悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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2 boys loveを求めて……

悪役令嬢は見る専です 17

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 それからも観察を続けていくが、木々の手入れをし、落ち葉を掃き、花壇に水をやり、そして、畑を耕し作物の世話をしている。どうやら今日の収穫も上々のようだ。食卓には新鮮な野菜が並ぶだろう。
 って、野菜の心配をしている場合じゃない。私は彼らの逢瀬を盗み見たいんだ。
 しかし、それといった素振りは全くない。というか、私が監視している間、ルーデンくんは誰とも会っていない。ずっと一人で庭仕事をしていた。まあ、他の人に比べて外での仕事がほとんどなので仕方ないのだろう。
 でも、いつまでもそんな独りぼっちが続くわけではない。
 収穫した野菜を持って行く場所はただ一つ。厨房だ。もちろん、厨房はルーデンくんのテリトリーではない。ザックさんのテリトリーだ。つまり、これからルーデンくんはザックさんに会うことになる。これは免れない運命。そして、厨房という隔離された空間。しかも、死角も多く窓も少ない。逢い引きの場としてはこれ以上ないほどの絶好な場所。私に見られているなんて知りもせずに始めてしまうだろう。
 期待に胸を膨らませながら待ち、いよいよ、ルーデンくんは厨房の扉を開けた。
「あぁ、ザックさんいないのか……。せっかく色艶がいい野菜が採れたって自慢しようと思ったのに……」
 まさかのザックさんがいないという予期せぬ事態! これにはルーデンくんも残念そうだ。
「あのおじさんはどこで何をしているんだ!」
 これには私も怒りを抑えきれず、文句の一つでも言いに行ってやりたい。
「……どこにいるのよ」
 城の至る所、もちろん、トイレも魔法で確認してみたが、ベートさんとセバスの姿はあるもののザックさんの姿がどこにも見あたらない。
 映像での確認をあきらめ、探知魔法に切り替える。
 この城の全てをスキャンするように上から下まで魔法の力で張り巡らせ、城内の生体反応すべてを把握する。しかし、人間の反応は3つだけ。つまり、ザックさんの反応はない。
「こんな時に外出してるなんて……」
 ザックさんは何も分かってないと呆れていると、ルーデンくんに動きがあった。
「まさか……ルーデンくん……」
 ルーデンくんが厨房の次に向かったのは、この城の入り口。門。つまり、ベートさんがいる場所だ。
「ザックさんがいなかったからベートさんにターゲットを変えたの?」
 まあ、もちろん、そうではなく、ルーデンくんはベートさんに一声かけるとそのまま外へと出て行ってしまった。
「これは……もしや……」
 この城の中ではいつでも私が監視できる。
 ザックさんはこの城の中にいない。
 それを知ってルーデンくんも城の外へと行った。
 これらの要素から導き出される結論は一つしかない。
「逢い引きはこの城の外で行われていた!?」
 そうとなればグズグズしてはいられない。早くルーデンくんの後を追わなければ……。
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