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疾走する紅蓮の導き
炎と風の反逆者 25
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そのあと、追撃は来ることなく、俺が出る幕はなかった。
それにしても、どれだけ走るつもりなのだろうか。確か、本部まで撤退すると言っていたが、建物らしきものは一つもない。
「本部って走って着くような場所なのか?」
「すぐそこだ。追手も来ないし、うまくまけたようだな」
建物なんて見えないから、本部と言うのは地下施設なのだろうか。まあ、彼女のすぐそこが、俺が考えている距離と離れすぎているという可能性もある。
周りを見渡しながら本部のような場所を探していると、彼女は急に立ち止まった。
「着いたぞ」
「着いたって……」
俺を下ろしてくれるが、どう見ても更地だ。地下に入るような階段もない。
「それじゃあ、入ろうか」
彼女が更地へ歩いて行き、中へ入ると、姿を消した。
「ちょ……え……」
取り残されてしまった。
どうなっているんだ。何か仕掛けがあるのか。
とりあえず、彼女が進んだ道を追い、更地へ入っていくと、突然、目の前に消えたはずの顔が現れた。
「おわ!」
思わず後ろへ転げてしまった。
「大丈夫か?」
「あ、ああ。少し驚いただけだ」
彼女が手を差し伸べてくるので、遠慮なく手を掴むと、その細い腕からは考えられない腕力で引き起こされた。
「それでは紹介しよう。ここが我々の本部<フラウロスの牙>だ」
両腕を広げる彼女の背には更地ではなく、大きめの市役所のような建物が立っていた。
「う、嘘だろ……」
目を疑う光景だ。
先ほどまで何もなかったのに、突然、目の前にこんな建物が現れたら誰でも目を疑う。
「この建物には結界が張られていてな、中に入らないと見えない仕組みになっているんだ」
なるほど。クレイドルが血眼で探しても見つからないはずだ。
「ここで突っ立っているのもなんだし、そろそろ中に入ろうか」
「あ、ああ」
そう促されたので、俺は彼女の後ろをついて行った。
入口は、なんと自動ドア。金が掛かっている。
建物の中に入ると、数名が出迎えてくれた。
全員の視線は異物である俺ではなく、幹部である彼女に向いていた。
みんな「ご無事で何よりです」とか「あまり無茶はしないでください」だとか、思い思いの言葉を向けている。
「それで、そこのかわいい坊やは?」
気まずくて後ろに隠れていたのだが、一人の女性が俺に気づいて視線を向けてくる。
「そうだった。皆を集めて紹介するつもりだったが、ここに居るメンバーにだけでも紹介しておこう」
彼女は後ろに隠れていた俺の背中を押し、一歩前へ出した。
「え?」
「彼は石動誘。今日から私たちの同胞だ」
「え?」
どうほう……同胞って、仲間とか戦友とか、そう言う意味だったような。
「ちょ、ちょっと、俺はあんたらの仲間になるなんて言ってないぞ」
「じゃあ、戻るって言うのか? 殺されに」
「それは……」
「じゃあ、仲間になるしかないだろ」
「いや、それとこれとはだな……」
戻る気はない。だが、反乱に参加するということは紀彦と茜音、透真さんたちと敵対することになる。それも出来ない。
それにしても、どれだけ走るつもりなのだろうか。確か、本部まで撤退すると言っていたが、建物らしきものは一つもない。
「本部って走って着くような場所なのか?」
「すぐそこだ。追手も来ないし、うまくまけたようだな」
建物なんて見えないから、本部と言うのは地下施設なのだろうか。まあ、彼女のすぐそこが、俺が考えている距離と離れすぎているという可能性もある。
周りを見渡しながら本部のような場所を探していると、彼女は急に立ち止まった。
「着いたぞ」
「着いたって……」
俺を下ろしてくれるが、どう見ても更地だ。地下に入るような階段もない。
「それじゃあ、入ろうか」
彼女が更地へ歩いて行き、中へ入ると、姿を消した。
「ちょ……え……」
取り残されてしまった。
どうなっているんだ。何か仕掛けがあるのか。
とりあえず、彼女が進んだ道を追い、更地へ入っていくと、突然、目の前に消えたはずの顔が現れた。
「おわ!」
思わず後ろへ転げてしまった。
「大丈夫か?」
「あ、ああ。少し驚いただけだ」
彼女が手を差し伸べてくるので、遠慮なく手を掴むと、その細い腕からは考えられない腕力で引き起こされた。
「それでは紹介しよう。ここが我々の本部<フラウロスの牙>だ」
両腕を広げる彼女の背には更地ではなく、大きめの市役所のような建物が立っていた。
「う、嘘だろ……」
目を疑う光景だ。
先ほどまで何もなかったのに、突然、目の前にこんな建物が現れたら誰でも目を疑う。
「この建物には結界が張られていてな、中に入らないと見えない仕組みになっているんだ」
なるほど。クレイドルが血眼で探しても見つからないはずだ。
「ここで突っ立っているのもなんだし、そろそろ中に入ろうか」
「あ、ああ」
そう促されたので、俺は彼女の後ろをついて行った。
入口は、なんと自動ドア。金が掛かっている。
建物の中に入ると、数名が出迎えてくれた。
全員の視線は異物である俺ではなく、幹部である彼女に向いていた。
みんな「ご無事で何よりです」とか「あまり無茶はしないでください」だとか、思い思いの言葉を向けている。
「それで、そこのかわいい坊やは?」
気まずくて後ろに隠れていたのだが、一人の女性が俺に気づいて視線を向けてくる。
「そうだった。皆を集めて紹介するつもりだったが、ここに居るメンバーにだけでも紹介しておこう」
彼女は後ろに隠れていた俺の背中を押し、一歩前へ出した。
「え?」
「彼は石動誘。今日から私たちの同胞だ」
「え?」
どうほう……同胞って、仲間とか戦友とか、そう言う意味だったような。
「ちょ、ちょっと、俺はあんたらの仲間になるなんて言ってないぞ」
「じゃあ、戻るって言うのか? 殺されに」
「それは……」
「じゃあ、仲間になるしかないだろ」
「いや、それとこれとはだな……」
戻る気はない。だが、反乱に参加するということは紀彦と茜音、透真さんたちと敵対することになる。それも出来ない。
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