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4 若き次期王の悩み
悪役令嬢は見る専です 61
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後ろの方でイーラが何か怒っている声が聞こえるが、振り返ることなく礼拝堂を目指した。
大国の城ということもあって、敷地が広いということは知っていたが、まさか礼拝堂まであるとは思わなかった。そして、こじんまりとした礼拝堂ではなく、100人ほどは優に入れるほどの大きさだとも思わなかった。
「まさか、城の中にこんな場所があったなんてね……」
「知らないのも仕方ありません。ここは正門の裏手ですから城に隠れて見えないんですよ」
「なるほど……」
こんな立派な建物が隠れてしまっているというのは非常に残念なことだ。
「驚愕しているところ悪いのですが、先を急ぎましょうか」
「そ、そうね。でも、衣装合わせをどこでしているのかが問題よね」
「それなら分かります。おそらく、あちらですよ」
複数ある扉の中からセバスは一つの指さした。
「よく分かるわね」
「先ほどから人の出入りがありますから、おそらくは」
私は礼拝堂にばかり目がいっていたが、セバスはよく周りを見ている。
扉の近くまで行くと、中から話し声や物音がする。セバスの予想はどうやら当たりのようだ。
「あっ。お待ちください、お嬢様」
善は急げとノックもせずにドアノブに手をかけた私をセバスが慌てて止めた。
「何よ。ここで尻込みしている必要はないでしょ?」
「いえ、一応、衣装合わせと聞いていましたので、もしかしたら着替えの最中かもしれませんので……」
「はっ……そ、そうね。先に、セバスが確認してちょうだい」
「かしこまりました」
中を見ないように後ろ向き、先にセバスが部屋の中へと入っていった。
「失礼します……」
一人、外で待たされ、彼女の家に来たが「少し片づけるから待っていて」と言われた彼氏のように、待ち遠しくそわそわしていると、やっとドアが開いてセバスが顔を出した。
「入っても大丈夫ですよ、お嬢様」
「確認するだけならもっと早く済んだでしょ……」
そんな愚痴をこぼしながら、私は部屋の中へと入った。
部屋の中では数人の男性が忙しなく動いている。そして、その中心に彼はいた。
まぶしいほどの純白なタキシードを身に纏ったアルフくんはとても様になっている。まるでミュージカルの王子様のようだ。そして、この対となる花嫁のドレスはさぞかし綺麗だったのだろう。それこそ、イーラが自慢したくなるほどに。
「ヤヨイさん? どうかしましたか?」
「いやっ。何でもない」
彼と彼の花嫁の姿を想像して、思わず見とれていた。イーラは確かに性悪女だが、純白のドレスを着ていたとしてもそれに負けない風格を持ち合わせている。おそらく、二人並んだ時の神々しさはとてつもないだろう。でも、どうせなら、彼の隣には愛する人が立っていてほしい。
そんな思いを込めて、私はクラストからの言伝を伝えた。
「彼は『待っている』って」
その言葉だけで、アルフくんには全てが伝わった。
彼は今、どんな気持ちなのだろうか。嬉しさなのだろうか。それとも、申し訳なさなのだろうか。それは、本人にしか分からない。
「言ったではありませんか。彼はいつでもあなたを待っていると。心配するぐらいなら会いに行けばよいと」
「あぁ……そうだな、ヒューブ。俺が臆病なだけだった。もっと、もっと早くに迎えに行けばよかった」
後悔と、そして嬉しさから涙が止まらないといった様子だ。
「涙を流すと折角の衣装にシミがついてしまいますよ」
流している涙をヒューブさんが優しく拭っている。もしかしたら、この場で一番うれしいのはヒューブさんなのかもしれない。ずっとアルフくんの背中を押していたのはヒューブさんなのだから。
「すいません。少し席を外してもらってもよろしいでしょうか?」
まあ、こんな姿を他の人には見せたくないだろう。
「分かった。私は部屋で待っているから、落ち着いたら来てちょうだい」
「分かりました」
今夜決行する脱走の打ち合わせもしておきたかったのだが、こんな状態では仕方ない。
感情のままに涙を流している新郎を残して、私は部屋を出ることにした。
大国の城ということもあって、敷地が広いということは知っていたが、まさか礼拝堂まであるとは思わなかった。そして、こじんまりとした礼拝堂ではなく、100人ほどは優に入れるほどの大きさだとも思わなかった。
「まさか、城の中にこんな場所があったなんてね……」
「知らないのも仕方ありません。ここは正門の裏手ですから城に隠れて見えないんですよ」
「なるほど……」
こんな立派な建物が隠れてしまっているというのは非常に残念なことだ。
「驚愕しているところ悪いのですが、先を急ぎましょうか」
「そ、そうね。でも、衣装合わせをどこでしているのかが問題よね」
「それなら分かります。おそらく、あちらですよ」
複数ある扉の中からセバスは一つの指さした。
「よく分かるわね」
「先ほどから人の出入りがありますから、おそらくは」
私は礼拝堂にばかり目がいっていたが、セバスはよく周りを見ている。
扉の近くまで行くと、中から話し声や物音がする。セバスの予想はどうやら当たりのようだ。
「あっ。お待ちください、お嬢様」
善は急げとノックもせずにドアノブに手をかけた私をセバスが慌てて止めた。
「何よ。ここで尻込みしている必要はないでしょ?」
「いえ、一応、衣装合わせと聞いていましたので、もしかしたら着替えの最中かもしれませんので……」
「はっ……そ、そうね。先に、セバスが確認してちょうだい」
「かしこまりました」
中を見ないように後ろ向き、先にセバスが部屋の中へと入っていった。
「失礼します……」
一人、外で待たされ、彼女の家に来たが「少し片づけるから待っていて」と言われた彼氏のように、待ち遠しくそわそわしていると、やっとドアが開いてセバスが顔を出した。
「入っても大丈夫ですよ、お嬢様」
「確認するだけならもっと早く済んだでしょ……」
そんな愚痴をこぼしながら、私は部屋の中へと入った。
部屋の中では数人の男性が忙しなく動いている。そして、その中心に彼はいた。
まぶしいほどの純白なタキシードを身に纏ったアルフくんはとても様になっている。まるでミュージカルの王子様のようだ。そして、この対となる花嫁のドレスはさぞかし綺麗だったのだろう。それこそ、イーラが自慢したくなるほどに。
「ヤヨイさん? どうかしましたか?」
「いやっ。何でもない」
彼と彼の花嫁の姿を想像して、思わず見とれていた。イーラは確かに性悪女だが、純白のドレスを着ていたとしてもそれに負けない風格を持ち合わせている。おそらく、二人並んだ時の神々しさはとてつもないだろう。でも、どうせなら、彼の隣には愛する人が立っていてほしい。
そんな思いを込めて、私はクラストからの言伝を伝えた。
「彼は『待っている』って」
その言葉だけで、アルフくんには全てが伝わった。
彼は今、どんな気持ちなのだろうか。嬉しさなのだろうか。それとも、申し訳なさなのだろうか。それは、本人にしか分からない。
「言ったではありませんか。彼はいつでもあなたを待っていると。心配するぐらいなら会いに行けばよいと」
「あぁ……そうだな、ヒューブ。俺が臆病なだけだった。もっと、もっと早くに迎えに行けばよかった」
後悔と、そして嬉しさから涙が止まらないといった様子だ。
「涙を流すと折角の衣装にシミがついてしまいますよ」
流している涙をヒューブさんが優しく拭っている。もしかしたら、この場で一番うれしいのはヒューブさんなのかもしれない。ずっとアルフくんの背中を押していたのはヒューブさんなのだから。
「すいません。少し席を外してもらってもよろしいでしょうか?」
まあ、こんな姿を他の人には見せたくないだろう。
「分かった。私は部屋で待っているから、落ち着いたら来てちょうだい」
「分かりました」
今夜決行する脱走の打ち合わせもしておきたかったのだが、こんな状態では仕方ない。
感情のままに涙を流している新郎を残して、私は部屋を出ることにした。
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