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3 魔王、異世界に立つ
まさか魔王が異世界で 3
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目を開けると、そこは室内だった。
違和感はあるが、どことなく見覚えのある光景。
薄暗く、黒い壁に黒い床。そして部屋の奥には、目立つように置かれた一つの大きな椅子、いや、あれは玉座。
そう、ここは俺がいた魔人城タルタロスに似ている。ただ、似ているだけで、ここはタルタロスではない。漂う魔力も、壁の装飾も、床の絨毯も。そして、何より、玉座が違う。俺の玉座はあんな人の骸骨をあしらった悪趣味な玉座ではない。
やはり、私は異なる世界、異世界に来てしまったのだろうか。いや、それは早計だ。もしかすると、同じ世界の別の場所かもしれない。あの自称神ならやりかねないだろう。
「ほ、本当に、召喚できた……」
そんなことを考えていると後ろから声が聞こえた。もちろん、自称神の声ではなく、女性のか細い声。さらに、この禍々しい魔力が漂う場所には似つかわしくない人間の姿だった。
「人間……なぜこんな場所に……」
ふと、疑問に思ったのだが、すぐに疑問は解決した。
こんな玉座もある魔王の城のような場所で、この俺、魔王の目の前にいる人間がどんな人間なのか、語るまでもない。
「人間、貴様、まさか勇者か? 勇者なのだな? うむうむ、女性の勇者というのも強かでいいものだ。いやぁ、まさか、飛ばされて早々に勇者と相見えるとは……。なんだ、自称神、貴様も粋な計らいをしてくれるではないか」
本来なら、語るまでもないのだが、この100年間の感情は抑えきれるものではない。
ついに、ついに、あの勇者との心躍る戦いが100年ぶりに実現する。
魔人城タルタロスではない別の場所なので、タルタロスの仕掛けは使えない。だが、なにも城にしか仕掛けをしていない訳ではない。この俺自身の装備にもある程度仕掛けはある。今回はそれで満足しておこう。
「さあ、身命を賭してかかってくるがいい!」
と大見得を切ったのだが、反応がない。言葉どころか、立ち向かう姿、さらには攻撃に備えて防御する素振りすら見せない。
何かがおかしい。
それを教えてくれたのは、今まで目にも入らなかった第三者の笑い声だった。
「くっく……お前、状況が分からないようだから説明してやるよ。たった今、そこの小娘がお前を召喚した。それも、勇者を生贄に捧げてだ。お前の言う勇者はここには存在しない!」
勇者は俺を召喚するための生贄にされた。つまり、勇者は俺が来た時点で死んでいた。
「そう、なのか……?」
怯えている女を見ると、小さく頷いた。
「そうか……勇者はいないのか……」
この女が肯定していると言うことは、そうなのだろう。俺を笑った奴は人間ではなく気配的に魔族だ。彼女もこの怯えようから勇者でないことが分かる。
「勇者はいないが、その仲間ならいるぞ。さあ、その小娘を殺せ。召喚した悪魔に殺されるなんて滑稽だな!」
「ひっ……」
女がより一層、怯えている。この無防備な女を殺すことなど簡単なことだ。
だが、俺の怒りはすでに別の方を向いている。
「勇者がいないのは残念だ。だが、それ以上に、貴様の言動には我慢ならんものがある。貴様はこの俺を笑ったな? この俺、魔王アペルピシアを! 万死に値する。その首を差しだし、体をタルタロスですり潰し、魂をゲヘナに幽閉してやろう」
「タルタロス? ゲヘナ? 何を言っているのやら……それに魔王だと? 魔族風情が調子に乗るな!」
奴は素早く俺との距離を詰めてきた。だが、俺は先に攻撃を仕掛けるような汚い魔王ではない。魔族風情とはこちらのセリフだ。それほど魔力もない魔族に、その力の差を思い知らせるために……。
「魔王は二人も必要ないんだよ」
俺の胸に奴の腕が突き刺さった。
違和感はあるが、どことなく見覚えのある光景。
薄暗く、黒い壁に黒い床。そして部屋の奥には、目立つように置かれた一つの大きな椅子、いや、あれは玉座。
そう、ここは俺がいた魔人城タルタロスに似ている。ただ、似ているだけで、ここはタルタロスではない。漂う魔力も、壁の装飾も、床の絨毯も。そして、何より、玉座が違う。俺の玉座はあんな人の骸骨をあしらった悪趣味な玉座ではない。
やはり、私は異なる世界、異世界に来てしまったのだろうか。いや、それは早計だ。もしかすると、同じ世界の別の場所かもしれない。あの自称神ならやりかねないだろう。
「ほ、本当に、召喚できた……」
そんなことを考えていると後ろから声が聞こえた。もちろん、自称神の声ではなく、女性のか細い声。さらに、この禍々しい魔力が漂う場所には似つかわしくない人間の姿だった。
「人間……なぜこんな場所に……」
ふと、疑問に思ったのだが、すぐに疑問は解決した。
こんな玉座もある魔王の城のような場所で、この俺、魔王の目の前にいる人間がどんな人間なのか、語るまでもない。
「人間、貴様、まさか勇者か? 勇者なのだな? うむうむ、女性の勇者というのも強かでいいものだ。いやぁ、まさか、飛ばされて早々に勇者と相見えるとは……。なんだ、自称神、貴様も粋な計らいをしてくれるではないか」
本来なら、語るまでもないのだが、この100年間の感情は抑えきれるものではない。
ついに、ついに、あの勇者との心躍る戦いが100年ぶりに実現する。
魔人城タルタロスではない別の場所なので、タルタロスの仕掛けは使えない。だが、なにも城にしか仕掛けをしていない訳ではない。この俺自身の装備にもある程度仕掛けはある。今回はそれで満足しておこう。
「さあ、身命を賭してかかってくるがいい!」
と大見得を切ったのだが、反応がない。言葉どころか、立ち向かう姿、さらには攻撃に備えて防御する素振りすら見せない。
何かがおかしい。
それを教えてくれたのは、今まで目にも入らなかった第三者の笑い声だった。
「くっく……お前、状況が分からないようだから説明してやるよ。たった今、そこの小娘がお前を召喚した。それも、勇者を生贄に捧げてだ。お前の言う勇者はここには存在しない!」
勇者は俺を召喚するための生贄にされた。つまり、勇者は俺が来た時点で死んでいた。
「そう、なのか……?」
怯えている女を見ると、小さく頷いた。
「そうか……勇者はいないのか……」
この女が肯定していると言うことは、そうなのだろう。俺を笑った奴は人間ではなく気配的に魔族だ。彼女もこの怯えようから勇者でないことが分かる。
「勇者はいないが、その仲間ならいるぞ。さあ、その小娘を殺せ。召喚した悪魔に殺されるなんて滑稽だな!」
「ひっ……」
女がより一層、怯えている。この無防備な女を殺すことなど簡単なことだ。
だが、俺の怒りはすでに別の方を向いている。
「勇者がいないのは残念だ。だが、それ以上に、貴様の言動には我慢ならんものがある。貴様はこの俺を笑ったな? この俺、魔王アペルピシアを! 万死に値する。その首を差しだし、体をタルタロスですり潰し、魂をゲヘナに幽閉してやろう」
「タルタロス? ゲヘナ? 何を言っているのやら……それに魔王だと? 魔族風情が調子に乗るな!」
奴は素早く俺との距離を詰めてきた。だが、俺は先に攻撃を仕掛けるような汚い魔王ではない。魔族風情とはこちらのセリフだ。それほど魔力もない魔族に、その力の差を思い知らせるために……。
「魔王は二人も必要ないんだよ」
俺の胸に奴の腕が突き刺さった。
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