悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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2 boys loveを求めて……

悪役令嬢は見る専です 15

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 そうとなれば、確認するしかない。大丈夫。私は悪役令嬢だった女。例え見つかったとしても悪口には慣れている。
 意を決し、音を立てないようにゆっくりと慎重に男湯の扉を少しだけ開いた。
 熱気と湿気が乾いた脱衣所へと一気に押し寄せてくる。まるでメガネが曇るように視界がぼやけた。
 よく見えないのに苛立ちを感じながらも、焦らず落ち着いて瞬きをすると、やっと中の様子を見ることができた。
 男湯には声を聞いていたとおり、二人の男がいた。もちろん、セバスとザックさんの二人だ。
 ただ、私の予想が当たっていたのはそこまでだった。
 二人は、もちろん、いやらしいことはしていない。何をしていたかというと、デッキブラシを持って二人で床を磨いていた。
「裸ですらないじゃない!」
 思わず声がでてしまった。
 でも、これは仕方がないじゃない。お風呂にいるんだからてっきり裸だと思っていたのに、二人とも服を着ているんだから。
「ん? お嬢様? どうされましたか?」
「えっ……あの……その……」
 こっそり覗き見するつもりが声を出してしまったのでばれてしまった。
「さては……お嬢……」
 やばい。バレても私の家なんだから問題ないなんて考えていたけど、いざバレてしまうと後悔しかない。これがもしゲームならリセットしたい気持ちだ。
 私は、一思いに殺してくれと悟りの境地を開いていた。
「女湯と間違えたんだな? うっかりさんだなお嬢は」
 しかし、届いてきた言葉は罵詈雑言の限りを尽くした私を軽蔑する言葉の数々ではなかった。
 どうやら、私が欲望のままに男湯を覗きに来たのではなく、間違えて男湯に入ってきてしまったのだと勘違いしているようだ。
 乗るしかない。このビッグウェーブに!
「そ、そうなの。脱衣所に入ったらお風呂から声が聞こえてきたから、一度確認しようと思って……。い、いやぁ、よかったなぁ、着替える前に確認しておいて」
「不幸中の幸いって奴だな」
 どうやら、ザックさんは勘違いしたままで押し切れそうだ。ただ、問題はセバスだ。
「お嬢様……」
 頭を抱えて呆れている。セバスは私の意図を汲むことがうまい。おそらく、セバスにはうっかり間違えたのではなく意図的に覗いたのだとバレているようだ。でも、セバスにバレるのなら、まあ、傷は浅い。後はセバスがそのことを公言しないと祈るのみ。
「はぁ……。お嬢様、もうすぐ夕食ですので、お風呂に入られるのでしたらお早く入られた方がいいですよ」
「そ、そうよね。それじゃあ、掃除、頑張ってね」
 セバスはどうやら許してくれるようだ。よかった。これで私の威厳は保たれる。
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