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11章 思い出の傷
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あれから数日後。
授業も終わり、放課後を迎えた私は、家に帰ることもなく、火星探査部の部室にいました。
「ここが一番落ち着く……」
中学生のころは、学校にお菓子を持って行くなんて考えられませんでしたが、高校は自由なようで、こうしてお茶を飲みながらお菓子を食べることもできます。授業で疲れた脳に甘いお菓子が染み渡ります。
「お菓子を食いに来ただけかよ」
そう言う彦君は、火星の資料を見ながら勉強しているようです。でも、どうせ彦君の目的は別の場所にあるのでしょう。
「いいじゃないですか。お茶、おかわりはいりますか?」
「ありがとうございます。いただきます」
相変わらずのデレデレぶりです。
そんないつも通りの部室なのですが、今日は珍しい顔もあります。
「そう言えば、マリさんはバスケ部じゃないんですね」
マリさんがベッドの上でごろごろしています。
「今日は女子バスケは定休日なの」
そう言えば、私の数少ない友達の久遠がバスケ部で今日は浮かれていました。どうやら、部活が休みだからだったようです。ちなみに、今日は火星探査部もお休みです。それなのに、部員全員が集まっています。前回のミッションで部員の絆も深まったのではないのでしょうか。この部活は私にとって、とても居心地がいい場所に変わっていました。
こんな日常が永遠に続けばいいなと思った矢先に、突然、それを壊すようにドアが開きました。
「みんな聞け! JAXAから写真が届いたぞ!」
その言葉を聞いて、みんな一斉に立ち上がり、城山先生の元へと行きましたが、私は今一、それの何がすごいのか分からず遅れを取ってしまいました。
「一体、何の写真なんですか?」
「火星探査機が火星での写真を送ってきたそうだ
その言葉を聞いて、思い当たるものは一つしかありませんでした。
「まさか、ライチョウから?」
「そのまさか、だ。これは記念にもらってもいいそうだぞ」
そう言って城山先生が見せてくれた写真には、見覚えのある景色が映っていました。
「これ……火星……?」
赤い砂漠に険しい岩山。その風景は間違いなく火星のものです。それを決定づけるように、中央には4体のオートマーズが立っていました。
「もしかして……」
その構図や背景の岩山から考えると、ライチョウを助けたときに撮られたものではないのでしょうか。そう言えば、顔の部分が動いてからじっとこちらを見ていました。おそらく、その時に写真を撮ってくれたのでしょう。助けてくれた感謝の気持ちなのでしょうか。
嬉しいことは確かなのですが、少しもったいないような気持ちもします。
「でもこれだと、誰が誰だか分からないですね」
そこに映っていたのは間違いなく私たちなのですが、その姿は機械の体であるオートマーズでした。身長こそ違いますが、オートマーズに違いはないので、顔なんかはみんな一緒です。
しかし、そんな姿でも大葉部長には違いが分かるようです。
「分かりますよ、傷の具合で。この一番傷ついているのが私。そして、こっちの背が高いのがマリちゃん。少しだけ傷が付いているこれは鷲斗君。そして、一番ぴかぴかなのが緋色さんですね」
そう言われて改めて見ると、大葉部長のオートマーズには無数の傷があり、その年季を感じられます。それに比べて、私のオートマーズは彦君よりもピカピカで新人感が増します。
しかし、それはたくさんの経験をこれから積んでいくことを意味しています。
「緋色さんもこれからたくさん、このオートマーズに思い出を刻んでいきましょうね」
大葉部長の言うとおり、私の体にもたくさんの思い出を刻んでいきたいです。
授業も終わり、放課後を迎えた私は、家に帰ることもなく、火星探査部の部室にいました。
「ここが一番落ち着く……」
中学生のころは、学校にお菓子を持って行くなんて考えられませんでしたが、高校は自由なようで、こうしてお茶を飲みながらお菓子を食べることもできます。授業で疲れた脳に甘いお菓子が染み渡ります。
「お菓子を食いに来ただけかよ」
そう言う彦君は、火星の資料を見ながら勉強しているようです。でも、どうせ彦君の目的は別の場所にあるのでしょう。
「いいじゃないですか。お茶、おかわりはいりますか?」
「ありがとうございます。いただきます」
相変わらずのデレデレぶりです。
そんないつも通りの部室なのですが、今日は珍しい顔もあります。
「そう言えば、マリさんはバスケ部じゃないんですね」
マリさんがベッドの上でごろごろしています。
「今日は女子バスケは定休日なの」
そう言えば、私の数少ない友達の久遠がバスケ部で今日は浮かれていました。どうやら、部活が休みだからだったようです。ちなみに、今日は火星探査部もお休みです。それなのに、部員全員が集まっています。前回のミッションで部員の絆も深まったのではないのでしょうか。この部活は私にとって、とても居心地がいい場所に変わっていました。
こんな日常が永遠に続けばいいなと思った矢先に、突然、それを壊すようにドアが開きました。
「みんな聞け! JAXAから写真が届いたぞ!」
その言葉を聞いて、みんな一斉に立ち上がり、城山先生の元へと行きましたが、私は今一、それの何がすごいのか分からず遅れを取ってしまいました。
「一体、何の写真なんですか?」
「火星探査機が火星での写真を送ってきたそうだ
その言葉を聞いて、思い当たるものは一つしかありませんでした。
「まさか、ライチョウから?」
「そのまさか、だ。これは記念にもらってもいいそうだぞ」
そう言って城山先生が見せてくれた写真には、見覚えのある景色が映っていました。
「これ……火星……?」
赤い砂漠に険しい岩山。その風景は間違いなく火星のものです。それを決定づけるように、中央には4体のオートマーズが立っていました。
「もしかして……」
その構図や背景の岩山から考えると、ライチョウを助けたときに撮られたものではないのでしょうか。そう言えば、顔の部分が動いてからじっとこちらを見ていました。おそらく、その時に写真を撮ってくれたのでしょう。助けてくれた感謝の気持ちなのでしょうか。
嬉しいことは確かなのですが、少しもったいないような気持ちもします。
「でもこれだと、誰が誰だか分からないですね」
そこに映っていたのは間違いなく私たちなのですが、その姿は機械の体であるオートマーズでした。身長こそ違いますが、オートマーズに違いはないので、顔なんかはみんな一緒です。
しかし、そんな姿でも大葉部長には違いが分かるようです。
「分かりますよ、傷の具合で。この一番傷ついているのが私。そして、こっちの背が高いのがマリちゃん。少しだけ傷が付いているこれは鷲斗君。そして、一番ぴかぴかなのが緋色さんですね」
そう言われて改めて見ると、大葉部長のオートマーズには無数の傷があり、その年季を感じられます。それに比べて、私のオートマーズは彦君よりもピカピカで新人感が増します。
しかし、それはたくさんの経験をこれから積んでいくことを意味しています。
「緋色さんもこれからたくさん、このオートマーズに思い出を刻んでいきましょうね」
大葉部長の言うとおり、私の体にもたくさんの思い出を刻んでいきたいです。
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