悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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3 親友とその弟

悪役令嬢は見る専です 30

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「それで、本題なんだけど……アルシュの弟と私が結婚ってどういうこと?」
「それは伝えたとおり……って、そうだった。何も伝わってないんだった。それじゃあ……初めから全部話した方がよさそうね」
「そうね。二度手間になっちゃうけど、お願い」
「手間だなんて……私のミスなんだから当然よ」
 一時の気の迷いとはいえ少しひやひやしたが、やっと私を呼んだ説明をしてくれるようだ。
「その……私の弟のことなんだけど……」
「アルシュの弟……確かアルフィードくんだったよね? 会ったのは一度きりだったかしら……」
 アルシュとはもう数えられないほどたくさん会っているのだが、弟のアルフィードはまだ王位継承者というのもあって一度会ったきり見ていない。確か、弟なのに身長は私やアルシュより高くて、整った可愛らしい顔立ちをしていた。身長やスタイルではセバスと同じだが、セバスのように大人びた雰囲気はなく、ルーデンくんのような愛らしさがある。つまり、セバスとルーデンくんを足して割った感じの少年だ。
「ごめんなさい。アルフは小さい頃から引っ込み思案だったから……。でも、根はいい子なの。だから、話してみたら、きっと気に入ると思うわ」
「そ、そうね……」
 前々からアルシュはブラコン、ブラザーコンプレックスなのではないかと思っていたがついに本性を現したようだ。そのことについても問いつめておきたいのだが、この問題は他人事ではなく私も巻き込まれているようなので、今はやめておこう
「とりあえず、アルフくんのことはある程度分かったんだけど、なんでまた私なんかと結婚なんて話になっているの?」
「そう! それなの! 父と母がアルフの婚約者を勝手に決めちゃって……」
「何でまた急に」
「ほら……アルフは一人息子だし……今は私が王位を継いでいるけど、父と母は早くアルフに継がせたいみたいなのよね……」
「なるほどね。何となく分かったわ」
 この世界でも家を継ぐのは長男の役目という風習が根付いている。しかも、この家系は王家。そこの一人息子であれば、さぞや大事にされてきただろう。そして、女性のアルシュではなく男性のアルフくんに早く継がせたい。そのためにも、王の仕事で忙しくなる前に結婚し跡取りを残させ、そして王に、というのがアルシュの父や母の思惑なのだろう。
「王位を継ぐ前に結婚させておきたいと。そして、その相手としてこの私が……私? 何で私なの?」
 確かに私はお隣のウェラベルグ国で女王をやっているが、私には兄弟はいないし、ウェラベルグ国としては婿養子に来てもらわなければならない。それなのに私を婚約者に選ぶなんておかしい。というか、まず、アルシュの父と母から見て私が婚約者に相応しいなんて思わないだろう。私は貴族の出だが、悪役令嬢。魔王こそ倒して自分の国の国民からの評判はいいものの、一歩外にでれば、未だに私の悪口は耐えない。この国だって、私への印象が悪くない人はアルシュぐらいなものだ。
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