炎と風の反逆者

小森 輝

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苦悩する疾風の担い手

炎と風の反逆者 48

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「ところで、模擬戦はどうするんだ? 続けないのか?」
 おそらく、俺が倒れたせいで中断されてしまったのだろう。まあ、続けると言われても支障はないだろう。
『続きはしなくても大丈夫です。炎を操って、あれだけ攻撃を跳ね返せれば、みなさん納得せざるを得ませんからね。今日はもうお昼を食べてゆっくりしていたらどうですか?』
「言われなくてもそうする。盗み聞きはするなよ」
『分かってますって。それではおつかれさまでした』
 それで伝宝さんからの念話は途絶えた。命が釘を刺したことだし、盗み聞きしようなんて気は起こらないだろう。
「伝宝の言う通り、帰って昼食にしようか」
 命がそう提案してくるが、その前にやっておかなければならないことが1つある。
「その前に、少しだけ付き合ってくれないか?」
「少しと言わず、いつまでも付き合ってやるが?」
「いや、本当に少しでいいんだけど……」
 釘を刺したとはいえ、盗み聞きしていないとは限らないこの状況でよくこんなことを恥ずかしがりながら言えたものだ。
「そうか……では、何をするんだ?」
「あ、そうだった」
 この短時間でうっかり忘れるところだった。
「一回だけでいいから炎を出してくれないか? あの感覚を忘れないうちに記憶しておきたいんだ」
 おそらく忘れることはないのだろうけど、しかし、こういうのは早いに越したことはない。
「そんなのお安い御用だ」
 命は気前よく了承してくれた。
「私の準備はいつでも大丈夫だぞ」
「俺もすぐにでもやってくれて構わないぞ」
 そう答えると、命は嬉しそうに笑顔を向けてきた。そして、手を突き出し、魅惑的な唇を動かす。
「イラプション」
 目の前に炎の柱が上がった。
 大丈夫。さっきと同じ感覚でやれば問題ないはずだ。
 力ずくで引っ張るのではなく、押すのでもない。手を添えて誘うように導くんだ。こっちだよと囁くように。
 なんだか、今までサクセサーを使っていた感覚とは少し違う。
 前は強さだけを求めて、相手を屈服させたり、利便性を求めていたりした。そう教えられてきたんだ。
 しかし、今はなんだか違う。遊んでいると言ってしまえば不謹慎に感じるだろうが、そんな感じなのだ。楽しくてたまらない。嬉しくてたまらない。まあ、表情にまでは出さないけど。
 そんな気持ちで挑む。
 炎に手をかざし、風を扱うように炎の軌道をずらす。
 理論は簡単だ。あの火柱の中にある風を操り、炎を誘導するだけ。結局、風は炎に食われる関係にあるのだ。それを利用しているだけに過ぎない。こんな簡単なこと、今までなぜ思いつかなかったのだろうかと不思議なくらいだ。
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