悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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3 親友とその弟

悪役令嬢は見る専です 26

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 馬車は城の門をくぐり、そして、町の風景が窓を流れ、しばらくすると町を抜け、草原を駆けていた。馬車を引いているとはいえ、平原を走るのは馬にとってとても気持ちがいいだろう。馬のために、たまには外出してあげるのも必要だろう。ただまあ、それにはもう少し馬車の乗り心地がよくなって欲しいものだ。椅子は堅いし、馬車は揺れるし、隙間風は……走っている感じがして好きだけど。便利な魔法がある代わりに科学技術が発達していないというのも考え物だ。
 そんなことを考えながら馬車に揺られていると、両サイドで護衛をしてくれている兵士の二人が何かベートさんに言っているようだ。だが、馬車の中からでは窓を開けても何を言っているのか分からない。
「お嬢様、お体が冷えてしまいますよ」
「うん……」
 気になるがセバスに注意されたので渋々閉めようとしたのだが、ベートさんと話し終わった兵士の一人がこちらの方へとやってきた。
「どうしたの?」
「この先、アースドラゴンの縄張りになっていまして……」
「そう……」
 アースドラゴンと言えば、好戦的ではないが縄張りに入ってきたものには容赦ないということで有名だ。
「ですから、迂回したほうがいいと御者に申し上げたのですが、許可なくルートは変えられないと……」
「そうね……。別にこのままでいいんじゃない? 迂回ってことは遠回りになるんだし、最短距離で行った方が時間もかからないでしょうから」
「し、しかし……」
「大丈夫よ、大丈夫」
 それだけ告げて、窓を閉めてしまった。
 アースドラゴンと言っても、別に気づかれなければいいのだから。それに、今は自分の縄張りにいないかもしれないことだし。平気だろう。
 ただ、少し考えが甘かった。
 馬車は急に止まり、両サイドにいる兵士の馬が怯えて騒いでいる。
「ベート、どうしました」
 異変を感じたセバスがベートさんに訪ねると、呆れた声が帰ってきた。
「アースドラゴンが正面で寝てるんですよ。このままだと、迂回しないとですね」
 居ないかもしれないなんて考えていたが、どうやら今はお昼寝の時間だったようだ。
「はぁ……。仕方ないわね……」
 こうなったのは私のせいだし、それに、迂回なんて面倒なことはしたくない。
 アースドラゴンをどうにかするためにも私は馬車を降りた。
「お、お嬢様」
「すぐ済むから外に出なくてもいいわよ」
 セバスには馬車の中で待機を命じ、私は外で少し背伸びをした。馬車は狭いわけではないのだが、少し疲れる。ただ、この場所は安全な場所ではない。もちろん、アースドラゴンがいるのもそうだが、馬が軽いパニックになっているほうが少し怖い。そう言う意味では、馬車に繋がれている馬、ベートさんが育てたキャップとブライアンとい二匹の馬は優秀だ。アースドラゴンを目の前にしても一切パニックになっていない。ベートの飼育の成果とも言えるだろう。それとも、私がいるから安心しているのだろうか。だとしたら、早く安心させてあげなければ。
「さて、やりますか」
 アースドラゴン程度なので、軽い魔法で十分。それに、道を譲って貰うために殺してしまうのは可哀想だし。
「コール」
 晴天だった青空は一瞬で黒く分厚い雲に覆われた。
「ライトニング」
 轟音と共に一閃、天から地面へと刃のように雷が突き刺さった。もちろん、アースドラゴンに直撃はさせずに真横に落とした。
 これに驚いたアースドラゴンは慌てて飛び立ってしまった。
「す、すごい……これが魔王を凌駕する魔法の力……」
 畏怖の眼差しで見られているが、こんなのはまだまだ序の口だ。
「さあ、行きましょうか」
 雷で馬もおとなしくなったことだし、改めて、馬車を走らせた。
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