ゲームのキャラに恋するのは規約違反ですか？

万年の嵐

ゲームのキャラに恋するのは規約違反ですか？ ６６

　この公園は、晴れていた昨日は少ないが人がいたのだが、今は私とコルテ以外、誰もいない。こんな嵐の日に、散歩やジョギングをする人なんていないのは当然だ。おかげで、公園に入って、すぐに、コルテは武器や防具を装備できることができた。
　でも、武器や防具を装備したからといって、雨は防御できない。
　私たちは、誰もいない公園をずぶ濡れになりながら歩いていた。もちろん、車には傘が常備してある。一本だけなので、二人で共有する事になるはずだったのだが、この嵐の中では、むしろ傘は邪魔でしかない。だが、相合い傘を惜しむ気持ちは、今はない。この嵐の強さで、思考は満たされている。
「この嵐の強さ、やっぱり身に覚えがあるな……」
　私は画面越しで見ていただけなので、体感したことはないのだが、コルテには見に覚えがあるようだ。
「嵐による行動阻害。火属性への弱体効果。間違いない」
　やはり、私とコルテが想定しているモンスターは一緒だった。だから、私は勝てないと思っているし、だから、コルテはどうにかしなければならないという使命感が強くなっている。
「いたぞ！」
　コルテの言葉で顔を上げ、モンスターの姿を確認しようとしたが、今まで以上の突風が私たちを襲った。
　前を見ることができないどころか、飛ばされてしまいそうになる。
「くっそ……キャッスル・ウェイト」
　普段なら使うことのないコルテのスキル。自信の重量を数秒の間、増やし、行動不可になってしまう変わりに、防御力を増加させるスキル。
　行動不可というのは、モンスターからの攻撃による吹き飛ばし効果も不可になるということだ。
　この弱体効果を逆手にとって、全ての風を私の前で受け止めていた。
「大丈夫か？」
「私は大丈夫。それより、コルテは……」
　風というのは、モンスターからの攻撃。それが直撃しているということは、コルテにはダメージが蓄積されているということ。
「レベル差があるからな。耐えれないことはない。もう少しの辛抱だ」
　コルテは、想像以上に、平気な顔をしている。その姿に、少し、安心した。
「よし、攻撃は終わりだな。じゃあ、今度はこっちの番だ！」
　突風が止み、スキルの効果時間が切れるのと同時に、コルテはモンスターへと向かった。