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苦悩する疾風の担い手
炎と風の反逆者 53
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と、そんなことを考えている間に命は浴室から出てきた。
「は、早いな」
髪はまだ濡れているようなのでタオルで拭いているが、まるで烏の行水だ。
「お先に」
「いや、俺はもう入った」
やることがなかったおかげで、すでにお風呂は済んでいる。
「そうだったか」
そう言って、俺の隣に座った。
お疲れなのか、腰を下ろしたときベッドの反発で何度か弾んだ。どこがまでは言わないが。
「ずいぶん疲れているようだけど、大丈夫か?」
「いろいろ準備もあってな……ちょっと疲れたかも」
命が弱音を吐くなんて珍しい。弱みなんて絶対に見せないような人だと思っていた。
しかし、こういう返答は想定していなかったため、どう返事をすればいいか分からない。
そんな感じで思案していると、命がおもむろに肩を寄せてきて、俺に少しだけ体重を掛けてきた。
何と言うか、お風呂上りの女子って、なんでこんなにいい匂いがするんだろうか。
「ちゃんと髪乾かさないと風邪ひくぞ」
「じゃあ、乾かして」
湿った頭をぐりぐり押し付けてくる。急に甘えん坊モードに突入した。
これは早く放さないと俺の服まで濡れてしまう。
「くっついていたら髪乾かせないだろ」
そう言ったら、命は名残惜しそうに俺の顔を見て頭を放した。
「ドライヤーを取ってくるよ」
「その必要はない」
命の肩を押さえて、立ち上がろうとするのをやめさせた。
命は不思議そうに俺を見ているが、なんてことはない。俺がサクセサーを使えば、温風は送れなくとも、髪を乾かすことぐらいはできる。
「目は瞑ったほうがいいぞ」
そう言ったら、命は何かを察したのか、覚悟を決めたように頷き、目を閉じた。
何を勘違いしているのかは知らないが、顎を上げて唇を突き出すのはやめてほしい。
変な気を起こす前に、さっさと髪を乾かすとしよう。
俺は能力を使って命の髪を乾かし始めた。命の髪は長いものの、俺に掛かれば1分もすれば乾かすことが出来る。
「うし、終わった。もう目を開けてもいいぞ」
命は不服そうに目を開けた。
少し荒っぽかっただろうか。女の子なんだからもっと時間を掛けて乾かしてあげるべきだったか。
乱れた髪を手櫛で整えてやる。
意外と、命は俺がすることに抵抗することもない。初対面の時はトラとかの猛獣だと思っていたが、こうやって見ると愛らしい猫だな。
「横になってもいいかな?」
「お、おう」
よほど疲れているのだろうか。命はベッドに寝転がった。なぜか、俺の膝をマクラ代わりにして……
綺麗な赤みがかった髪を撫で続けているが、これはかなりやばい構図なんじゃないか。
命は頭を動かし、ちょうどいい場所を探っているが、俺はひたすら無我の境地へ到ろうと試みた。
やっといい場所を見つけてくれて、命は動きを止めてくれた。もう俺は我慢することだけでいっぱいいっぱいだ。
いつになったら満足して退いてくれるのだろうか。
そう思いながら頭を撫でてあげると、命は穏やかな寝息を立て始めた。どうやら、俺が思っていた以上に命は疲れていたようだ。
「まあ、これぐらい、いいか」
この組織のリーダーとして命も頑張っているんだろうな。今ぐらいは、甘えさせても罰は当たらないだろう。
「それはいいとして、さて、どうしたものかな」
膝の上には命の頭がある。気持ちよさそうだし、動かすのは忍びない。俺はこのまま仰向けになれば問題ないだろう。少し寝辛いだろうが、その程度は我慢してやろう。
「は、早いな」
髪はまだ濡れているようなのでタオルで拭いているが、まるで烏の行水だ。
「お先に」
「いや、俺はもう入った」
やることがなかったおかげで、すでにお風呂は済んでいる。
「そうだったか」
そう言って、俺の隣に座った。
お疲れなのか、腰を下ろしたときベッドの反発で何度か弾んだ。どこがまでは言わないが。
「ずいぶん疲れているようだけど、大丈夫か?」
「いろいろ準備もあってな……ちょっと疲れたかも」
命が弱音を吐くなんて珍しい。弱みなんて絶対に見せないような人だと思っていた。
しかし、こういう返答は想定していなかったため、どう返事をすればいいか分からない。
そんな感じで思案していると、命がおもむろに肩を寄せてきて、俺に少しだけ体重を掛けてきた。
何と言うか、お風呂上りの女子って、なんでこんなにいい匂いがするんだろうか。
「ちゃんと髪乾かさないと風邪ひくぞ」
「じゃあ、乾かして」
湿った頭をぐりぐり押し付けてくる。急に甘えん坊モードに突入した。
これは早く放さないと俺の服まで濡れてしまう。
「くっついていたら髪乾かせないだろ」
そう言ったら、命は名残惜しそうに俺の顔を見て頭を放した。
「ドライヤーを取ってくるよ」
「その必要はない」
命の肩を押さえて、立ち上がろうとするのをやめさせた。
命は不思議そうに俺を見ているが、なんてことはない。俺がサクセサーを使えば、温風は送れなくとも、髪を乾かすことぐらいはできる。
「目は瞑ったほうがいいぞ」
そう言ったら、命は何かを察したのか、覚悟を決めたように頷き、目を閉じた。
何を勘違いしているのかは知らないが、顎を上げて唇を突き出すのはやめてほしい。
変な気を起こす前に、さっさと髪を乾かすとしよう。
俺は能力を使って命の髪を乾かし始めた。命の髪は長いものの、俺に掛かれば1分もすれば乾かすことが出来る。
「うし、終わった。もう目を開けてもいいぞ」
命は不服そうに目を開けた。
少し荒っぽかっただろうか。女の子なんだからもっと時間を掛けて乾かしてあげるべきだったか。
乱れた髪を手櫛で整えてやる。
意外と、命は俺がすることに抵抗することもない。初対面の時はトラとかの猛獣だと思っていたが、こうやって見ると愛らしい猫だな。
「横になってもいいかな?」
「お、おう」
よほど疲れているのだろうか。命はベッドに寝転がった。なぜか、俺の膝をマクラ代わりにして……
綺麗な赤みがかった髪を撫で続けているが、これはかなりやばい構図なんじゃないか。
命は頭を動かし、ちょうどいい場所を探っているが、俺はひたすら無我の境地へ到ろうと試みた。
やっといい場所を見つけてくれて、命は動きを止めてくれた。もう俺は我慢することだけでいっぱいいっぱいだ。
いつになったら満足して退いてくれるのだろうか。
そう思いながら頭を撫でてあげると、命は穏やかな寝息を立て始めた。どうやら、俺が思っていた以上に命は疲れていたようだ。
「まあ、これぐらい、いいか」
この組織のリーダーとして命も頑張っているんだろうな。今ぐらいは、甘えさせても罰は当たらないだろう。
「それはいいとして、さて、どうしたものかな」
膝の上には命の頭がある。気持ちよさそうだし、動かすのは忍びない。俺はこのまま仰向けになれば問題ないだろう。少し寝辛いだろうが、その程度は我慢してやろう。
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