オートマーズ

小森 輝

文字の大きさ
31 / 72
5章 火星探査部への入部

31

しおりを挟む
 父からの反対というアクシデントはありましたが、無事、保護者からの許可も貰えた私は、週末、学校へと通う最後の日、金曜日に火星探査部の部室へと来ました。
「こんにちは!」
「こんにちは、緋色さん。聞きましたよ。入部してくれるんですね」
 放課後になって急いで来たつもりでしたが、部室には、すでに大葉部長と彦君がいました。
「あぁ、羽金か。ちゃんと入部届は持ってきたか?」
「ちゃんと持ってきてるもん。ほら」
 いつのまにか呼び捨てにされていますが、別に気にはしません。そんなことよりも、入部届を忘れたのではないのかと思われている方が不本意です。なので、私はちゃんと持ってきた入部届を机に叩きつけます。
「それにしても、結構、急だよね。お父さんに反対されて困ったよ」
「そうなんですか? 大丈夫なんですか?」
 不覚にも大葉部長を不安にさせてしまいました。
「大丈夫ですよ。元々、兄がそっち系だし。すぐに許可も貰えたんで」
「それなら、いいんんですけど……。大事なことなので、ちゃんと話し合って決めてくださいね」
「でも、先生に今日提出だって言われたんですよね。どうせなら、土日挟んで月曜日にしたらよかったのに……」
 むしろ、土日を挟んでいたら、父の反対意見が強くなっていたかもしれません。
「火星探査は授業がない土日がメインだからな。それに間に合わせたかったんじゃないか?」
「急ぎの用事でもあったのかな……。私がいないと達成できないミッションがあるとか?」
「どんなミッションだよ。俺でもそんなミッション思いつかないぞ。適正があるからって、あんまり調子に乗るなよ」
「別に、調子に乗ってなんかないし。ちょっと冗談言っただけだもん」
 彦君はレディの扱いがなっていないし、冗談もなかなか通じません。大葉部長を狙っているのなら、もっと乙女心というものを学んでほしいものです。
 とは言え、なぜこんなにも入部を急がせたのかは疑問が残ります。
「もしかして、結果を出すのを急かされているとか? まさか、実は廃部の危機とか?」
「そんな、まさかぁ……」
 そう呆れた彦君でしたが、私の言葉に心当たりがあったのか、急に焦り出しました。
「そんなことないですよね、部長!」
 慌てて聞く彦君ですが、大葉部長に動揺などはありません。
「大丈夫ですよ。アンテナも最近になって新調してますし、予算を使っているので、すぐに廃部と言うことはありませんよ。それに、城山先生は隠し事をすると顔に出ますから、何かあればすぐに分かりますよ」
「そうなんですね。それじゃあ、安心だ」
 安堵している彦君ですが、それは大葉部長が嘘を付いていないのが前提の話です。確かに、城山先生は顔に出るタイプでしょうが、私の見立てでは大葉部長は隠し事があっても顔には出さないタイプだと予想しています。恋は盲目と言いますが、彦君は大葉部長が嘘を言っているなんて少しも疑っていないのでしょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

再会した幼馴染は××オタクになっていました。

星空永遠
恋愛
小さい頃から幼なじみの黒炎(こくえん)くんのことが好きな朱里(あかり)。そんな彼は引っ越してしまい、気持ちは伝えられず。しかし、高校で再会することができ、それを喜ぶ朱里だったが、彼は以前とは変わっていて……。 だけど、黒炎くんのお家にお泊りしたり、遊園地では朱里にとっては驚くハプニングが!?二人の距離はどんどん近づいて……。イケメンの幼なじみにドキドキが止まらない!じれったい二人の恋の行方は……? この恋は本気なんです……! 表紙絵=友人作。

処理中です...