スラッガー

小森 輝

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スラッガー 7

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 だが開始して、一分と保たずに飽きてしまった。
 頬杖をついて、だらけた姿勢になるが、それでも、手に持ったシャーペンだけは動かす。
 もう、字の形も文字の並びも気にしない。そんなことだから意味の無い物になってしまうのだろうが、とりあえず、点数を貰えればそれでいい。
 書くだけではつまらないと思っていると、いいことを思いついてしまった。
「そうだよ。お前がテストにでる問題を予測して、俺がそれを丸暗記すれば楽で確実じゃないか!」
 優秀なオカが、テストに出そうなところをピックアップしてくれれば、間違いないはずだ。我ながら、名案を思い付いてしまったようだ。
 そう思っていたのは自分だけで、オカは呆れた目をしていた。
「あのな。そんなことが出来たら、俺は100点を取っているぞ?」
「100点じゃなくてもいいんだよ。オカができる範囲でさ。70点代とかで十分だから」
 冗談ではなく、俺は本気で言っている。オカが本気でやってくれれば可能だと思っている。そのお零れを頂けるのであれば、ありがたく頂く所存だ。
「仕方ないな……。分かったよ。重要な箇所ぐらいは教えてやるから」
「よっし!」
 無理だと思っていたが、何でも言って見るものだ。
 オカが俺を甘やかすなんてことは、滅多にない。これは、とてつもないチャンスなのだ。一言も聞き逃さないように、今までにないほど集中して話を聞く。
「ここからここまでを全部暗記すれば100点だ」
 オカがテスト範囲に指定されている教科書のページを見せてきた。
「いや、そういうのじゃなくて……もっとピンポイントでさ……」
「そう言われてもな……。答えだけ教えても、使い方だったり、問題に適した回答なのかどうかだったり、その辺を理解しておかないと無理だろ」
「それは……」
「漢字だったり、英単語だったり、数式だったり、基本的には暗記なんだから。それが何なのか理解したほうが覚えやすいだろ。何事も積み重ねが……」
「分かった分かった。聞いた俺が悪かったよ」
 天才は一日にしてならず。コツコツと積み重ねた努力が、大きな才能として形を成す。
 かつての俺が信条にしていた言葉だ。まさか親友に言われるなんて思わなかったが。だが、テストまでは後1週間しかない。もう、積み重ねていく日にちも少ないわけで……。
「手っ取り早くいい点数が取れる方法があればな……」
「だったら、暗記するのが一番早い方法だぞ」
「それ以外で何かないか考えているんじゃないか」
「そんなものがあったら、とっくに見つかっていると思うんだけどな。あぁ、カンニングとか前日に問題用紙を盗むなんてことはしないでくれよ」
「中学の頃から不良みたいな見た目だってよく言われたし、今のクラスにも馴染むのに時間がかかったけど、本来の俺はそこまで悪じゃない。オカが一番よく知っているだろ」
 不正行為をするほど、俺は落ちぶれちゃいない。そんなハイリスクを犯すのなら、素直に赤点を取って補習を頑張る方がましだ。それに、オカに迷惑がかかることはしたくない。たった一人の親友なのだから、オカに借りは作りたくない。まあ、ノートを借りたり、勉強を教えて貰ったり、そういった借りは作りっぱなしなのだし、これからも借り続けようと思っている。
「効率的な勉強方法を考えるのは勝手だけどな、口だけじゃなくて、ちゃんと手も動かせよ」
「……やってるよ」
「今シャーペン持ったくせに」
 一回だけ呆れた顔を見せただけで、それ以外はノートと教科書を往復しながら英単語の書き取りをしていて、俺の方は見ていなかったはずだ。それなのに、俺の手が全く動いてなかったことを見破っていた。親友と言う物は恐ろしいものだ。
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