26 / 67
3 親友とその弟
悪役令嬢は見る専です 26
しおりを挟む
馬車は城の門をくぐり、そして、町の風景が窓を流れ、しばらくすると町を抜け、草原を駆けていた。馬車を引いているとはいえ、平原を走るのは馬にとってとても気持ちがいいだろう。馬のために、たまには外出してあげるのも必要だろう。ただまあ、それにはもう少し馬車の乗り心地がよくなって欲しいものだ。椅子は堅いし、馬車は揺れるし、隙間風は……走っている感じがして好きだけど。便利な魔法がある代わりに科学技術が発達していないというのも考え物だ。
そんなことを考えながら馬車に揺られていると、両サイドで護衛をしてくれている兵士の二人が何かベートさんに言っているようだ。だが、馬車の中からでは窓を開けても何を言っているのか分からない。
「お嬢様、お体が冷えてしまいますよ」
「うん……」
気になるがセバスに注意されたので渋々閉めようとしたのだが、ベートさんと話し終わった兵士の一人がこちらの方へとやってきた。
「どうしたの?」
「この先、アースドラゴンの縄張りになっていまして……」
「そう……」
アースドラゴンと言えば、好戦的ではないが縄張りに入ってきたものには容赦ないということで有名だ。
「ですから、迂回したほうがいいと御者に申し上げたのですが、許可なくルートは変えられないと……」
「そうね……。別にこのままでいいんじゃない? 迂回ってことは遠回りになるんだし、最短距離で行った方が時間もかからないでしょうから」
「し、しかし……」
「大丈夫よ、大丈夫」
それだけ告げて、窓を閉めてしまった。
アースドラゴンと言っても、別に気づかれなければいいのだから。それに、今は自分の縄張りにいないかもしれないことだし。平気だろう。
ただ、少し考えが甘かった。
馬車は急に止まり、両サイドにいる兵士の馬が怯えて騒いでいる。
「ベート、どうしました」
異変を感じたセバスがベートさんに訪ねると、呆れた声が帰ってきた。
「アースドラゴンが正面で寝てるんですよ。このままだと、迂回しないとですね」
居ないかもしれないなんて考えていたが、どうやら今はお昼寝の時間だったようだ。
「はぁ……。仕方ないわね……」
こうなったのは私のせいだし、それに、迂回なんて面倒なことはしたくない。
アースドラゴンをどうにかするためにも私は馬車を降りた。
「お、お嬢様」
「すぐ済むから外に出なくてもいいわよ」
セバスには馬車の中で待機を命じ、私は外で少し背伸びをした。馬車は狭いわけではないのだが、少し疲れる。ただ、この場所は安全な場所ではない。もちろん、アースドラゴンがいるのもそうだが、馬が軽いパニックになっているほうが少し怖い。そう言う意味では、馬車に繋がれている馬、ベートさんが育てたキャップとブライアンとい二匹の馬は優秀だ。アースドラゴンを目の前にしても一切パニックになっていない。ベートの飼育の成果とも言えるだろう。それとも、私がいるから安心しているのだろうか。だとしたら、早く安心させてあげなければ。
「さて、やりますか」
アースドラゴン程度なので、軽い魔法で十分。それに、道を譲って貰うために殺してしまうのは可哀想だし。
「コール」
晴天だった青空は一瞬で黒く分厚い雲に覆われた。
「ライトニング」
轟音と共に一閃、天から地面へと刃のように雷が突き刺さった。もちろん、アースドラゴンに直撃はさせずに真横に落とした。
これに驚いたアースドラゴンは慌てて飛び立ってしまった。
「す、すごい……これが魔王を凌駕する魔法の力……」
畏怖の眼差しで見られているが、こんなのはまだまだ序の口だ。
「さあ、行きましょうか」
雷で馬もおとなしくなったことだし、改めて、馬車を走らせた。
そんなことを考えながら馬車に揺られていると、両サイドで護衛をしてくれている兵士の二人が何かベートさんに言っているようだ。だが、馬車の中からでは窓を開けても何を言っているのか分からない。
「お嬢様、お体が冷えてしまいますよ」
「うん……」
気になるがセバスに注意されたので渋々閉めようとしたのだが、ベートさんと話し終わった兵士の一人がこちらの方へとやってきた。
「どうしたの?」
「この先、アースドラゴンの縄張りになっていまして……」
「そう……」
アースドラゴンと言えば、好戦的ではないが縄張りに入ってきたものには容赦ないということで有名だ。
「ですから、迂回したほうがいいと御者に申し上げたのですが、許可なくルートは変えられないと……」
「そうね……。別にこのままでいいんじゃない? 迂回ってことは遠回りになるんだし、最短距離で行った方が時間もかからないでしょうから」
「し、しかし……」
「大丈夫よ、大丈夫」
それだけ告げて、窓を閉めてしまった。
アースドラゴンと言っても、別に気づかれなければいいのだから。それに、今は自分の縄張りにいないかもしれないことだし。平気だろう。
ただ、少し考えが甘かった。
馬車は急に止まり、両サイドにいる兵士の馬が怯えて騒いでいる。
「ベート、どうしました」
異変を感じたセバスがベートさんに訪ねると、呆れた声が帰ってきた。
「アースドラゴンが正面で寝てるんですよ。このままだと、迂回しないとですね」
居ないかもしれないなんて考えていたが、どうやら今はお昼寝の時間だったようだ。
「はぁ……。仕方ないわね……」
こうなったのは私のせいだし、それに、迂回なんて面倒なことはしたくない。
アースドラゴンをどうにかするためにも私は馬車を降りた。
「お、お嬢様」
「すぐ済むから外に出なくてもいいわよ」
セバスには馬車の中で待機を命じ、私は外で少し背伸びをした。馬車は狭いわけではないのだが、少し疲れる。ただ、この場所は安全な場所ではない。もちろん、アースドラゴンがいるのもそうだが、馬が軽いパニックになっているほうが少し怖い。そう言う意味では、馬車に繋がれている馬、ベートさんが育てたキャップとブライアンとい二匹の馬は優秀だ。アースドラゴンを目の前にしても一切パニックになっていない。ベートの飼育の成果とも言えるだろう。それとも、私がいるから安心しているのだろうか。だとしたら、早く安心させてあげなければ。
「さて、やりますか」
アースドラゴン程度なので、軽い魔法で十分。それに、道を譲って貰うために殺してしまうのは可哀想だし。
「コール」
晴天だった青空は一瞬で黒く分厚い雲に覆われた。
「ライトニング」
轟音と共に一閃、天から地面へと刃のように雷が突き刺さった。もちろん、アースドラゴンに直撃はさせずに真横に落とした。
これに驚いたアースドラゴンは慌てて飛び立ってしまった。
「す、すごい……これが魔王を凌駕する魔法の力……」
畏怖の眼差しで見られているが、こんなのはまだまだ序の口だ。
「さあ、行きましょうか」
雷で馬もおとなしくなったことだし、改めて、馬車を走らせた。
0
あなたにおすすめの小説
愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない
了承
BL
卒業パーティー。
皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。
青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。
皇子が目を向けた、その瞬間——。
「この瞬間だと思った。」
すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。
IFストーリーあり
誤字あれば報告お願いします!
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
自己肯定感低めの不幸な義弟が完璧な義兄と大揉めに揉める話
あと
BL
「こんな僕をお兄ちゃんは嫌ってるだろうな」
トップ俳優な完璧超人の義理の兄×不幸な自己肯定感低めのネガティブ義理の弟です。
お金ない受けが追い詰められて変なアルバイトしようとしたら、攻めと再会して……?みたいな話です。
攻めがヤンデレ気味で、受けがマジで卑屈なので苦手な人はブラウザバックで。
兄弟は親が離婚してるため、苗字が違います。
攻め:水瀬真広
受け:神崎彼方
⚠️作者は芸能界にもお葬式ににもエアプなので、気にしないでください。
途中でモブおじが出てきます。
義理とはいえ兄弟なので、地雷の人はブラウザバックで。
初投稿です。
初投稿がちょっと人を選ぶ作品なので不安です。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
内容も時々サイレント修正するかもです。
定期的にタグ整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新!
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
もう殺されるのはゴメンなので婚約破棄します!
めがねあざらし
BL
婚約者に見向きもされないまま誘拐され、殺されたΩ・イライアス。
目覚めた彼は、侯爵家と婚約する“あの”直前に戻っていた。
二度と同じ運命はたどりたくない。
家族のために婚約は受け入れるが、なんとか相手に嫌われて破談を狙うことに決める。
だが目の前に現れた侯爵・アルバートは、前世とはまるで別人のように優しく、異様に距離が近くて――。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる