山神様に捧げられました

ジャム

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本編

冬に備えて

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次の日
僕たちは冬を越すため食料を集めていた

山神「これとこれを・・・っと・・・」

「・・・イタッ!」

僕は栗の棘で指を刺してしまった

「痛い・・・」

山神「大丈夫か!?」

そういうと指を見てきた

「だ、大丈夫ですよ!これくらい!」

山神「無理しなくていいぞ?」

「大丈夫です!」

そういい栗を拾う

「イタッ!」

山神「ハハハw栗の棘は手で剥くんじゃないんだよw足でやるんだ!」

そういい山神様がお手本を見せてくれた
靴を履いてるからできることだね
僕は・・・履いてないけど・・・

山神「だから、ハルトは何もしなくていいよw」

「でも・・・仕事しないと・・・」

山神「しないと?」

「食料分けてもらえない・・・」

山神「俺が嫁に食事させないとでも思っているのか?」

そういい僕の前に屈んだ

「いえ、ただ・・・」

山神「今までの癖が抜けないのはわかる。でも、今のお前のお仕事は俺の傍にいること。それだけだ!いいね?」

「それだけで・・・いいんですか?」

山神「ああ!それもかなり重要な仕事だぞ?」

「???」

山神「俺はお前がいないと辛い。その辛さを消してくれるのはお前にしかできない仕事だ!」

「・・・わかりました」

山神「わかればよろしい!」

そういい頭を撫でて山神様は食料集めを再開した
僕は山神様の隣を歩いていた

山神「これだけじゃ足りないよな・・・」

「どうなんでしょう・・・」

山神「う~ん・・・魚はその日に取るとして・・・あと保存できそうなのは・・・」

「作物とかはないんですか?」

山神「作物?」

「はい。大根とか・・・お供え物で・・・」

山神「ん?お供え物?そんなのもらったことないぞ?」

「え、でも、毎年村長がお供え物って言って大根とかを山に捧げてましたよ?」

山神「え?そんなの知らないが・・・」

「・・・そうですか・・・」

僕・・・騙されてたんだね・・・
よくよく考えてみれば、なんで僕の作物だけなんだろうと今なら思う

村長『お主のが一番おいしいんじゃよ!』

と言ってたけど、食べたことないのになんでおいしいって知ってたんだろう・・・
今ではわかる
きっと村長が僕の育てた作物をお供えとして持って行ってたんだ・・・

「・・・」

山神「・・・お供え物って・・・お前のを?」

「・・・」

山神「そうか・・・かわいそうに・・・」

「山神様が食べてくれてると思ってたから・・・僕は文句なんて・・・なかった・・・なのに・・・うぅ・・・」

騙されていた・・・
村長の言葉を疑いもせず・・・
何年も・・・

「うぅ・・・」

山神「・・・今からは無理だろうけど・・・」

「???」

山神「春になったら畑を作ろう!」

「え・・・?」

山神「そして作物を作ってくれ!」

「・・・いいんですか?」

山神「ああ!ハルトの作った作物を食べたい!」

「わかりました!頑張って作ります!」

山神「楽しみにしてる!」

そしてしばらく森を歩きまわった
保存が効きそうな木の実や果物を集めて回った

山神「柿も干せばもつし、木の実は水につけていれば大丈夫!」

「じゃあ、もう大丈夫そうですね!」

山神「ああ!まぁ冬には別の食べ物もあるから!」

そういい僕たちは帰ることにした
帰り道の途中

山神「あ・・・雪だ・・・」

「あ、本当だ・・・」

雪が降ってきた
どおりで寒いはずだよ・・・
そして山神様が僕に上着を掛けてくれた

山神「寒いだろう?」

「でも・・・山神様が・・・」

山神「俺はまだ平気だ!お前はその白装束しかないわけだし、破れてるし・・・」

僕はほぼ上半身が裸のような感じになっている

「ありがとうございます・・・とても暖かいです・・・」

山神「いいんだ!もっと準備をしておけばよかったな・・・」

炎神様と話してた衣類とかの話かな?

「でも・・・僕は・・・山神様の上着で・・・うれしい・・・な・・・」

山神「ハルト・・・かわいいこと言ってくれるな!」

そういい抱きしめてくる
そして家路に向かっているときに崖を通った
そこからは夕陽がよく見えた

「きれい・・・」

山神「そうだな。この季節は特にな。空気が澄んでてきれいに見えるんだ」

僕は夕陽に手を伸ばして掴んだ

「捕まえた!」

山神「どれどれ~?」

と僕の手を覗き込んでくる
そして

ピトッ

僕は鼻キスをした

山神「!?」

「えへへw」

山神「やられたなw」

山神様の顔は夕陽に照らされて赤くなっていた

山神「さて、そろそろ帰ろう。冷えてきて風邪を引いたら大変だ!」

「はい!」

そういい僕は歩き出す
その時

ガランッ!

「え?」

僕の視界が揺れた
崖が崩れたのだ

山神「ハルト!!!」

「っ!!」

山神様は僕に手を伸ばす
僕も手を伸ばした
しかし

「!!」

僕の手は山神様の手に少しかすって届くことはなかった
そして・・・そのまま僕は身体を岩にぶつけながら落ちた・・・

山神「ハルト!!!!!」

僕の耳に届いた最後の言葉だった・・・
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