸はそれを聞いて顔色が変わる

「あの、オメガってなんですか?」

獅子丸と狼原はお互いに顔を見合わせたあと遥斗に聞いた

狼原「人間の世界ではオスも妊娠できるのかい?」

遥斗は驚いた

「い、いえ!男は妊娠はできないです!」

獅子丸「じゃあ、変異オメガってことか?」

狼原「可能性としては・・・生理とかはなかったのかい?」

「は、はい・・・生理の症状がわからないですが」

狼原「頭痛、腹痛、腰痛、貧血などがあるが」

「吐き気なら現在あります。それ以外はないです」

狼原「症状が変異オメガと同じか・・・これは間違いないな」

獅子丸「・・・」

「あ、あの、詳しく教えてください」

狼原は説明した

狼原「この世界には『オメガ個体』というオスでも妊娠ができる特殊な個体がいるんだ。だが、ごく稀に『変異オメガ』と言われる個体が現れることがある」

「???」

狼原「通常のオメガ個体は生まれながらに妊娠が可能の個体。だが、変異オメガは突然妊娠できるようになるんだ。原因はいまだに不明だが」

「じゃあ、僕は変異オメガなんですか?」

狼原「たぶん、でも、人間にそんなことがおこるのか?」

獅子丸「向こうの世界ではそういうことはないのか?」

「ない・・・僕が知るかぎりは・・・」

狼原「だとしたら、まずいな・・・」

獅子丸「ああ・・・」

「そうなんですか?」

狼原「変異オメガは妊娠した時に初めて気が付くパターンが多い。そして、出産準備のための生理もない。」

「・・・」

狼原「つまり、出産するとなると、最悪の場合・・・死ぬ」

「!!」

それを聞いたからなのかはわからないが
遥斗はめまいがしてその場に倒れてしまった

獅子丸「遥斗!!」

狼原「!!!」

気が付いたら寝室のベッドだった
枕の隣にはバケツとスポーツドリンクがおいてあった
ドリンクを少しのみリビングに遥斗はむかった
リビングからは二人の話し声が聞こえてきた

狼原「どうするつもりだ」

獅子丸「・・・」

狼原「産ませるのか、産ませないのか」

「・・・」

狼原「堕ろさせるなら早いほうがいい。手配ならこちらでする」

獅子丸「遥斗の希望も聞かないと」

狼原「確かに遥斗くんの希望も聞かないといけないが、このまま産ませてどうする?」

獅子丸「・・・」

狼原「もしかしたら、帝王切開で出産は大丈夫だとしても、人間の体の構造がわからない以上、100パーセントの保証はない。最悪、遥斗くんは死ぬ・・・」

獅子丸「!!!」

狼原「そうなったら、お前は一人で子供を育てることになる・・・お前にそれができるのか?」

獅子丸「・・・」

狼原「遥斗くんは人間だ・・・子供も人間の可能性がある・・・この先苦労するってわかってる子供をお前は育てることができるのか?」

獅子丸「・・・」

狼原「私としては、産んでもらいたいという気持ちと、堕ろしてほしいという気持ちがある」

獅子丸「狼原・・・」

狼原「君と遥斗くんの子供だ。かわいいに決まってる。だが、遥斗くんの命と引き換えにしてまで産んでほしくない・・・まだ、子供に会ってないから愛着がないからこう思うのかもしれないが・・・」

獅子丸「・・・」

狼原「決めるのはお前たちだ・・・」

獅子丸「・・・わかった・・・堕ろしてもらう」

「!!!!」

獅子丸「遥斗には俺から説明する」

(え、堕ろす・・・なんで・・・いやだ・・・いやだ!!!)

遥斗は家を飛び出した
それに気づいた獅子丸と狼原は寝室を確認して遥斗がいないことを確認すると慌てて追いかけた
外は土砂降りだった・・・
周りは土砂降りでよく見えない
まるで今の遥斗の心みたいに

(なんで・・・なんで・・・堕ろすなんて・・・いやだよ・・・産みたいよ・・・)

遥斗は泣いた
走りながら泣き続けた
行く場所も目的もなく、ただ走り続けた

(なんであんなこと言うの・・・なんで・・・)

しばらく走り続けたら知らない公園に付いた

(ここどこだろう・・・まぁ外出できないから知らないのも当然か・・・)

遥斗は公園のブランコの腰を下ろした
お腹をさすりながら

(僕の思いは?この子の気持ちは?もう・・・どうしたら・・・)

そんなことを考えながら雨に打たれていた
当然遥斗の目の前に大きな影が現れた

獅子丸「遥斗!!!」

そこには獅子丸がいた

「!!!」

遥斗は動揺でブランコから落ちそうになった

獅子丸「危ない!!」

「近づかないで!!」

遥斗は獅子丸に叫んだ

「なんで!!ほっといてよ!!」

獅子丸はなにも言わずに遥斗に近づいていった

「来ないで!!!くるな!!!」

そう叫び後ずさる遥斗
それでも近づく獅子丸

獅子丸「帰ろう・・・風邪をひく」

「帰る場所なんてない!!!居場所なんて・・・」

獅子丸「・・・」

獅子丸は遥斗を抱きしめた
逃げようと暴れるが決して離さない獅子丸

「離してよ!!!」

獅子丸「すまない・・・」

獅子丸は耳元でつぶやいた

「謝ったって・・・いやだよ・・・」

獅子丸は雨から遥斗を守るように抱きしめながら話を聞いていた

「堕ろしたくない!!!産みたい!!証と子供と一緒に暮らしたいよ・・・」

獅子丸はただずっと抱きしめながら聞いていた

「証はいらないの・・・?子供・・・」

獅子丸「ごめん・・・お前の気持ちも考えずに・・・」

遥斗は泣いていた

獅子丸「俺はいままで殺し屋として生きてきた・・・お前を守ることしか考えてなかった・・・子供が産まれたら俺はその子にどんな顔で会えばいいかわからなかった・・・だから、怖くなった・・・子供に嫌われたら・・・お前たちが俺の手から離れたら・・・命をたくさん奪っておいて子供なんて・・・それを考えたら怖くて仕方なかった・・・こんな怖い思うをするなら最初からもたないほうがいいって・・・」

「・・・」

獅子丸「でも、俺は手にしてしまった。もう、手放したくなくなっちまった。お前に出会ったあの日から・・・自分の気持ちに気づいたときから・・・」

「・・・」

獅子丸「だから、俺が命を懸けて守るから家族で一緒にいよう?」

「!!それって」

獅子丸「俺とつがいになろう。そして家族になろう。」

「・・・」

獅子丸「お前たちを危険な目に合わせるかもしれない・・・それでも、俺は一緒にいたい。だから、結婚しよう」

「うん!!」

遥斗は獅子丸を強く抱きしめた
獅子丸も強く抱きしめ返した

狼原「フフ、そうなると思ってた。」

狼原は離れたところで二人を見ていた


三人は帰宅した
遥斗はお風呂の準備をし獅子丸はご飯の準備をした
お風呂にはいり、ご飯を食べて後片付けをしたあと

狼原「で、産むことにしたんだろう?」

獅子丸「ああ」

狼原「それがたとえ険しい道だったとしても?」

二人は頷いた

狼原「わかった。じゃあ、出産に関してやその他諸々はこちらで手配しよう。病院以外で産むのは不可能だ」

獅子丸「大丈夫なのか?」

狼原「ああ、自分でいうのもなんだが私はいろいろ顔が利くからね!」

獅子丸「じゃあ、頼む」

「よろしくおねがいします」

狼原「うん!遥斗くんはお腹の子のことを第一にね!」

「はい!」

狼原「じゃあ、もう遅いし遥斗くんはもう寝ないと!」

獅子丸「寝室いくぞ」

「うん」

二人はベッドに入った
いつものように獅子丸は腕枕をする

獅子丸「ベッド、大きいやつにするか。」

「え、どうしたの急に」

獅子丸「子供が産まれたら狭いだろう」

「まぁそうだね」

獅子丸「今度買いに行くか。二人で」

「いいの?」

獅子丸「バレなきゃ平気だ!」

「じゃあ、行こう!」

そんな話をしていたら遥斗は寝てしまった
泣き疲れやその他もろもろで
リビングにもどった獅子丸

獅子丸「まだいたのか」

狼原「いるの知ってるでしょ」

獅子丸「まぁな」

狼原「相談事があるんでしょ?」

獅子丸「・・・実は」

そして夜はあけるのだった・・・
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