まさか魔王が異世界で

小森 輝

文字の大きさ
18 / 56
5 魔王、戦う

まさか魔王が異世界で 18

しおりを挟む
「次は当ててやる……」
 初めて使うスキルということもあって、最初は効果の確認という意味でもあった。だから、今のは失敗ではない。
 これで、スキルの発動時間も把握した。今度こそタイミングを合わせて攻撃を当てる。
「さあ、死力を尽くしてかかってこい!」
 再び、イノシシ型の魔物が突進してくる。
 今度は憑依影装には頼らない。この剣で斬り伏せてみせる。
 スキルの発動時間を逆算して、ちょうどいいタイミングで、今度こそ必殺のスキルを叫んだ。
「パワー……って、お、おい!」
 確実に当てることができるタイミングだと思ったのに、イノシシ型の魔物は突進する方向を俺から別の方向へと変えた。その方向に居たのは、俺を見守っていたミラ。
「え……えぇ!? ちょ……」
 俺へと視線を向けると、瞬時に俺がスキルの発動中で硬直状態にあることを理解して、慌てて詠唱を始めた。
「わ、我は求め訴えたり!」
 突進は障壁に阻まれ止まり、それと同時に、俺の剣は空を切った。
「ご、ごめん。手を出さないつもりだったんだけど……」
「謝る必要はない。正しい判断だ」
 ミラの判断は正しい。敵意が向かってきているのだからいち早く防御体制を取らなければならない。悪いどころか、俺を気にして防御魔法が遅れたにも関わらず、ちゃんと攻撃を防御出来たのだから上出来と言っていい。
 ただ、謝った判断をしたものが別にいる。
「下等な魔物ごときが、この俺を無視して標的を変えるとはいい度胸ではないか」
 まだ何に突進を阻まれたのか理解できていないイノシシ型の魔物の背後にゆっくりと近づいた。
「パワースラッシュ……」
 剣を振り上げ、静かに力のこもった声でスキル名を言うと、剣は俺の怒りに呼応したのか赤いオーラを放ちだした。
 その気迫に、接近しても気にもしていなかった魔物が振り返った。
 まずいと思ったのか、魔物は急いで逃げようとしたのだが、もう遅い。
「俺を無視した罪の重さ、受けてみろ!」
 渾身の力を込めて放ったスキル、パワースラッシュは、見事、魔物に直撃した。直撃したのだが……。
「あ、あれ……」
 剣は魔物を両断……する事もなく、魔物の体に押しつけられていた。
 すると、俺の気迫に気圧されたのか、魔物は悲鳴を上げながら逃げて行ってしまった。
「あっ! こら、待て! 逃げるな卑怯者!」
 しかし、言葉が通じることもないイノシシ型の魔物は、戻ってくることもなく森の奥へと消えていった。
「くっそ、追いかけるぞ!」
 何としてでも俺を無視して馬鹿にしたあの魔物だけはしとめておかなければ。
「ちょ、ちょっと待った! 我は求め訴えたり」
 魔物を追いかけようとしたのだが、目の前にミラの魔法防壁が生成され、行く手を阻まれた。
「何をする! このままでは完全に見失ってしまうではないか!」
 魔王の力さえあれば、こんな障壁、すぐに壊してしまうのに……。
「奥に行けば、もっと強い魔物が居るの。今はまだ危ない」
「危険などない! 俺には憑依影装がある」
「防御力はあっても攻撃力がないんじゃ魔物を倒すことは出来ない!」
「攻撃ならたった今さっき当てたではないか!」
「当たったけど……でも、ダメージは与えられてない。その剣に魔物の血が付いていないのがその証拠」
 剣を見ると、確かにミラの言うとおり血が付いていない。剣で切れば、どんな魔物でも血を流す。それが付いていないと言うことは、この剣で切れていなかったということだ。俺の渾身のパワースラッシュは両断どころか切り傷すら与えられていなかったということだ。
「少し原因を考えた方が良さそうね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。

処理中です...