八百屋の白熊さん

ジャム

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地元に帰ってきた

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「ふぅ・・・これで終わりかな?」

僕の両親が五日前に亡くなった
交通事故だ。
居眠り運転のトラックに突っ込まれて亡くなった
お葬式も終わらせ、僕は両親が残してくれた実家に住むことになった
このまま手放すには思い出が多すぎて嫌だった
それにここら辺の田舎では大きい方の家だから住みやすかった
駅もそれなりに近いし、スーパーも近くにある
仕事は自宅でできる「作家」だから問題ないし
時々リフォームしてたからわりと綺麗だし

虎狼「久しぶりに会えたのが葬式なんてな・・・」

「そうだね・・・」

虎狼「聞いたときは驚いたよ。本当に、なんて言っていいのか・・・」

「・・・もうおわったことだから」

この狼獣人は『安達 虎狼』(あだち ころう)僕の幼馴染で親友で虎と狼のハーフだ
僕が唯一認めた存在だ

虎狼「何年ぶりだっけ。会うの」

「え~と、虎狼の結婚式以来だから・・・5年くらいかな?」

虎狼「もうそんなか・・・」

「早いね~w」

虎狼「そうだな~。これからはこっちで暮らすんだろう?」

「うん。この家を手放すのは・・・ね」

虎狼「そうだよな。昔よくこの家で遊んだよな!かくれんぼとかさ!」

「したね~w虎狼はすぐ僕を見つけて面白くなかったw」

虎狼「お前の匂いを辿ればすぐに見つけられたからなw」

「それは卑怯だよw」

他愛もない思い出話をして

虎狼「じゃあ、俺は帰るな」

「うん。手伝ってくれてありがとう」

虎狼「いや、いいんだよ。こんな状態なのに引っ越しなんて大変だっただろう?」

「まぁね、本が多くて大変だったかな」

虎狼「まだ秘密にしてるのか?」

「うん。もう知ってるのは虎狼だけだよ」

虎狼「そうか・・・なぁ、なんで秘密にしてるんだ?」

「・・・」

虎狼「超有名作家「レムリック」先生と言ったらしらない人の方が少ないんだぞ?」

「超有名だからだよ」

虎狼「・・・学生の頃のことか?」

「まぁね」

虎狼「あれは仕方なかったことだろう・・・」

「でも、そのせいで僕は多くの友達を失った。唯一虎狼だけが側にいてくれたからね」

虎狼「でも、それとこれは別だろう?」

「そうだけど・・・デビュー作品が・・・ね」

虎狼「『オメガの宿命』か?あれいい本だと思うぞ」

「どうだろう・・・自分で書いといてなんだけどね」

虎狼「オメガに生まれたことで苦しんで、でも、運命の出会いをして幸せになるって内容。今もよく読んでるよ」

「ありがとう」

虎狼「まぁ、生活できてるならいいけどな」

そういうと虎狼は帰って行った
僕はダンボールを開け『オメガの宿命』を手にとる
この本はオメガの苦悩を書いた本。
僕が経験したことを書いた本。
まぁ、運命の出会いはしてないけどね
虎狼から運命の話を当時聞いたからそれを取り入れただけ

「・・・願望・・・だったのかもな~」

中学生のころ、僕がオメガ特有の発情期になったときクラスのオスたちに襲われた
休み時間で先生はいなかった
それ以来学校に行くのが怖くなっていかなかった
高校も通信制の高校にした
その時なんとなく書いた本。
それがこの本。
ただの気まぐれ、ただの愚痴、そんな感じだった
それを虎狼が出版を進めて来て試しにやってみたらこれがベストセラーになった
それから僕は家でできる作家の道を選んだ
誰とも会うこともなく家で一人でできる仕事
これなら発情しても誰にも迷惑をかけることもなくいられる
作家になってから僕は逃げるように地元を離れた
虎狼は悲しんでいたが連絡はずっと取りあっていた

「・・・考えるのはやめよう。後片付けがまだ残ってる。夕飯も用意しないといけないし」

その時

ピンポーン

インターホンがなった

「夕方のこの時間に誰だろう?」

僕は不思議に思いインターホンにでた

「はい」

モニターには帽子を深く被った人物が写っていた

???「八百屋シロクマです。お届けに来ました」

ん?お届け?なにか頼んでたっけ?
僕は玄関を開けて門に向かった

「あの、なにか頼みましたっけ?」

???「!?」

「!?」

そこには白熊獣人が立っていた
僕はこの時「運命」を理解した
虎狼が言っていた
『運命の相手に会うとすぐわかる。心が気づく』と
僕は頭より先に心が気づくなんてって思ったけど、理解した
これがそうなんだと

「あ、あの、荷物・・・」

白熊「え、あ、すみません。これお届けです」

「えっと・・・すみません。頼んだ覚えがなくて・・・」

白熊「九十九さんに毎週お届けしているんですが・・・」

「あ、僕の親にですか?」

白熊「え、あ、たぶん・・・」

「すみません。両親、亡くなったんです・・・」

白熊「え!?」

「五日前に、事故で・・・」

白熊「そうだったんですね・・・すみませんでした」

と頭を下げる白熊

「いえ!こちらこそお伝えしてなくてすみません・・・」

白熊「・・・」

「・・・」

白熊「では、帰ります」

「その荷物はどうするんですか?」

白熊「こちらで処分しますので」

「・・・ちょっと待っててください」

そういい僕はお財布を持ってきた

「料金はいくらですか?」

白熊「え、いえ、無理に買わなくても」

「いえ、ちょうど買い物に行こうと思ってたので」

そういい僕は料金を払って荷物を受け取った

「うわっ!重っ!」

白熊「運びますね」

そういうと白熊は荷物を玄関まで運んでくれた

「ありがとうございます」

白熊「いえ、いつも運んでますので」

「では」と言い帰ろうとする白熊

「あの・・・」

白熊「は、はい。な、なんでしょう・・・」

「こ、これからもよかったら配達お願いできませんか?」

白熊「構いませんが、お時間とか大丈夫ですか?毎週この時間になってしまいますが・・・」

「はい。在宅ワークなので何時でも大丈夫です」

白熊「わかりました。では、今後もよろしくおねがいします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」

そういうと白熊は帰って行った
僕は家に入って

ドクン!ドクン!

鼓動が強い・・・
初めて感じた・・・
虎狼の言っていたことってこのことなんだ・・・
でも、向こうはどうなんだろう・・・
いや、違うかもしれない
たまたまだったかも
イケメンだったし・・・

「ふぅ~」

僕は深呼吸して落ち着くことにした
そして荷物を開けてみた
そこにはお野菜がたくさん入っていた

「フフフ、料理好きなお母さんらしいな」

こんなに野菜を買うのはお母さんが料理が好きだから
それも、野菜を主に使用した料理
健康的でいいと思うけどね

「さて、これで何作ろうかな・・・」

僕は夕飯を食べて執筆をしてから寝た・・・
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