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「知紗希ちゃんかぁ……。今度、ご飯とか行かない? 内緒で奢ってあげるからさ」
「えーっと……その……」
お誘いには乗った方がいいのか、それとも奢られると問題になるからと断った方がいいのかと悩んでいると、代わりに鐘ヶ江先輩が答えてくれた。
「勤務中だ。ナンパならプライベートでやれ」
「プライベートじゃこんなに可愛くて頭もいい女の子と絶対に会えないから今こうやって誘ってるんじゃないですか! 知ってますか? 刑事課ってだけで女の子から一歩引かれるんですよ?」
まあ、実際、怖い人が多いし、命を張る危険な仕事というイメージが強くてお付き合いするのは色々と怖い。
「こんな可愛い子と仕事が出来るとか……。俺も探偵目指しておけばよかった。あぁ! そうだ! ちょっと貸して」
「え? あ、はい」
柿原刑事が私に渡した名刺を欲しがっていたので、不思議に思いながらも返した。
すると、胸ポケットに刺さっているボールペンと取り出し、名刺の裏に何か書いている。
「はい。これ、俺の電話番号ね。何かあったらいつでも電話してくれていいから」
「あ、ありがとうございます!」
現役の刑事さん、しかも、未来探偵の担当をしている方の電話番号。これはかなり貴重なものを頂いた。
これは私もお返しに自分の電話番号を書いて渡さなければ。
「じゃあ、私も……」
「いや、大丈夫。電話、かけてくれたらいいから
確かに、それでもいいのだが、本当にいいのだろうか。
「お前、まだあのこと引きずってんのか?」
「引きずってませんって!」
あのこととは一体何のことだろうか。
そんな疑問を鐘ヶ江先輩は瞬時に読みとった。
「事務所に朝比奈っていただろ?」
「はい……」
朝比奈さんと言えば、朝礼戦闘バッターにして鐘ヶ江先輩から資料のまとめを押しつけられた人だ。彼女がどうしたのだろうか。
「あいつにも名刺の裏に電話番号書いて渡したんだけど、自分が受け取った名刺に書かれてた電話番号がデタラメで、日本語片言の韓国人に繋がったんだよ。笑えるだろ?」
「ちょっ! 鐘さん、やめてくださいよ! それはもう過去の話ですから!」
なるほど、もう傷つきたくないから渡すだけ渡して相手から来るのを待つことにしたのか。
なんだか、それはそれで悲しいので、私はちゃんと電話してあげよう。
しかし、鐘ヶ江先輩と柿原刑事の仲はかなりいいように見える。仕事仲間というような感じではなく、もっと昔から友達だったというような……。
爽やか青年と捻くれおじさん。どう考えても接点が見つからない。
「あの、柿原さんは鐘ヶ江先輩とは、どういうご関係なんですか?」
そう聞くと、鐘ヶ江先輩があからさまに嫌な顔をした。聞いてはいけなかった質問だったのだろうか。でも、もう聞いてしまったものは仕方がない。
「あぁ、鐘さんは高校時代の先輩なんですよ」
「先輩……?」
そう言われて、二人を見比べるが、どうも年齢が合わない。
「……柿原さんって何歳なんですか?」
「俺は37歳だよ」
「えっ!」
てっきり20代後半。行っても30代前半だと思っていた。私と10歳ほど歳が違うとは思えないほど若々しい。いや、それよりも、柿原さんが37歳で鐘ヶ江先輩が高校の先輩ということは……。
「鐘さんは俺の2個上だよ。2つしか違わないのに老けてるでしょ?」
まさかの39歳。とっくに40歳を越えて50歳を迎えようとしているようにしか見えない。
「老け顔の方がなにかと便利だぞ。何より、相手になめられないからな」
確かに、同じ39歳でも年上だと思って敬語を使うかもしれない。
「無駄話しすぎたな。もう行くぞ」
「気をつけて。知紗希ちゃんも気をつけて。電話も待ってるから」
「はい……」
最後に念押すことが電話とは。かなりショックだったようだ。
「えーっと……その……」
お誘いには乗った方がいいのか、それとも奢られると問題になるからと断った方がいいのかと悩んでいると、代わりに鐘ヶ江先輩が答えてくれた。
「勤務中だ。ナンパならプライベートでやれ」
「プライベートじゃこんなに可愛くて頭もいい女の子と絶対に会えないから今こうやって誘ってるんじゃないですか! 知ってますか? 刑事課ってだけで女の子から一歩引かれるんですよ?」
まあ、実際、怖い人が多いし、命を張る危険な仕事というイメージが強くてお付き合いするのは色々と怖い。
「こんな可愛い子と仕事が出来るとか……。俺も探偵目指しておけばよかった。あぁ! そうだ! ちょっと貸して」
「え? あ、はい」
柿原刑事が私に渡した名刺を欲しがっていたので、不思議に思いながらも返した。
すると、胸ポケットに刺さっているボールペンと取り出し、名刺の裏に何か書いている。
「はい。これ、俺の電話番号ね。何かあったらいつでも電話してくれていいから」
「あ、ありがとうございます!」
現役の刑事さん、しかも、未来探偵の担当をしている方の電話番号。これはかなり貴重なものを頂いた。
これは私もお返しに自分の電話番号を書いて渡さなければ。
「じゃあ、私も……」
「いや、大丈夫。電話、かけてくれたらいいから
確かに、それでもいいのだが、本当にいいのだろうか。
「お前、まだあのこと引きずってんのか?」
「引きずってませんって!」
あのこととは一体何のことだろうか。
そんな疑問を鐘ヶ江先輩は瞬時に読みとった。
「事務所に朝比奈っていただろ?」
「はい……」
朝比奈さんと言えば、朝礼戦闘バッターにして鐘ヶ江先輩から資料のまとめを押しつけられた人だ。彼女がどうしたのだろうか。
「あいつにも名刺の裏に電話番号書いて渡したんだけど、自分が受け取った名刺に書かれてた電話番号がデタラメで、日本語片言の韓国人に繋がったんだよ。笑えるだろ?」
「ちょっ! 鐘さん、やめてくださいよ! それはもう過去の話ですから!」
なるほど、もう傷つきたくないから渡すだけ渡して相手から来るのを待つことにしたのか。
なんだか、それはそれで悲しいので、私はちゃんと電話してあげよう。
しかし、鐘ヶ江先輩と柿原刑事の仲はかなりいいように見える。仕事仲間というような感じではなく、もっと昔から友達だったというような……。
爽やか青年と捻くれおじさん。どう考えても接点が見つからない。
「あの、柿原さんは鐘ヶ江先輩とは、どういうご関係なんですか?」
そう聞くと、鐘ヶ江先輩があからさまに嫌な顔をした。聞いてはいけなかった質問だったのだろうか。でも、もう聞いてしまったものは仕方がない。
「あぁ、鐘さんは高校時代の先輩なんですよ」
「先輩……?」
そう言われて、二人を見比べるが、どうも年齢が合わない。
「……柿原さんって何歳なんですか?」
「俺は37歳だよ」
「えっ!」
てっきり20代後半。行っても30代前半だと思っていた。私と10歳ほど歳が違うとは思えないほど若々しい。いや、それよりも、柿原さんが37歳で鐘ヶ江先輩が高校の先輩ということは……。
「鐘さんは俺の2個上だよ。2つしか違わないのに老けてるでしょ?」
まさかの39歳。とっくに40歳を越えて50歳を迎えようとしているようにしか見えない。
「老け顔の方がなにかと便利だぞ。何より、相手になめられないからな」
確かに、同じ39歳でも年上だと思って敬語を使うかもしれない。
「無駄話しすぎたな。もう行くぞ」
「気をつけて。知紗希ちゃんも気をつけて。電話も待ってるから」
「はい……」
最後に念押すことが電話とは。かなりショックだったようだ。
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