まさか魔王が異世界で

小森 輝

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5 魔王、戦う

まさか魔王が異世界で 12

 町へ戻った頃には、日はオレンジ色に輝き、地平線の向こうへと消えていこうとしていた。
「武器屋は何時まで開いているんだ?」
「何時までって決まりはないけど、日が沈んだら閉まっているかな……」
「もう日が沈む……。急ぐぞ小娘!」
「ちょっと! 走ると危ないよ!」
「はっ! 小さな子供でもあっ」
 注意されてすぐに石畳に躓いて転んでしまった。
「だ、大丈夫!? 怪我してない?」
 小娘がすぐに駆け寄ってきて助け起こそうとするのだが、当然、俺の憑依影装が差し伸べた手を弾いていた。
「この程度で怪我などするものか」
 そう強がって見るものの、しっかりと膝を擦りむいていた。
「くっそ……おのれ石畳め。やるなら凹凸なく綺麗に並べろ。というか、舗装するならアスファルトでやれ。この世界にはアスファルトはないのか? これでは子供がこけて怪我しほうだいではないか」
「普通の子供は親と手を繋いでいるんで転んだりしないんだけど……手、繋ぐ?」
「子供ではないわ!」
 再び差し出された手を憑依影装が申し訳なさそうに押し戻した。
「何度も何度も理解しない奴だな。俺には憑依影装があるから触れられないんだ。理解して控えろ。憑依影装も弾くのが申し訳なさそうではないか」
「申し訳なさそうなら、いつかはその憑依影装くんも許してくれるんじゃない?」
「下等な者からの接触など、ありえない。触れたければ強くなることだな」
「……強く、か」
 魔王には勝てず、さらに自分が勇者を生け贄にしてしまったことが気がかりなのだろう。生きることへの足掻きこそ、人間がもつ強力な力だというのに。
 だが、これは自分で気づかなければならない。強さの意味も分からず力を得れば、人間はたちまちダメになってしまう。
「それより、武器屋はどこだ? そろそろ着いてもいい頃だと思うんだが」
「あ、場所、知らなかったんだ。てっきり知っていて先頭を歩いていると思ってた」
「俺は異なる世界から来たんだぞ? 分かるわけないだろ」
「町に入ったら町全体のマップが分かったりとか……」
「ある訳ないだろ。マップは、一度行った場所を記憶して脳内でマップを作るんだ。一度も行ったことがない場所のマップなど、把握できるわけがないだろ」
 おかげでこの世界の魔王との戦闘から脱出するときに時間がかかった。
「そうなんだ……。てっきり、そういうものがあると思ってた。だって、武器屋まで一直線に行くんだもん」
「ただ大通りを進んだだけなんだけどな」
 少し先に剣と盾の看板が見えてきた。
「急ぐぞ小娘!」
「ちょ、走ったら……」
 忠告むなしく、再び俺は転けてしまった。
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