オメガ殿下と大罪人

ジャム

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家族との再会

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・・・夕刻・・・
ロト「結局夕方になっちまったか・・・」

空は真っ赤に染まっている
騎兵団長が一人になるのを待っていたらこんな時間に・・・

ロト「あいつ、一人の時間もないのかよ」

朝から鎧を奪う機会を伺っていたが、いつも誰かといる
朝も、昼も・・・

ロト「まさか・・・風呂まで誰かと・・・なんてないよな・・・」

「まさか・・・ね」

ロト「俺だってハルトと入ったことないのに・・・」

「うん・・・そうだね・・・え?」

いきなりの言葉に驚いてしまった

ロト「ん?」

「い、今それを言うのおかしくない!?」

ロト「別に思ったことを言っただけだろう?」

「だからって・・・もう・・・。ロトは一緒に入りたいの?」

ロト「まぁな。結婚したら一緒に入るつもりだ。毎日な」

「ま、毎日・・・」

ロト「今は・・・身分があるからな」

身分が違うと一緒に入ることはできないよね
食事、遊戯、入浴、睡眠
貴族と兵士とでは身分の違いで一緒にはできないこともある

ロト「まぁまだまだ先だろうがな!」

と、笑うロト
それに釣られて僕も笑う

???「随分と楽しそうだな?」

ロト「!?」

「!?」

見上げると橋から僕たちを見下ろす人物がいた

ロト「騎兵団長!?」

騎兵団長「ああ。久しいな。大罪人!!」

騎兵団長は橋から飛び降りてきた

騎兵団長「朝は見逃してやったのにまだ居たのか。そんなに死にたいということか?」

ロト「・・・お前の鎧を貰い受ける!!」

ロトは剣を構える

騎兵団長「???俺の鎧?何故欲しいんだ?」

ロト「それはお前が知る必要はない!」

そういい騎兵団長に切りかかった
それを後方にジャンプして軽々避ける騎兵団長

騎兵団長「ふん。お前に俺が殺せるはずないだろう?」

ロト「相打ちなら・・・:

騎兵団長「相打ち?ハハハ!笑わせるな!お前が俺を殺すことはできない!いや、傷つけることすらできるはずがない!」

ロトはそれを聞き後ずさりした

「ロト・・・?」

騎兵団長「ハルト殿下はご存じないと見た。なら教えてやるよ。こいつは俺の実の兄なんだよ」

騎兵団長は兜を脱いだ
そこには真っ白な毛並みの熊獣人がいた
どことなくロトに似てる・・・かな

トト「俺の名前は”トト・ブルルク”大罪人の兄弟として生きてきた存在だよ」

ロト「トト・・・」

トト「俺の名前を呼ぶな!大罪人!!お前のせいで・・・父さんも母さんも・・・」

ロト「!?親父とおふくろになにかあったのか!?」

トト「・・・いいだろう。教えてやるよ!お前が暗殺任務を失敗して囚われた時から俺たち家族は”大罪人の家族”として疎まれ嫌われた。父さんは兄さんの代わりに労働をさせられ・・・死んだ。母さんは必死に俺を育ててくれた。でも、大罪人の家族と言うだけで食べ物すら売ってもらえない・・・。俺たちは毎日食事すら満足にありつけなかった・・・」

ロト「・・・」

トト「そして・・・母さんは・・・惨めにいたぶられて死んだ」

ロト「どういう・・・ことだ?」

トト「・・・俺が成人する少し前だ。食べ物を買いに出たきり帰って来なかった。心配になって探しに行ったら・・・大広場の真ん中で母さんを見つけた。見るも無残な姿でな」

ロト「!?」

「!?」

トト「母さんは兵士に殴られ蹴られ・・・死んだ。だた買い物をしに大広場を通っただけなのに」

ロト「そうだったのか・・・」

トト「周りの奴らは誰も助けやしなかった。ただ見ているだけ。女、子供、老人、兵士・・・。全員見て見ぬふり・・・だから、俺は誓ったんだ。兵士になってこいつらより上になってやるって。そして復習してやるって」

ロト「だが、それと俺が大罪人になった理由は・・・」

トト「関係ないとでも言うつもりか!!お前が任務に失敗せず、戻ってきていれば俺も母さんも父さんも苦しまなくて済んだんだ!!!」

ロト「そ、それは・・・」

トト「そんなお前が今は敵国の皇太子の付き人だと!?ふざけるな!!テメェだけ幸せになってんじゃねぇよ!!」

ロト「トト・・・」

トト「呼ぶな!!お前に名前を呼ばれたくない!!それに、今はそのガキと恋仲なんだろう!!ふざけやがって・・・なに幸せになってるんだよ・・・ふざけるな・・・」

トトから怒りを感じる
強烈な怒りを・・・

トト「やっとこの地位まで上り詰めたんだ。やっと見下してきた奴らを超えたのに・・・お前だけには・・・ロト!!お前だけは超えられない!なぜだ!!」

ロト「・・・」

トト「あのまま処刑されればよかったんだ!俺の目の前でなぜ死ななかった!!」

ロト「・・・あの場に・・・居たのか?」

トト「ああ!お前が処刑されると知ってな!だが・・・お前は生き延びた。お優しくて誇り高いハルト殿下によってな。よかったな?ゴミみたいな命をお情けで拾ってもらえて」

その言葉を聞き僕は怒りを覚えた

「ロトの命はゴミではありません」

トト「・・・」

「ロトはお情けで生きてるわけではありません。僕が傍に居てほしいから助けたんです」

トト「だまれ」

「ロトは立派な兵士です。どんなに酷い目にあおうと我慢して、どんな時でも僕を助けてくれた。立派なレムリック王国兵です!」

トト「黙れ!!!」

トトはナイフを僕に投げてきた
それをロトが剣で防いだ

トト「飼い犬に成り下がったゴミみたいな奴が立派な兵士だと?さすがお優しい世間知らずのガキ殿下の言うことは違うな!」

ロト「おい。テメェ、今なんつった?」

トト「あぁ?」

ロトの雰囲気がいきなり変わった
今まで怒ったところを見たことはあったけど、今のロトは・・・すごく怖い
目つきはもう獣そのものだった

ロト「俺の事をどう言おうが俺の問題だから我慢もするし受け入れる。だが、俺の愛するハルトにそこまで言うのは許せねぇ」

トト「大罪人風情が何ってるんだ?笑わせるなよ?」

ロト「大罪人ロト・ブルルクはとっくに死んでる。俺はレムリック王国次期王位継承者ハルト・レムリックの護衛兵ロト・ブルルクだ」

トト「ふん!そんな意味のない肩書をいくら並べたところで変わりはしないんだよ!お前は大罪人に過ぎない!」

「ロトは大罪人じゃありません!僕の護衛兵です!」

トト「うるせぇな。勝手にごっこ遊びでもしてろよ。そもそも俺とこいつ、家族の問題に部外者が口を出すな!」

ロト「その部外者を巻き込んだのはお前だろう!」

トト「うっっっっわ。兄さん怖いな~。弟にそんな怒るなよな~」

ロト「兄弟喧嘩が望みなら叶えてやってもいいんだぞ?」

トト「望むところだ!俺の勝ちは確定だけどな!!」

そういいトトは指を鳴らした

ロト「!?お前!卑怯だぞ!!」

トトの合図で僕たちの周りを騎兵団が囲った

トト「使える物は使う。こいつらは俺の道具だ。道具をどう使おうが俺の自由だろう?」

ロト「・・・お前。人をなんだと・・・」

トト「こいつらも俺たち家族を散々痛めつけてきた奴らだよ。使えるから生かしてるだけ。使えないなら捨てるだけだ。おい!テメェら!殺されたくなかったらこいつらを始末しろ!」

騎兵団「で、ですが、王は『もし生きているなら生きたまま連れてこい』と・・・グハッ!」

トトは話している騎兵団を大剣で切りつけた

トト「”生きているなら”だろう?死んでいようと殺してからであろうと”死んだ”ことには変わらないんだよ!使えねぇな・・・お前はここで終わりだ」

そういい騎兵団の首をはねた

「!!なんてことを・・・」

ロト「お前・・・正気じゃないな」

トト「それはこいつらだろう?大罪人の家族と言うだけでいたぶり殺すんだからな~?」

騎兵団たちは震えていた

トト「返事しろ!!」

騎兵団たち「はい!その通りです!!」

トト「ほらな?自分たちでちゃんと認めてるんだよ。自分の立場をな!」

「・・・恐怖政治」

トト「ん?」

「恐怖で縛ってもいつか返ってきます。そんなの間違ってます!」

トト「はぁ・・・お前はまだガキだからわからないだろうがな、世界はお前が思っているほどきれいじゃないんだよ。光があれば影があるのと同じ。まさか影なんてないと思ってるのか?」

「・・・」

トト「俺はこの地位になるまでもいたぶられ続けた。飯すらもらえなかったこともあったんだぜ?でも、俺は諦めなかった。いつか復讐してやるって思ってたからな。どこかの大罪人と違ってな?」

ロト「・・・」

トト「報告は聞いてるぜ。飯を具のないスープと固いパンだけにされてたんだってな?で、それをそこのお優しい殿下に助けてもらったんだよな?お情けで。自分なんとかしようともしないで助けてもらって・・・羨ましいよ」

ロト「俺は大罪人だ。だからあの仕打ちは当然だと思い受け入れた。だが、世界で一番お優しい方に救われた。こんな俺に涙を流してくれた。こんな俺を大切な存在として傍に置いてくれてる。だから、俺は守る。自分の命を捨ててでも守る。その人が王になって国を導くその日まで。俺は傍に居る。これが俺の償いであり希望だから」

トト「・・・チッ!大罪人の分際で調子に乗るな」

ロト「何度も言わせるな!俺はレムリック王国王位継承者ハルト・レムリックの護衛兵だ!」

そう叫ぶとロトは剣を構えトトに飛びかかった
トトは大剣で攻撃を防いだ

トト「なら!どっちが正しいか決着をつけてやるよ!!」

そういい二人は橋を飛び越えどこかへ行ってしまった

「ロト!!殺すな!!」

僕はわかる
トトには迷いがある
心に小さな迷いが
それがなにかはわからない

騎兵団「ど、どうするよ?」

騎兵団「ハルト殿下を拘束するか?」

騎兵団「馬鹿野郎!殺せと言われただろう!」

騎兵団「でも、王が・・・」

騎兵団「王より団長優先だ!殺されたくねぇだろう!!」

騎兵団たちが武器を僕に向ける

「・・・」

騎兵団「すまねぇな。これも命令だからな」

彼らは納得がいかないらしい
なら説得ができるかもしれない
そう思い説得をしてみることにした・・・
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