悪役令嬢は見る専です

小森 輝

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3 親友とその弟

悪役令嬢は見る専です 44

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「話ぐらいなら……。どうしますか?」
 ヒューブさんは今まで声すら出さなかったアルフくんへと振り返った。私はてっきり主導権はヒューブさんにあると思っていた。アルフくんを引っ張るようにして連れているし、私やセバスともヒューブさんが話していたので、プライベートでは立場が逆転しているのだろうと思っていたのだがそう言うわけでもなさそうだ。普段は上司と部下だけど、ベッドの上では上司は下で部下は上だなんて、そういうギャップ萌えは大好きなのだが、今は余所にいるのでそう言う気持ちは表に出さないように気をつけておこう。
 そんな決意を固めていると、やっとアルフくんが口を開いた。
「では、立ち話でするような話でもないですから、俺の部屋にでも……」
「分かった」
 私とアルフくんはあまり話したこともないし、アルフくんの姉のアルシュと仲がいいということぐらいしか接点がなかったので、断られたらどうしようかと思っていたが、話を聞かせて貰えてるようなのでよかった。
「それじゃあ、部屋まで案内します」
 アルフくんとはそれだけで、再びヒューブさんが主導権を握り、部屋へと案内しだした。
 ヒューブさんとは、今日、初めて会ったのだが、何となくだがどんな人なのか分かってきた。初めて会ったときもそうだったが、主人のアルフくんよりも前に出るほど主張が強い。もしかしたら、仕切りたがりやでリーダーシップがとれるクラスの委員長的な人なのかもしれない。それとも、自分が愛しているアルフくんが他の人と話しているのなんて我慢ならないようなあ束縛タイプの愛し方をする人なのだろうか。後者なら妄想が捗りそうだ。純愛系のBLも好きだが、拘束して無理矢理そちらに目覚めさせるという感じでも私の性癖には刺さっている。
 どちらに転んでもおいしい展開だと、セバスに涎を拭かせながら歩いていくと、他より少し大きめで過剰なほど装飾が施されている扉の前まで来た。
「こちらがアルフィード様のお部屋です」
 そう言って、ヒューブさんが扉を開けると、酸っぱいようなカビっぽいような、そんな独特の臭いが押し寄せてきた。女子の消臭している甘いような匂いではない。これが男子の部屋!
 思えば、生まれてから初めて、私は男子の部屋に入ろうとしていることに気づいた。
 男子の部屋と言えば、必ずあるのがお宝、通称エロ本なのだが、この世界では紙がないのでエロ本はない。だが、思春期真っ直中の男子の部屋。私が知らない性欲を吐き出す何かがあるかもしれない。
 ただ、部屋に入るだけなのだが、心して挑まなければならない。
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