オートマーズ

小森 輝

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7章 牙をむく火星の大地

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「やばいやばいやばいやばい! やばいって! どうするよ!」
 軽いパニックを起こしているマリさんですが、大葉部長に焦った様子はありません。
「走って逃げるのか、それともここに止まるのか、どっちにするんだよ!」
 大葉部長はすぐには結論を出さず、じっくりと竜巻を観察してから指示を出しました。
「ここでやり過ごします! 彦君はできるだけ深い穴を掘ってください!」
「……わ、分かりました!」
 彦君も恐怖で固まっていましたが、大葉部長の指示ですぐに動き出しました。
「緋色さんは、近くにその箱を固定できそうな物がないか探してください!」
「分かりました!」
 風に飛ばされそうにない岩や、ちょうどハマりそうな岩と岩の間なんかを探します。
 そんな中、マリさんは大葉部長に自信の疑問を投げかけていました。
「止まるより逃げた方が……」
「いえ。この風とあの竜巻の早さなら走っても追いつかれます」
「真っ直ぐじゃなくて横に逃げれば」
「それができれば一番ですが、この竜巻はすでに私たちの予測から外れています。どの方向に進むのか分かりません」
「……そっか」
「大丈夫ですよ。みんなで固まれば、重量は増します。そうしたら、飛ばされる可能性も低くなります。それに、仮に飛ばされても、みんな一緒なら怖くないでしょ?」
「う、うん……」
「大丈夫。私がついていますから」
 大葉部長が安心させようと笑顔を向けています。活発で少し強気なイメージだったマリさんでしたが、私たちと同じように、不安で弱虫な一人の少女でした。
 そんなマリさんの少し高い所にある頭を撫でて、大葉部長は私たちの状況を確認しました。
「鷲斗君! 穴はどうですか?」
「……だめです! すぐしたが岩になっていて……」
「分かりました。もう、他の場所を探している余裕もありませんね。緋色さん! そちらはどうですか?」
「すいません。いい場所、見つからなくて……」
「自分を責める必要はありません。だめもとで頼んだんですから」
「はい……」
 私たち1年生の行動は無駄に終わってしまいました。大葉部長に指示されたとはいえ、申し訳なさが残ります。
「全員集まって! ここでお互いに腕を組んで、風に煽られないように体をできるだけ低くして、竜巻を乗り切ります! 4人居れば、おそらく耐えられるはずです! 大丈夫、大丈夫」
 その「大丈夫」は、おそらく私たちに向けてではなく自分に言い聞かせているのでしょう。
「それじゃあ、みんな、隣と腕を組んで」
 そう言って、大葉部長はマリさんと彦君の腕を組みました。つまり、私はマリさんと彦君の腕を組むことになるのですが、残念ながら今は腕が空いていません。
「あの……私、これを持っているんで……」
 私の両手には、大事な植物が入った箱がありました。
「それは……真ん中に置きましょう。それを囲ってしゃがめばこれも飛ばされずに済みます」
「分かりました!」
 安易に捨てろだなんて言われなくて、内心、安心しました。
 そんな私の気持ちを彦君は気づいていたのでしょうか。
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