45 / 72
7章 牙をむく火星の大地
45
しおりを挟む
「やばいやばいやばいやばい! やばいって! どうするよ!」
軽いパニックを起こしているマリさんですが、大葉部長に焦った様子はありません。
「走って逃げるのか、それともここに止まるのか、どっちにするんだよ!」
大葉部長はすぐには結論を出さず、じっくりと竜巻を観察してから指示を出しました。
「ここでやり過ごします! 彦君はできるだけ深い穴を掘ってください!」
「……わ、分かりました!」
彦君も恐怖で固まっていましたが、大葉部長の指示ですぐに動き出しました。
「緋色さんは、近くにその箱を固定できそうな物がないか探してください!」
「分かりました!」
風に飛ばされそうにない岩や、ちょうどハマりそうな岩と岩の間なんかを探します。
そんな中、マリさんは大葉部長に自信の疑問を投げかけていました。
「止まるより逃げた方が……」
「いえ。この風とあの竜巻の早さなら走っても追いつかれます」
「真っ直ぐじゃなくて横に逃げれば」
「それができれば一番ですが、この竜巻はすでに私たちの予測から外れています。どの方向に進むのか分かりません」
「……そっか」
「大丈夫ですよ。みんなで固まれば、重量は増します。そうしたら、飛ばされる可能性も低くなります。それに、仮に飛ばされても、みんな一緒なら怖くないでしょ?」
「う、うん……」
「大丈夫。私がついていますから」
大葉部長が安心させようと笑顔を向けています。活発で少し強気なイメージだったマリさんでしたが、私たちと同じように、不安で弱虫な一人の少女でした。
そんなマリさんの少し高い所にある頭を撫でて、大葉部長は私たちの状況を確認しました。
「鷲斗君! 穴はどうですか?」
「……だめです! すぐしたが岩になっていて……」
「分かりました。もう、他の場所を探している余裕もありませんね。緋色さん! そちらはどうですか?」
「すいません。いい場所、見つからなくて……」
「自分を責める必要はありません。だめもとで頼んだんですから」
「はい……」
私たち1年生の行動は無駄に終わってしまいました。大葉部長に指示されたとはいえ、申し訳なさが残ります。
「全員集まって! ここでお互いに腕を組んで、風に煽られないように体をできるだけ低くして、竜巻を乗り切ります! 4人居れば、おそらく耐えられるはずです! 大丈夫、大丈夫」
その「大丈夫」は、おそらく私たちに向けてではなく自分に言い聞かせているのでしょう。
「それじゃあ、みんな、隣と腕を組んで」
そう言って、大葉部長はマリさんと彦君の腕を組みました。つまり、私はマリさんと彦君の腕を組むことになるのですが、残念ながら今は腕が空いていません。
「あの……私、これを持っているんで……」
私の両手には、大事な植物が入った箱がありました。
「それは……真ん中に置きましょう。それを囲ってしゃがめばこれも飛ばされずに済みます」
「分かりました!」
安易に捨てろだなんて言われなくて、内心、安心しました。
そんな私の気持ちを彦君は気づいていたのでしょうか。
軽いパニックを起こしているマリさんですが、大葉部長に焦った様子はありません。
「走って逃げるのか、それともここに止まるのか、どっちにするんだよ!」
大葉部長はすぐには結論を出さず、じっくりと竜巻を観察してから指示を出しました。
「ここでやり過ごします! 彦君はできるだけ深い穴を掘ってください!」
「……わ、分かりました!」
彦君も恐怖で固まっていましたが、大葉部長の指示ですぐに動き出しました。
「緋色さんは、近くにその箱を固定できそうな物がないか探してください!」
「分かりました!」
風に飛ばされそうにない岩や、ちょうどハマりそうな岩と岩の間なんかを探します。
そんな中、マリさんは大葉部長に自信の疑問を投げかけていました。
「止まるより逃げた方が……」
「いえ。この風とあの竜巻の早さなら走っても追いつかれます」
「真っ直ぐじゃなくて横に逃げれば」
「それができれば一番ですが、この竜巻はすでに私たちの予測から外れています。どの方向に進むのか分かりません」
「……そっか」
「大丈夫ですよ。みんなで固まれば、重量は増します。そうしたら、飛ばされる可能性も低くなります。それに、仮に飛ばされても、みんな一緒なら怖くないでしょ?」
「う、うん……」
「大丈夫。私がついていますから」
大葉部長が安心させようと笑顔を向けています。活発で少し強気なイメージだったマリさんでしたが、私たちと同じように、不安で弱虫な一人の少女でした。
そんなマリさんの少し高い所にある頭を撫でて、大葉部長は私たちの状況を確認しました。
「鷲斗君! 穴はどうですか?」
「……だめです! すぐしたが岩になっていて……」
「分かりました。もう、他の場所を探している余裕もありませんね。緋色さん! そちらはどうですか?」
「すいません。いい場所、見つからなくて……」
「自分を責める必要はありません。だめもとで頼んだんですから」
「はい……」
私たち1年生の行動は無駄に終わってしまいました。大葉部長に指示されたとはいえ、申し訳なさが残ります。
「全員集まって! ここでお互いに腕を組んで、風に煽られないように体をできるだけ低くして、竜巻を乗り切ります! 4人居れば、おそらく耐えられるはずです! 大丈夫、大丈夫」
その「大丈夫」は、おそらく私たちに向けてではなく自分に言い聞かせているのでしょう。
「それじゃあ、みんな、隣と腕を組んで」
そう言って、大葉部長はマリさんと彦君の腕を組みました。つまり、私はマリさんと彦君の腕を組むことになるのですが、残念ながら今は腕が空いていません。
「あの……私、これを持っているんで……」
私の両手には、大事な植物が入った箱がありました。
「それは……真ん中に置きましょう。それを囲ってしゃがめばこれも飛ばされずに済みます」
「分かりました!」
安易に捨てろだなんて言われなくて、内心、安心しました。
そんな私の気持ちを彦君は気づいていたのでしょうか。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる