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オタサーの姫vsオタサーの王子

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 城の中は外見通り広い。
 私の城もそうだったが、どこの家もこんなバカでかいのだろうか。不便でしかないような気がする。それに、これではどこに元婚約者がいるのかも分からない。
「ちょっと、あんた、どこにいるか知っているんでしょ? 案内しなさいよ」
「いえ……それは……」
 まあ、言えないか。立場的に。
「いいや。自分で探すから」
 広いといってもいる場所なんて限られる。リビングか自室か。問題は、それがどこか分からないということ。まあ、片っ端から扉を開いていけば見つかるだろうし、その前にメイドが教えてくれるだろう。
「どこに居るのぉ?」
 一番大きな扉を開けると、そこには私の家にもあったとてつもなく長いテーブル。おそらく、ここがリビングなのだろう。
 やっぱりすぐには見つからない。
 そう思っていたが、案外、すぐに見つかった。
「あんなところに……」
 想像していたような室内ではなく室外。大きなガラス窓の向こうには、緑に囲まれた庭にテーブルを挟んで座る二人の青年がいる。
「婚約破棄しておいてお茶なんて、いい度胸じゃない」
 光の反射で遮られていたが、近づくと二人の表情もよく見える。
 一人の男は顔を赤らめ恥ずかしそうに笑い、もう一人の男は優しく微笑んでいた。この表情を見れば、二人のことを全く知らない私でもどちらが私の元婚約者なのか分かる。
 しかし、元婚約者のあの表情。完全に籠絡されている。
 相手の男は余裕の笑みを見せている。私とは違い、清純派という感じ。それに、顔立ちも幼いし、私より年下だろうか。ということは、このホモの世界では最も価値がある男子高生と同じ歳。完全に金を巻き上げる算段を立てている。でも、あれは私の獲物だ。元婚約者には興味ないが、黙って引けるほどプライドは低くない。
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